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悪役令嬢カトゥラ・カドゥレは憂鬱げ  作者: ミナソコミナモ


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(40)カトリーヌ探偵の直感推理

 文化祭準備中の中庭で、勘違い令嬢集団に囲まれたあの時。

 メア・キルナーはサンドラとエイミの背後で、他の男爵子爵位子女である格下令嬢たちと共に背景になっているつもりだったのだろう。いかにも数合わせの一人でございとばかりに。

 しかし実際のところカトリーヌの目には、彼女が格下令嬢たちを取りまとめる中間管理職のような役どころを担っているのが読み取れていた。その程度には、彼女の雰囲気には非凡なものがあったのだ。

 しかしその実態は、サンドラとエイミをも手のひらの上で誘導していた、真の黒幕だったというわけだ。


「貴女にとってリリアはよっぽど目障りな人間だったみたいね。だから、文化祭前の忙しさにかまけてリリアが尻尾を出した途端に、サンドラとエイミをうまくけしかけて潰そうとしたのでしょう?」


「そ、そんな……わたくしリリアさんを害そうなんて提案していませんわ!」


「ええ、そうでしょうね」


 いかにも必死に反論するメア・キルナーの言葉を、カトリーヌは冷めた声で肯定する。


「そりゃ自分から「あいつとっちめようぜ!」なんて言い出すのはうかつなおばかのすることだもの。「殿下にあんな不敬な態度ひどすぎる」とか「あんな方が生徒会役員だなんて」なんてそれっぽい苦言をその場その場で組み合わせて、あのうかつなサンドラとエイミの攻撃性を引き出して、「リリアをとっちめよう」と二人に言わせて()()()んでしょ? いざとなれば責任がより重くなるであろう言い出しっぺにはならないように」


「まさか、そんなこと……っ」


「悪いけど、生徒会の調査で証言は取れてるのよ。サンドラとエイミにも、貴女が率いていた格下の令嬢たちにも」


「……」


 メア・キルナーは黙り込み、視線を低く横に流した。

 生徒会が証言を取った……その意味がわからぬ彼女ではないのだ。なにせカトリーヌの背後には女帝(ヒルデガルト)がいる。場当たり的な反論で覆せる調査結果ではない。

 だからこそ、反論すべきポイントはしかと絞る必要がある。


「……仰る通り、ノトシュさんへの苦言は幾度か話題に上げた記憶がございます。腹に据えかねていたのも事実ですので、感情的に繰り返してしまっていたかもしれません。ですが、皆様の意見を誘導するような真似は、とてもわたくしには……」


「そう? 人と人との会話なんて、程度の差こそあれ、本質は相手を自分の意見に共感させるための作業でしょう。ほとんどの場合は無意識でやってることでも、意識的に相手の考えに介入するように言葉や態度を選べば、無自覚な人間を操作するのはそう難しいことじゃないわ。……もっとも、本物のおばかはどう誘導しようとしても突拍子もない方向にぶっ飛んでいくから制御しきれないんだけどね……」


 最後の最後で特定の││か《・》の顔を思い浮かべて遠い目をするカトリーヌ。しかしその視界の端で、メア・キルナーがぴくりと肩を震わせた不穏な反応だけは見逃さない。

 カトリーヌは一呼吸入れて、話題を先へと進める。


「さて、ここから先は証拠のない話。と言っても、いずれ裏も取れるでしょうけどね」


 カトリーヌの瞳が爛々と輝き、メア・キルナーを写し込む。


「貴女、サンドラ・アンハイムにシャンデリアを落としたわね?」


 ──メア・キルナーの、瞳の輝きが完全に消え去り、濁りを増した。

 表情は完全に抜け落ち、それでいてよく見ればその頬は、夕照の赤みとは違う色合いに上気しているとわかる。


「……なぜ、証拠もなくそう思われたのですか?」


 それは自己弁護のための言葉ではない。カトリーヌを責める響きもない。

 ただ、なぜカトリーヌがそう思ったのか、その思考の流れを知りたいという、「欲望」の熱を帯びている。


 カトリーヌは冷めた目をして肩をすくめる。


「そんなもの、全部が全部筋道立てて考えてきたわけじゃないわ。私は探偵じゃないんだから。直感だったり思いつきだったりに頼って、総合的に貴女だと考えるとしっくりくる、程度の根拠しかなかった。だからこうやって罠を張って──」


「ではその直感や思いつきは? なぜ、そこに至ったのか、お聞かせ願えませんか? 嫌疑をかけられているわたくしにはその権利があると思います」


 これまでになく明瞭な語調で食い下がるメア・キルナーを、カトリーヌは半眼で睨みやる。


(執着……)


 制服の下の腕がまんべんなく泡立っていることをひた隠しながら、相手に負けない強い語調でカトリーヌは断じる。


「決定打は……視線よ」


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【完結済・コミカライズ】
身辺を清めてから出直してくださいませ

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