10.入学
アルカナ学園初日は入学式から始まった。
厳格な建物に小綺麗な椅子がたくさん並んでいる。
オニキスはその一番前の右端の席にいた。
左隣にはクリーム色の髪を腰まで伸ばす、高貴な女の子が座っている。
「あの、聖女様だよね?よろしく俺はオニキス」
聖女はピクリともしない。
「死んじゃったのかな?おーい」
「貴様!そのお方に触れるな!」
聖女の隣にいる赤髪の女の子に怒られる。
「はぁい」
入学式の前列に座る人はオニキス意外、皆貴族っぽい人だらけだ。
エメリアも後ろの方にいってしまった。
周りは俺を見つけてひそひそとと話している。
ーあいつ結局は受かったんだな
ーあいつを落とそうとした試験官は皆んな処分されたらしい
ーああ、噂だと王が直々に動いたらしいぞ
ーまじ?まあ、あのお方は人権派だもんな
(うるさいなぁ)
すると周りが水を打ったように静まり返り、一斉に立ち上がる。
オニキスも慌てて立ち上がった。
原因は壇上に上がった一人の女性だ。
金髪金眼の美女、その謎の美女の放つオーラに皆、圧倒されている。
「黄金の王」
隣の聖女が呟く。
(へぇ、初めて見た。 似てるな、この世界に来る前に会った奴に、この、嫌でも格の違いを見せつけられている感じが)
黄金の王が口を開く。
「諸君、入学おめでとう、諸君らの努力と才能に祝辞を述べよう。
今年度からこの学園の長を任されることになった、アンバー・ゴールドウィンだ、よろしく。
先代の王は、王や貴族が学園に関わる事を禁止していた、これは権力が子供の教育に影響を与えることを防ぐ為だ、私もこれに賛成している、しかしそうも言ってられなくなってしまった。
戦争が始まってしまった、ここも狙われるだろう、私が来たのも、そうゆう理由だ、戦争が起きてしまったのは私達の責任だ、すまなかった。」
王が謝るという珍しい光景だが、まだ誰も口を開けない。
「諸君らの学園生活は例年より困難な道になるだろう、そんな時こそ仲間を頼れ、皆この学園に入学できる優秀なもの達だ。
もう諸君らは単なる生徒ではない、私と世界を平穏へ導く仲間である。
大いに期待しているぞ。
以上だ」
隣の聖女が拍手を始め、周りにも広がり、会場に拍手の嵐が巻き起こる。
(まじかよ、なんでこんな盛り上がってんだよ、後の人のこと考えろよ)
「新入生代表挨拶」
オニキスの名前が呼ばれる。周りはなんであいつが、みたいな反応でざわついている。
(俺だってやりたくないよ)
「聖女様、どうしよう足が動かなくなっちゃった」
「お得意の魔法を使ってはいかがですか」
聖女が無表情で呟く。
「ああ、そうか!ありがとう」
オニキスは額に手を当てる。そして、立ち上がり舞
台へ上がる。
(なんで俺の魔法知ってるんだ?だからあんなに敵意剥き出しなのか)
オニキスは教壇のようなところでベリルと考えた挨拶を話した、内容はなんの当たり障りのない文章だ。
(そういえばゲームでは聖女がやったんだっけ)
王の時とは違い静かな拍手で壇上を去った。
無事、入学式が終わり教室へ案内される。
オニキスの教室はAクラスでこれは成績順にA-B-C-D-Eというふうに決まっているらしい。
教壇には教師らしき男が立っており、皆んなが渡された番号に従って席につく。
オニキスの番号は一番で隣は聖女だ。
「Aクラスを担当するアズールだ、主に魔法科目を教えることになる、よろしく。
気づいている人もいるかもしれないが、その番号は君たちの成績順だ、その番号は半年間よく使うから覚えておけ。
「ではさっそく一番、オニキスから自己紹介を」
(煽るねえ)
「はい、オニキスです、黒い魔力を持っています、けど皆さんと同じ人間ですので、仲良くしてくださいね?」
オニキスは笑みを貼り付けた顔で答えた。
教室の反応は悪かった。
二番は聖女、三番が勇者だった。
四番目は知らない紫髪の女の子だ。ストレートでさらさらな腰まで伸びた髪を持ち、整った顔立ちで知的な印象を受ける。
アミィという名前らしい。
(あの子見たことあるなぁ、誰だっけ?)
そしてエメリアの番になる。
(はあ、今日も推しが尊いなぁ)
みんなオニキスとは違い、暖かな拍手で受け入れられている。
自己紹介が終わり、部活動などの説明を受ける。
(友達作るには部活動が手っ取り早いか...)
「聖女様はどうするの?」
「話し掛けないでください」
相変わらずの塩対応で聖女は答える。
「酷いなぁ、やっぱり君も俺を魔族扱いするんだね..」
(お前は嫌いだろ?他の奴らと一緒にされるのは)
「そうゆう訳じゃ....ただ私は貴方に勝ちたいだけです」
聖女が気まずそうに目を逸らす。
「そっか、ありがとう」
オニキスは聖女に触ろうとした腕をおろした。