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異・セカイ生存圏  作者: オール・マッド
序章「吸血鬼アドルフ」
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建国宣言

「…そして、私はこの六種族を始まりとして、世界を統べるための国家の樹立を宣言したい!!」


私の言葉に動揺する臣下はもはや存在しえなかった。


「閣下」


ダズベッヒが何か言いたげにしている。若干自身のあこがれが現れた少年のように…。


「なんだ、ダズベッヒ」


「国家となると、やはり国名が必要不可欠。閣下の臣民の団結を高めるためにも我々の存在を世界に知らしめるためにも必要でしょう」


そうか、こいつは名づけがしたいんだな。


「ああ、それに関しては考えてある。残念だが、お前の忠勤がこの先続けば、一部組織の命名はお前に任せる」


「………承知」


明らかにダズベッヒのテンションが下がっているが…これは仕方ないだろう。せいぜい数週間程度の違いであろうとこの初期の段階は新参者にそこまでの権利を与えられる余裕はない。


「さて、そうなれば前々から建設を進めていた会場に全臣民を集めろ。建国宣言演説の準備だ」




_______その宣言から約8時間後。日が完全に沈み、この吸血鬼の身体はその真価を発揮するようにエネルギーがあふれ出す感覚を覚える。


私が出る前にジークが六つの種族が私の下に今統一され、国民の在り方というものについて説いている。それぞれ盛り上がり方は違うが、やはり魔族と人間族に対する嫌悪はどの種族も本物だ。やはりジークはかなり優秀だな。私がいなくてもジークによってゴブリン族はある程度繁栄を取り戻していただろう。


「___以上だ!!」


この大会場は最大で3万人が収容可能。技術がまだ未熟だが、会場のどこにでも中心部にいる演説者の声が聞こえるように血液でマイクとスピーカーを作って設置してある。


私が壇上へと上がると、私の臣民達は「総統万歳」と大声で叫び続けている。


60秒………120秒………180秒………240秒………。


そろそろ気がついたようだ。私が壇上に立ってから全く言葉を発することなく四分が経過。


少しずつ臣民はその口を閉ざし始める。


300秒程度か。まあ上出来だろう。


「諸君、我が下に集い、人間や魔族に恨みを持ち、世界に忘れられつつある諸君。私はヴラド。アドルフ・ヴラドだ。諸君らに残された明日は、人間と魔族の侵攻に怯え、今日の空腹をどう凌ぎ切るかのみを考えること」


会場の皆が口にすることはないが、確実に不満や小さな怒りを溜めていく。


これでいい。妄信した生物は己が妄信する権威に夢中で特に話を聞かない。


少し怒りや不満があり、疑いの眼というのは少なからず妄信よりも正確な目と耳を持っている。


「諸君らは知っているはずだ。人間の、魔族の恐ろしさを。故郷を追われ、この危険な森に逃げ込むことしかできなかった諸君なら理解しているはずだ。己の無力さを。奇跡でも起きなければ歯が立つことのない大勢力を」


後悔、恐怖、怒り、不満、猜疑、憎悪、そこからくる絶望。すべての負の感情はたった今、我が手中にある。


「…悔しいと思わないか?我々は、我々の先祖はただ己の務めを果たし、立派に生き抜いてきただけだというのに!!」


私は強くこぶしを握り締め大きな身振りを披露する。


「…人間を掌握する演舞のようだ。あれが我らの総統なのか」


ムドレーツの感嘆をとうに越した呆然とする声が聞こえる。


「ふざけている!!この世界は!!この今は!!奇跡でも起きなければ我々は救われることはないのか!!」


私の声は途切れ、数秒の沈黙を作り出す。


「そうだ…奇跡が起きなければ我々は救われない。奇跡はどこだ?我々が明日を憂うことのない未来を作り出す奇跡は…!!」


「……あった。吸血鬼、ヴラドの一族、その末裔が今!!目の前にいる!!奇跡がなければ救われないのなら、私が起こして見せよう!!この先幾多の奇跡を私の臣下として、国民として信じ、そして見届けてほしい!!諸君は激動の時代の生き証人となるのだ!!我々は一つの国家の下に団結するのだ!!」


この時間に溜めに溜めた負の感情が爆発するかのように、会場は雄たけびのような歓声に包まれる。


「今!!ここにこの私、アドルフ・ヴラドはバアル帝国の建国を宣言する!!」


どこからか、少年らしき幼い声が聞こえてくる。


「やるぞ…!!人間を、魔族を!!必ず!!」


いずれ、彼が成長したとき、良き臣下となってくれそうだ。


「我がバアル帝国の国民たちよ!!今ここに我々の力を奇跡として世界に知らしめてやろうではないか!!」





________同時刻、ヨークランド連盟王国保護領ネヴァン帝国。



「殿下、本国の諜報員と思しき輩を捕らえました」


黒く美しい甲冑を身に纏った騎士がスパイを玉座の前に突き出す。


「こ、殺せ!俺は何をされてもしゃべることはない!!お前たちはあまりに危険すぎる!!」


「ふむ…、君は何か勘違いしているね。()()の手の者を私が殺すわけがないだろう?私はあくまでも兄上に酷く荒れ果てたこの地の統治を任された身。君は差し詰め、兄上の命で私がしっかり統治しているかを視察に来た。違うかね?」


玉座に座る男が兄と呼ぶのはヨークランド国王オズワルド一世である。


「な、なにを…そんなカマに俺が乗るわけがないだろう…!!」


玉座に座っていた男は立ち上がり、スパイの下へと近づき、膝をつく。


「どうやら私の部下が、手荒な真似をしたようだね。我が国の国民に怪我をさせてしまったこと、今ここにお詫びいたそう」


「そ、そんな…!!そんな手に…!!」


「包帯を持ってきてくれ。私が彼の怪我の応急処置をしよう。この怪我の謝罪代わりだが、それで良いかな?」


あまりにも美しい。その顔立ちはさることながら、心意気までもが透き通るように美しい。


スパイが目にしたのは人か、天より使わされし王か、はたまた神そのものかスパイの眼にはもはやどれかすらわからなかった。


「で、殿下…私如きのそのような……」


「ダメだったかね?国民合っての王族、王族たる私はただ国民を守りたい一心なんだ。それは許されないかね?ピーター君」


「で、殿下は私の名前などをわざわざ…あの国王はおろか、貴族連中も私を数いる諜報員の一人としか認識していないかったのに…」


ピーターは自身が気がついていなかったが、その心中は既にその男に掌握されていた。


「殿下、すべてをお話しいたします。私の処遇はお好きなようにお定めくださいませ」


その男の名はハインリヒ。ヨークランド王族の中で最も才覚を持つ男である。

まずは続編の投稿が大変遅れてしまい申し訳ございません。


これでひとまず第一章は終了。次からは第二章、新たなる出会いと世界に姿を現したアドルフ達に強大な敵との闘いなど様々ございます。


この作品が頭の片隅にでもございましたら時々見に来ていただいてアドルフ達の行く先を見届けていただけると幸いです。

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