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異・セカイ生存圏  作者: オール・マッド
序章「吸血鬼アドルフ」
9/19

強敵

「お爺様!」


シズが族長の部屋へと向かうとそこには既に片腕を噛み砕かれ、瀕死のハールが横たわっていた。


「来るな…これは私とこの狼の戦いだ…私を殺さなければこの狼は満足することはない…」


「シズ、お前はワタシの敵では無い。こちらに殺意を向けるのをやめろ」


「敵では無い」この言葉をシズは最大の侮辱として捉える。


「クソが…!!レベル4深淵魔法【追いかける苦痛(ザームグリフ)】!!」


「無詠唱でその魔法を使用するのは随分と賭けに出たなシズ。レベル1光属性魔法【対闇魔法防御(アンチダーク)


シズの魔法はいとも簡単に防御され、理解してはいたが圧倒的な力の差にシズの頭の中に絶望が過ぎる。


「少し眠っててもらおう、レベル1風魔法【疾風弾(ウィンドブレット】」


「ぐぁっ!!?」


圧倒的な速さと魔力出力の高さで放たれた風の弾丸は防御の隙を与えずにシズを吹き飛ばし、シズは頭から血を流して気絶する。


「孫娘に私の無様な死に様を晒さずに済むことを感謝しよう…かつてただの黒犬だった巨大なバケモノよ」


「貴様の為等では決してない。元()()()()()が1人、稲妻のハール。貴様のためでは決してな」


族長のハールは痛みに汗を1滴垂らしながらもニヤリと不遜に笑う。


「おおよそ…シズにこれ以上の苦痛を与えん為だろう。右前脚がないことと貴様のシズに対する言動で理解したよ黒犬」


「そうか、理解出来ているのなら良い。それとワタシはもはや黒犬では無い。千年狼のレーヴェだ、よく覚えていけ。お前を殺す気高き狼の名を」


「貴様、1000年も生きているくせに無駄話が長いな。おかげで構築が済んだよ。レベル5雷属性魔法【稲妻の駆逐者(ヤークトブリッツ)】」


「ぐ…!!流石は稲妻、中々に痛かったぞ。貴様が発見し、その発動方法も対策方法も貴様しか知らないオリジナル魔法…しかしだ、私の千年は貴様が一生を超えたのだ。レベル5地属性魔法【対雷魔法防御(アンチブリッツ)】」


ハールが作り上げた魔法陣は刹那、完全に破壊された。


「なっ…貴様、気がついていたのか…」


ハールは面食らったような顔になり、自身の敗北を悟る。


「は…はは…たった千年、貴様にとっては深緑族(ダークエルフ)としての一生のうちの1割程度でしかないだろう。しかし、この千年は私を生み出し、そして貴様を超えるに至ったのだ…」


「…殺せ、シズの目が覚めては死ぬのが怖くなる」


「遺言はそれで良いのか、稲妻のハール」


ハールは沈黙を持って答えとする。


「…レベル3深淵魔法【束縛の呪い(レストカース)】」


「シズ…何故止めるのだ」


シズの意識は朦朧とし、先程の衝撃で目も良く見えないが、祖父を殺されたくない一心でシズの体は動き続ける。


しかし、あまりにイメージからかけ離れた力量差はシズの体を蝕み、口からは大量の血が吹き出る。


「レベル…4……深淵魔法【喰らう死霊(イーター)】」


シズの魔法は全てレーヴェに当たるが、全くと言って良いほどダメージが見られない。しかし、シズは現状ですらその目ではもはや見ることが出来ない。


「不意打ちとはいえ、良く私を止めることが出来た。流石だな、シズよ。だが、あと数秒で抵抗(レジスト)が完了する。もはやこれまでだ」


「それでも…!それでも私はたった1人のお爺様を失う訳にはいかないんだ…!!両親もルナ様も先立ってしまった…私にはもはやお爺様しかいないのよ…!!」


シズの抵抗は虚しく、レーヴェはゆっくりと歩き出し、その爪はハールを右肩から骨盤までを境に真っ二つに変えた。


「あ、あぁぁ…お爺様」


シズの胸に無力感と絶望を植え付けた。


シズの脳に最初に出た言葉は「自死」の一言であった。もはやこの世に対する未練が完全に消え失せたのだ。

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