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異・セカイ生存圏  作者: オール・マッド
序章「吸血鬼アドルフ」
12/19

襲撃

めちゃくちゃ投稿が遅くなって本当に申し訳ないと思っている。

この展開を思いつくまでにかなりの時間を有してしまいました。

たぶんこれからはまた投稿頻度が戻るのでご安心ください。

ここはルースラ姫の治めるゴブリン集落、アドルフ達がここを発つ前とはその様相は全く持って異なるものであった。


「火矢の準備を急げ、普通のゴブリン洞窟に比べたら高度に要塞化されてはいるが、所詮は魔物の集落に過ぎない、貯蔵庫を除いたすべての木造建築物は燃やし尽くし、石造の建築物には煙を入れてやれば干上がって死ぬだけだ。それに、奴らの本隊が現在ダークエルフの集落にあることくらいは斥候(スカウト)による報告で確認済みだ」


人間の軍隊がゴブリン集落を包囲し、燃えた建物から飛び出たゴブリンを次から次へと虐殺している。


いくら同じ力を有しているとはいっても数的劣勢や体格差を覆すほどの策も武器も持ち合わせていなかった。


「大隊長、報告がございます」


「さては例の行方不明者が見つかったか?」


「ええ、ブランドン班長とその班員のものと思われる遺品がありました。こちらでございます」


「前々から奴の分不相応な絢爛たる剣を欲しいと思っていたところだ、私が使うことにしよう。この侵攻で手に入れたものはすべて我が大隊の所有物とできると軍に直接交渉した甲斐があった。しかし、ダークエルフの集落に足止めを目的に向かわせた121中隊からそろそろ報告があってもおかしくないと思うのだが、奴ら何をしているのだ」


大隊長はゴブリンほどの伸長を持った傭兵を見てため息をつく。


「まったく、いくら準備期間がなかったとはいえ、我が大隊に()()()()()()の傭兵共を組み込まなければならないのが不服で仕方ない。いっそゴブリンと間違えたとして殺してしまおうか?」


「大隊長もお人が悪い、奴らの種族は元々鍛冶か傭兵でしか稼ぎ口がない。醜いゴブリン擬きともなれば鍛冶をしても悪評を広められるのがオチ、傭兵でしか食っていけない連中だ。奴らはもとより死んでいます」


大隊長たちが談笑していると森の奥から一人の斥候の姿が見える。その更に奥には大軍を引き連れている。


「まさか、ダークエルフの集落を陥落させたのか。奴らはゴブリンと違い、かなりの精鋭揃いだったように思うが」


しかし、斥候の様子がおかしいことに大隊長が気が付く。そもそも斥候は少人数グループで動くことが多い。なのに、彼はたった一人だ。それにその斥候はよく目を凝らしてみると瀕死の重傷を負っていた。片足を引きずりながらこちらへと向かってきている。


「中隊は全滅!!衛生兵!俺を治療して」


瞬間、斥候は首を飛ばされて絶命した。


「総員!包囲人数を最小限にして迎撃態勢に移れ!捕虜など必要ない、全員殺してしまえ」


「そう、我らはゴブリン=ダークエルフ連合軍。総勢500名の軍集団だ。先ほどの中隊程度ではお前たちも不完全燃焼だろう、奴ら相手なら多少は戦闘になる。総統命令第一号だ、存分に暴れてやれ」


まず初めに動いたのは人間の大隊であった。農民や傭兵によるロングボウ部隊の重装歩兵達が固め、一方的な遠距離狙撃を繰り出した。


しかし、その攻撃が連合軍に当たることはなかった。


「奴ら…中隊の騎士たちの死体を盾にしていやがる…なんて非道なやつらだ」


「そもそも我らは外縁とはいえ、魔境と呼ばれるこの大森林を縄張りにしているんだ。お前らの弓なぞ止まって見える。このように弓を防げる盾があればだれ一人として死ぬことはないんだよ」


ジークは自身の種族と協力しているダークエルフに絶対の自信を持っていた。言葉として表れた自信はそれがただのほらではないことを戦況の変化で示していた。


アドルフの戦術はこうだった。ルースラ、ジーク、シ

ズの三名を中隊長としてゴブリンとダークエルフの混成中隊を編成。体格では勝ち目のないゴブリンは狙撃から中隊を守る盾の役割と近づいてきた敵からダークエルフを守護する役割を担っていた。


ダークエルフの役割はより単純だった


「深淵魔法レベル4【強大なる不死者】(グランドスケルトン)


仲間と協力し、集団で深淵魔法による巨大なスケルトンの召喚、ダークエルフに与えられた命令はこれだけだった。


「ま、まずい!退避せよ!あれは最低でも魔法大隊がなければ対処できない代物だ!!たい」


人間側の大隊長はスケルトンによってぺちゃんこに潰される。


指揮官が死亡した軍隊というのは実に脆い。この戦いはゴブリンの集落を陥落させることができなかった時点で決定されていた。


この数時間後、9割の人間兵士が死亡し、残り一割が捕虜として捕らえられた。


「本来ならば、この捕虜を材料として人間の国家に交渉を行うべきだが、我々はまだ小さな集落同士が手を組んだに過ぎない、交渉の席についてくれることはないだろう。我らを国家として認めさせるには現在主に二種類ある。一つは軍事力によって認めざるを得ない状況を作るか、もう一つはどこかの国家と協力し、支援を受けて国力が付いた頃合いで国家として承認してもらうかのどちらかだ」


正直言って第一の軍事力によるルートは現在あまり現実的ではない。今回の襲撃はゴブリン集落を事前にある程度要塞化していたおかげで被害はそこまでの大きさにはならなかったが、恐らく今回は小手調べでしかないのだろう、次は二個大隊、三個大隊と増えていき、いずれは戦争に発展する。


そうなれば私やジーク、ルースラやアズは生き残れるだろうが、ただのゴブリンやダークエルフが生き残れるとは限らない。


そうなればジリ貧でしかない。国家としての体裁を保つには国民が必要不可欠だ。


「やはり、第二の協力国を見つけるルートが確実だな。問題はその協力国を見つけるルートだが…」


「閣下、捕虜の情報をまとめた資料ができました。ご覧ください」


「ジークか、捕虜の身分や種族をわかりやすくまとまっているな…人間族(ヒューマン)獣人族(ビースト)…それに土人族(ドワーフ)か。ただ、ドワーフたちの持病欄にはほぼ全員が先天的醜形症と書かれているが…これはいったい?」


土人族(ドワーフ)特有の障害の一種とされています。知能や鍛冶技術に関しては影響はありませんが、顔がゴブリンのように醜くなり、会話も少し難しいことからシュタイン地下王国以外では差別の対象となっています」


「なるほどな…彼らは使えるかもしれん。捕虜に与えていた労働をすべて取りやめさせろ。人間族(ヒューマン)獣人族(ビースト)土人族(ドワーフ)の三種族からそれぞれ代表を選出させ、私との会談の場を作らせろ」


「畏まりました。直ちに手配いたしましょう」


ただ一方的な侵攻からの解決の手口が見つかりそうだ。我らはこれより、大きく前進するだろう。

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