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15.今の勇者の名

「今年は講義メインの授業から実技メインの授業に移行していく」

 その後、アズールは授業が変わる理由をつらつらと述べていった。

 要約すると、戦争の為に早く強くなってくれ、みたいな話だった。

 もちろんオニキスは途中から聞いていない。

 

「という訳で、お前ら着替えて演習場へ行け」

 先生が青色の粒子を纏う。

 たちまち光が形をもち、まるで星同士を線で繋いだ星座のような魔法陣が周囲に何個も浮かび上がる。


 瞬間、オニキスの周りは不思議な青い仕切りができ、目の前の机には体操着が用意されていた。

「着替え終わったら、各々演習場へ行け、ちなみに他の人の壁を破壊したら停学だ」

(そりゃそうだ、言う必要あるか?)

 オニキスはそのシンプルな体操着に着替える。

 オニキスがのんびり着替えていると。


「おい、これどうやって外に出るんだ?」


 クラスメイトの誰かがそんな声を上げる。

「壊せってことか?」

「まじ?もう始まってんのか?」


(授業に退屈する事はないかもな)

 そんな声を尻目にオニキスは指先に魔力を集め、壁な触れる。

 まるで絨毯に水滴を垂らしたかのように、魔力が吸い込まれた。



 オニキスがこの世界に来てから、黒の魔力の事について分かったのは、黒の魔力は何にでも通せるという事と、この魔力は毒のような性質を持つという事だ。


 普通の色の魔力はこの目の前の壁のような他人の魔力がたっぷり入っている物体に、自分の魔力を通す事は難しいらしい。


 オニキスが壁に垂らした黒い魔力は馴染んで、まるで、青い水に黒い絵の具を垂したかのように広がっていく。

 

 そしてこの魔力は強力だ、強力過ぎてこれに耐えれるものがない。

 物に通せば脆くなったり、その性質を狂わせたりする事ができる。

 まるで毒だ。


 目の前の黒い壁に穴が開いていく。

 強力な魔力に耐えれなかった壁が壊れていく。

 

 オニキスはただ魔力を流しただけである。


(これは流石に俺に有利過ぎる、なんか罪悪感あるわ)


 その壁を抜け、外へ出ると、見覚えのある宇宙色の髪が見えた。

 いつの日かエメリアがギルドで助けたハンターだ。

 まあ、オニキスは覚えていなかったが。


(ゲームにも出てこなかったキャラだ)

「君が一番か、凄いね」

 内心の動揺を押し殺しその女の子に話しかける。

「あ、オニキスさん、ありがとうございます、着替えは早い方なんです」

「いや、そっちじゃないんだけど..」

(やべぇ名前なんだっけ?)

 オニキスが考え込みながらその女の子についていく。


 オニキスはその見覚えのある少女の名前を思い出しながらその子と一緒に廊下を歩く。

 少ししてその女の子が気まずそうな顔をして振り返った。

「あ、あの演習場ってどこだか分かります?」

「...え? 俺もわかんないけど...」


 オニキス達は来た道を戻った...


 教室まで戻ると、勇者が出て行った。

「彼について行く?」

「あ、いいえ!私、友達を待とうと思います!」

「おっけー、じゃあ先行くねー」


 すると教室からもう一人、人が出てくる。

「以外ね、私が三番だと思ってたのに」

「アミィさん、演習場ってどこだか分かる?」

「ええ、行きましょうか」

 

 宇宙色の女の子に手を振って別れ、アミィと廊下を進んでいく。

「アガットさんとは知り合いですか?」

「へー、アガットさんって名前なんだ、多分知らない人、アミィさんはなんか知ってる?」

「いえ、出席番号30番とだけ覚えています、ちなみにどちらが先に壁から出たんですか?」

「彼女だよ、凄いね、たぶん彼女が1番だよ」

(30番ってこのクラスの最下位だよな...

隠れた実力者的な?うわーそうゆうのかなり好き)


「...へぇ」

 ワクワクしているオニキスとは対照的に、アミィはその無機質な目をアガットに向けた。新たな獲物を見定めるように。


「アミィさんはどうやって出たの?」

「解除しました」

「解除ってあのトラップ解除するやつ?あれって特別なツールがないとできないでしょ?そんなの持ち込めたっけ?」


「あのツールは計算機みたいなもので時間をかければ人でもできるんですよ。

  まあ、これは私の得意分野なのでほとんど反則みたいなものでしょうけど」

「そうだね、反則だよそんなの...」

(あのツールの一番凄いところはそこじゃないと思うけど...)

「オニキスさんは?」

「...俺の事はオニーでいいよ」


 ここで二人は演習場に着いた。

 演習場にはすでに勇者がウォームアップしている。

 

「お前らもアップしとけ」

 アズールが二人に声をかけた。

「はい」

「終わったら、適当に二人組作って戦え」

 アズールが指さす先には決闘場のような舞台が複数用意されている。


 オニキスとメーガンは軽く準備体操を始める。

「じゃあ、俺達でやる?」

「うーん、私じゃ相手にならないと思いますよ?」

(そんなに弱そうには見えないんだけどなぁ)

「じゃあ勇者しかいないじゃん」


 すると入り口からメーガンが入ってくる。

 彼女はあたりを見渡しオニキス達の方へ歩いてくる。

「何すればいいの?」

「二人組作って戦えってさ」

 オニキスが決闘場を指差し答える。

「そんで勇者と戦おうかなって思うんだけどー」

「そう...」


 メーガンが考え込むような仕草を見せる。

オニキス達も空気を読み、静かにメーガンを待つ。


 そして、メーガンは意を決したように顔を上げた。


「シルバーと戦う前に私と戦って」

 

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