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異・セカイ生存圏  作者: オール・マッド
序章「吸血鬼アドルフ」
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血液の帝王

自称神との邂逅からおよそ三時間は経っただろうか、私の視界は暗黒に包まれ、まるで柔らかい肉に包まれているかのように体は動かない、不思議と息苦しさは感じないが体が動かないこと以上に厄介な事態に陥っている。


それは焼けるような痛みを伴った喉の渇きだ。


私の少年時代ですら陥ったことのない異常な渇き、今ならばたとえ泥水であろうと何十年も熟成したワインよりも美味に感じられるだろう。この動けない状況と異常なまでの渇きが私の思考力を奪うのにそう時間はかからなかった。


まるで巨大な生物に丸呑みされているかのように錯覚を始めた私の脳は目の前の暗黒を血肉と認識した。


これが幻想であろうと私がそれにかぶりつかない理由には至らなかった。


「美味い…脳がリフレッシュされるような清々しい気持ちだ。もっと…もっとだ…」


私は無我夢中で目の前の血肉を欲望のまま食らい尽くしていく。


すると、一際眩い光が私の視界へと入り込む。


その眩い光の先に広がるのは周囲を囲む巨大な木々だった。


不思議と暗くはないが、明らかに日光が入り込んでいない。恐らくは人の手が一切入り込んでいないのだろう。その()()()()()()()なのは私の足元にあった。


「これは…どこからどう見ても欧州の伝承のドラゴンだな。私はこいつに喰われていたのか、あの自称神は余程私を殺したかったと見える」


しかし、たらふく食べた後に言うのもなんだが、いくらおそらく先ほどまで生きていた新鮮な肉であろうが食中毒などが気になるところだな…。


と、そんなことをよりも私の体は若返っているようだ。手に皺はなく、腰も痛くなければよく動く。


鏡でもあれば現在の自分を見れるのだが、まず私は現在裸だ。所謂転生したばかりだから仕方がないと言えば仕方がないが、これではまず不審人物として秘密警察あたりにしょっぴかれかねん。


とりあえずはこのドラゴンの死体を解体して一枚布くらいは羽織らねばならんな。


そうやって私がドラゴンに手を伸ばした瞬間だった_______。


「___条件が達成されました。個体名「」は|《血液の帝王》《ブラッドキング》を取得しました。()()()()を取得できます」


突然脳内にまるで機械のように無機質な音声でアナウンスが流れる。


あまりに突然のことで面食らっていたが、アナウンスがもう一度流れる。脳に直接流れてくる声というのは何とも気持ち悪い。


「_____種族装備を取得しますか?」


どうせ一枚布を着用しようなんて考えていたくらいだ、装備というなら鬼なり蛇なりが出るわけでもなかろう、ならば答えは一つだろう。


「種族装備《血液の帝王の正装(スーツ)》を取得しました。装備欄が空欄のため、着用されます」


私の全身に無から赤黒い液体状の物体が現れ、全身を覆う。それはやがて私にも馴染みのあるスーツとなる。


「ふむ…突然のことで思考を放棄したくもなるが、これでひとまずは服が手に入れられた。しかしこれでも肌寒いな。どうにかならないものか」


「___種族装備《血液の帝王の正装(スーツ)》は形態変化可能です、形態変化を許可しますか?」


再び脳内でアナウンスが流れる、この気持ちの悪い感覚に慣れている自分にも少し嫌悪感を覚えるが、それよりも形態変化というのを試すのが先か。


「許可する」


私の言葉でスーツが赤黒い液体状の物体に変化し、その液体がまた先ほどと同じ工程を繰り返してロングコートへと変わる。


「この種族装備とやらの仕組みが理解(わか)ってきたな」


この種族装備とやらは私の要望に応じて形態を変化させることができる、随分と便利なものだ。私の世界では人工知能が搭載され多機能化された服もあったがここまで簡単に姿形を変えられるとその科学技術を超えられた気分だ。


「……しかしいろいろと研究していると腹が減ったな、ドラゴンの残りでも食おうか」






_____________

同時刻、魔界帝国・王の間


「魔王陛下、暗黒大森林から我らを長年悩ませてきた()()()()()ジャバウォックの魔力反応が消失しました」


一つ目の巨大な怪物が玉座へと跪く


「……あぁ、先ほど確認した」



「如何しますか?彼奴が消えたことで暗黒大森林からのヒューマン大協商連盟主要国のシュタイン地下王国への侵略が可能です」


土人(ドワーフ)の国か、確かに魔剣の一大生産拠点であるかの国を侵略できればやつらの戦闘力は一気に低下する、しかし魔族喰らい、やつのことが気がかりだ」


「やつはすでに倒れたのでは?」


「だからこそだ。奴が災害や人の手にかかって死ぬとは思えん。奴の討伐計画は五百年前から空白のままだ、魔族があの森林に近づくことは固く禁じている」


「つまり、人間にも魔族にも属せないあのあぶれモノ達が魔族喰らいを?しかし奴らにはそれほどの力はないはず…」


「いや、一つだけいる。かつて魔界を統べ、人間界をも滅ぼしうる力を持った()魔族が」


「まさか、千年も前に魔族と人間その両方からの攻撃によって滅んだとされる…」


「あぁ、吸血族(ヴァンパイア)、魔族喰らいを仕留めたとなると恐らくは|《血液の帝王》《ブラッドキング》が死者の国から蘇ったのやもしれん」



_____その日魔界、人間界その両方の種族のバランスが崩れ去った。魔族喰らいジャバウォックの消滅は世界を混沌へと誘う一人の男の予期せぬ宣戦布告となったのだ。

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