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18.最強にする剣

 聖剣が光り始める。


 オニキスはその不快な光に眉を顰めた。

「やっとか」


 この世界の武器は魔力を扱うこと前提で作られている。

 魔力を流すことで自分の強化魔法を整えてくれたり、魔力を流すことで耐久力を上げたりする事ができる。

 オニキスの持つこの剣も真ん中についている石に魔力を込める事で威力をあげることができる。


 どれもオニキスがいた地球の武器に比べたら強力な武器であるが、その中でも聖剣は特別中の特別。


 聖剣の能力は『成長』

 

 持ち主がこの剣で戦い、経験値が貯まるとレベル上がる。

 レベルが上がることでパラメータが上昇するのはもちろん、持ち主に必要で最適な魔法やスキルを授けてくれる。


 聖剣がオニキスを倒すために勇者に魔法を授ける。

 

 シルバーの体が淡く光り、消える。


 濃密な魔力の気配がオニキスの後ろから現れる。

 オニキスは咄嗟に剣で背後からの攻撃を防御するが受け止めきれずに吹き飛ばされた。


 オニキス受け身は考えず魔力の攻撃でシルバーへの迎撃を優先する。

 シルバーは魔力を意にも介さず、スルスルと避け、オニキスにもう一度剣を振り上げる。

 オニキスは剣を構え、魔力を放ち、シルバーの背後にある魔力も呼び寄せる。

 あらゆる方向から襲いかかる黒い魔力をシルバーはいにも介さず全て躱し、オニキスに攻撃する。


「もう一段上の強化魔法か!脳筋野郎が!」

 吹き飛ばされながらオニキスが叫ぶ。

(ゲームにもこの魔法はあった、あれには時間制限があったけど....無理だ、どう考えても倒されるのが先だ)

「仕方ないか、ごめんね、クレイ」


 オニキスが体勢を直し、剣を構える。すると剣に黒い光が集まり、剣が黒く染まっていく。

 ギリギリ、ジリジリ、と剣に嵌っている石が悲鳴を上げる。


 追撃の体勢だったシルバーがその黒く染まった剣を見て足を止め、自分も聖剣に魔力を込め直す。

オニキスと違いとても静かに、聖剣がその輝きを増し始める。


 周囲に銀と黒の光の嵐が吹き荒れる。 

  熱狂的だった観客は静まり返り、この一撃が最後だと皆が固唾を飲んで見守る。



緊張感が最高潮になった所で二人が同時に走り出す。

二つの剣がぶつかり合うと、甲高い強烈な音が響き渡り、二つの剣の威力を示すように風が吹き荒れる。

その風により舞い上がった砂により、二人の姿は完全に見えなくなってしまう。


ーどっちが勝った?!

ー負けないでー!勇者様ー!

ー嘘でしょ!?そんな!


砂埃が晴れていく、最初に見えたのは一人佇むオニキスの姿だった、少しして足元の煙が晴れると倒れ込むシルバーの姿が現れた。


 倒れ込んでいる彼はまだ、反撃しようと手足を必死に動かそうともがいている。

 聖剣は既に手元になくどちらかと言うとオニキスに近い位置にある。

シルバーの体にまだ傷がない事を確認したオニキスは刃渡り10cmほどになってしまったクレイの剣をシルバーに向ける。

「お前の負けだ、聖剣のないお前は怖くない」


勇者が聖剣により獲得した能力は一部の例外を除き、聖剣がないと使えないという仕様がある。

これは普通なら使えないはずの高難易度魔法を聖剣の魔法補助機能によって使用しているからである。


「いいえ、あなたの負けですよオニーさん」

オニキスの背後から、アミィが近づいてくる。

「え?なんで?」

アミィの無機質な目がオニキスの右腕に向けられる。

釣られてオニキスも自分の右腕を見ると、そこには壊れた剣から出てきた30cmくらいの刃が腕を貫いていた。

「シルバーの勝ちー」

アミィが気の抜けた声で周りにアピールする。

オニキスは不服そうな顔でアミィに声を掛けようとすると。

「勇者に勝ったなんて汚名は負わない方がいいですよ」

真剣な目でアミィに止められた。

(その汚名が欲しかったんだけどなぁ)

「はぁ」

乱雑に刃を腕から引き抜きポケットの回復薬を飲み干しながら、オニキスは歩いてどこかへ行ってしまう。

「オニキス、医務室へ行け」

アズールに話しかけられ紙を渡される。

「はぁい」

オニキスは演習場から居なくなった。


演習場には不思議な空気が漂っている。

ーゆ、勇者が勝ったんだよな?

ーそ、そうね、やっぱ凄いね

ーさすが勇者だ!


皆勇者を称える言葉を発し、拍手で無理やり盛り上げている。

「先生、私がシルバーを」

「分かった」

メーガンが勇者に肩を貸し医務室へ連れていく。


「次は誰だ?お前らで決めて早くやれ」

アズールの大して大きくもない言葉が演習場に響き渡った。


ーーーー


  オニキスは医務室で腕を見てもらい演習場に戻ろうと廊下に出る。

 腕の怪我は大したことなく、回復薬でほとんど治っていた為、すぐに返された。


そこでメーガンとシルバーペアに会う。

少し気まずい空気が流れる。

「ありがとう、オニキス」

シルバーが手を差し出す。

「ああ、オニーでいいよ」

「そうか、オニー俺もシルバーって呼んでくれ」

そうして固い握手を交わした。

「聖女様は俺らの戦い見てたの?」

「はい」

なんで私に話し掛けんのよみたいな顔のメーガンが答える。

()()()お昼一緒に食べよ」

「え?嫌で「じゃあお大事にねぇー」

オニキスは返事を待たずにスタスタを演習場に戻った。



シルバーは診察されベットに寝かされる、隣には心配そうに佇むメーガンがいる。

「メーガン、オニーと仲良いの?」

「いいえ、昨日初めて喋りました」

「そうなんだ、面白い奴だな」

「え?ええ、ソウデスネ」

シルバーが聖剣を眺めて笑う。それはメーガンが見た彼の初めての笑顔だった。


メーガンは彼の笑顔に少し魅入られ、そして悔しそうな表情で、壁に立てかけられている聖剣を見る。



 その聖剣にはいくつかの刃こぼれが付き、ボロボロになっていた....

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