11.モルモットの檻の名前
説明が終わり、皆部活動の見学に行くらしい。
「オニキス」
オニキスも見学に行こうとするがアズールに呼び止まれる。
聖女も呼ばれたようで、アズールの前には既に聖女がいる。
「お前らここに行ってこい」
紙には簡単なこの学園の地図が書かれており、アズールは生徒会室と書かれた部屋を指差す。
オニキスと聖女が廊下を進む。
「生徒会かぁ、聖女様は入るの?」
「知らないのですか?成績上位者は入らなくてはいけない決まりがあるんですよ」
「え⁈俺入りたくないんだけど...」
「生徒会に入ればそれなりの地位が約束されますよ」
「そうゆうのはいいんだよな...」
オニキスが呟き会話が終わる、聖女から話しかけることはない、聖女はオニキスに無関心を貫く事を決めたらしい。
「この後一緒に見学行こうよ」
「私は部活動には入りません、おそらく生徒会に入ればその暇もなくなりますから」
「えぇ、そんな忙しいの?」
生徒会室に着いた。聖女がノックし中に入る。
「ようこそ生徒会へ」
部屋にはすでに四人の男女がおり、喋ったのは誕生日席に座る明るい緑色の髪を持つ優男だ。
「生徒会とは学年の代表が集まって、調整を行う機関です、毎年各学年の成績上位者に生徒会に入ってもらっています」
もう入る前提で話が進んでしまっている。
(言うなら早くしないと)
「あの、俺は辞退したいと思っています」
瞬間、部屋の空気が変わる。
「生徒会には特別な待遇があるよ?もっと話しを聞いてからでもいいんじゃない?」
「あまり興味はありません」
「ああ?なんだこいつ生意気だなぁ」
横の席で聞いていた女の人が立ち上がる。
「ラセット」
優男が言うと女の人はまた席に座る。
「黒の魔力に対する差別を無くす、それを叶えるならここは最適な場所だと思うよ?」
(うわー言ったわそれ、忘れてた、もう言っちゃおうかな、めんどくさいって)
「生徒会の一年生メンバーは俺と聖女で三年間やっていくんですよね?」
「基本はそうだよ、増やすも減らすも生徒会が決めれるけどね、重要な仕事だからね、そう簡単には変えれないよ」
「そうですよね....」
オニキスは魔力を全身に流した。
体から黒い光が漂う。
優男以外は同じく体に魔力を流して警戒体制に入る。
「なに考えてやがるてめぇ!」
ラセットと呼ばれていた女の子が魔法陣を展開する。
「まあ、少し黙っててください」
オニキスはそのまま人差し指に魔力を集め、前に掲げる。
「今すぐ魔力を止め手を挙げろ!」
違う真面目そうな女の子が声を荒げる。
「そんなに怖いですか?先輩」
オニキスに見られた女の子が黙る。
しばらくすると前に掲げた指から血が滴り出す。
ボトッっと指が地面に落ちた。
生徒会室は阿鼻叫喚、優しそうな女の子の先輩が叫んでいる。
「まあ、こんなふうに、黒の魔力はほぼ毒みたいなもので、俺の体はもうボロボロなんです、正直三年間の職務をまっとうできるとは思いません」
オニキスは指を拾ってポッケの包帯を使ってくっつけた。魔法で血管、神経、骨の位置を調節し、回復薬を飲み干す。
聖女は口を抑えている、ショックを受けているようだ。
「そうか、分かった辞退を受け入れよう」
「すみません、ありがとうございます」
オニキスが頭を下げ、生徒会室はひとまず落ち着きを取り戻した。
「いいや、君は生徒会に入って貰う」
突然オニキスの背後から声がかかる。
後ろを向くと金髪の女性がいた。入学式で見た時より威圧感はだいぶ抑えられている。
「どうしてこんなところに」
生徒会のメンバーは慌てて姿勢を正す。
「それと、彼女も生徒会に入れてくれ」
黄金の王の後ろから出て来たのは見覚えのある紫の少女だ。
「アミィと呼んでください。
これからよろしくお願いします」
「王よ、発言の許可を」
優男が口を開く。
「いいぞ」
「どうしてその子を生徒会に?」
「この子、筆記試験で歴代最高得点だったらしいの、そんな子の仕事を近くで見たくてね、職権乱用かな?まあいいでしょこれくらい」
(意外と気さくな人だな)
「俺は生徒会辞めれないんですか?」
「うん」
王はさぞ当たり前かのように答える。
「もう他の方には説明したんですけど、
俺は三年間生きられないかも知らないんです、俺には務まりませんよ」
黄金の王は笑いながら言う。
「嘘つき、そうならないように聖女と接触したんでしょ?」
オニキスは心の底から驚いていた。
「そんな、たまたまですよ」
「アミィもお前の助けになるだろう、そうゆう点でも生徒会に入るメリットはあるだろ?」
王の金の瞳がオニキスを貫く。
見るものを魅了し、屈服させる征服者の目だった。
「分かりました、喜んでお引き受けいたします」
オニキスが演技臭く、優雅にお辞儀した。
頭を下げた時に、しっかり変顔しとくのも忘れない。
「ふふ、ボウ・アンド・スクレープのやり方もしっかり教えてもらいなさい」
そう行って金色は笑いながら部屋を出て行った。
「ボウ?弓の練習?なんで」
ぐふぅー
聖女から笑いを堪えきれず、変な音が聞こえる。