第28階層攻略準備
カレーライスを美味しく頂いてから数分後、俺は28階層の攻略に向けて準備することにした。
まず最初に「検索」を使う。
「まずは「魔王の墓場」攻略っと。」
<検索結果>
「魔王の墓場」は5つある災害級ダンジョンの一つ。
第1〜第9層
非常に難易度が低くなっている。その割には宝箱の中身の品質が高く、得られるアイテムなどを考えると非常に割は良いだろう。
第10〜第24層
急激に難易度が上がり実力者以外は寄せ付けないようになっている。難易度が急激に上がるだけあって得られるアイテムは非常に良いものとなっていて、中には換金することは不可能に近いようなものまで手に入るようになる。また、出現するモンスターには共通の弱点は存在しておらず、装備などによる弱点特攻などは厳しいため地道にレベルを上げてよりステータスを高めてから挑むことが進められる。そして第24階層のボスとなっている大狼獣は攻撃力、俊敏が非常に高く、ある程度の俊敏を持つものでなければ攻撃を当てられずに簡単に削られるだろう。また魔法などの近接戦闘をせずに遠距離戦闘を望んでも大狼獣を捕まえられるスピードのある攻撃がなければ厳しいだろう。さらに大狼獣は魔法も使うことができて、火、風、土、闇の4種類もの魔法を使える。このことからも単純な魔法戦も通じないだろう。
第25〜第50階層
これまでの第24階層までと比べると急激に難易度が上がる。地形自体が凶悪なものになり1層1層が広大にいなる。モンスターの強さも高くなり、バリエーションも豊かになる。その一体一体が冒険者ギルドの制定する討伐おすすめレベル500超の<爆絶級>に制定される。また第30、40、50層のボスモンスターは異常そのものでそれぞれ魔王クラスの怪物である。また第25階層からは上層への移動魔法陣が存在しないようになる。つまり一度踏み込んでしまえば第100階層までを完全攻略してしまうことでしか脱出は不可能である。相当なレベルと準備が必要とされる。またこのダンジョンの魔物はほとんどが食べられるものではないため大量の食料の用意もしくは食料を少なくして荷物を軽くしての超速攻攻略のどちらかでなければ攻略は不可能だろう。
第51〜第60階層
大森林をモチーフにした階層。場所によっては景色も良いため楽しめる。ただし出現するモンスターは一体一体が魔王級の力を持つ。更に凶悪なことはそのモンスターの中の約7割程度が群れをなしており、気づかずに群れのうちの一体に手を出してしまえば魔王級の魔物数百体を相手にすることになる可能性もある。森林エリアには食用に向いた栄養満点の植物も多く存在しておりそれらはこの世界でも最頂点に位置すると言っても過言ではないほどに素晴らし食材である。しかし、この食用に向く植物たちは人間の目で見極めるには非常に難しく同じ見た目のものでも即死毒を持っていることが多い。見た目での判断はほぼ不可能であるため植物を食べるのであれば<鑑定>系統の上位スキルである<超鑑定>や<植物完全鑑定>などのスキルが必須であるといえる。
第61〜第70階層
火山地帯をモチーフにした階層。各階層に数千もの火山が連なっており、気温は常に1000度は超える高温である。火山エリアは森林エリアに比べ出現するモンスターの数は非常に少ないが食料になるものは全く無いと言える。またモンスターは群れをなさない。しかし一体一体の強さで言えば森林エリアよりも高く、バリエーションも豊かである。ただしどのモンスターも防御力が非常に高く攻撃は非常に通りにくい。さらに耐性スキルを多種持っていることが多いためよほどの攻撃を入れなければモンスター一体すら倒せないだろう。得られるアイテムなどでは鉱石などが非常に多く、その鉱石で作られる武具は「幻想級」にもなると言われる。ただし火山地帯の鉱石で鍛冶をするには<鍛冶>系統の最高級スキルである<神鍛冶>のスキルが必要なだけでなく、莫大な魔力を消費するため、<神鍛冶>持ち数十人で鍛冶を行わなければ武具は完成しないと言われている。
第71〜第80階層
氷河をモチーフにした階層。非常に気温が低く、常に氷点下20度を上回ることはない。それぞれの階層がとても広大で森林エリア、火山エリアのおよそ1.5倍ほどある。出現するモンスターはそれぞれが森林エリア、火山エリアに比べて強力になっている。またこの氷河エリアは階層内モンスターの強さの差が今までの階層の中で最も大きくステータス的に見ると最大5倍もの差が見られる。またこの階層で得られるアイテムは魔道具が多い。その価値は世界が変わると言っても良いレベルであり当たり前だが金額はつけられず、その魔道具一つで戦争などは簡単に起こるだろう。ただし、氷河エリアに置いて宝箱は非常に出現しにくく、同時刻に氷河エリア全体で見ても1つか2つある程度なのである。
第81階層〜第100階層
情報なし。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
相当に有用な情報が得られた。「検索」は本当に素晴らしいと心の底から思った。
ではまずはこの第28階層のことを考えよう。ここは25階層を越えているため、もう上へと戻ることができない。そのため下へと攻略していかなければいけない。そこで必要となることはモンスターを倒すことだろう。ダンジョンのモンスターは基本エンカウントしたとき攻撃的な態度を取るため逃げるか戦うかしなければならない。「検索」によると<爆絶級>か……
冒険者ギルドでは討伐依頼が多く出されているため、それぞれのモンスターの等級を決めている。
まず討伐おすすめレベルは4人パーティーで見たときにそのパーティーのメンバー全員が超えていれば討伐はおおよそ安全にできるという目安の値だ。例えば最弱の魔物だといわれているゴブリンやコボルトならば討伐おすすめレベルは3だ。
次に討伐クラスは討伐おすすめレベルによって大きくレベル分けしたものだ。
1〜20 初級
21〜50 中級
51〜80 上級
81〜100 超級
101〜250 超越級
251〜500 超絶級
501〜1000 爆絶級
1001〜5000 超常現象級
5001〜 無限級
となっている(「検索」した)。
この討伐クラスは同じ冒険者ランクでも自分の功績で上下が分けられるときなどで使われる。例えば指名依頼をするときなどでは同じCランクでも上級と超級では大きく最低報酬が大きく異なる。こうして同じランクでも討伐クラスなどでさらに細分化しているのである。
ちなみにSランク冒険者は全員が超常現象級だという。
具体的に平均ステータスでこの<爆絶級>をあらわすと最低でも3500は超えると思われる。
というのも大体の種族「人間」は多少の個人差はあるもののレベル500で平均ステータスが4000、レベル1000で5000と言われている。これが正しければ、レベル500の4人パーティーでおおよそ安全に討伐できなければいけないわけだ。そのため最低でも3500超えだろうと考えられる。難易度が上がった第25階層から数えて4層目だということわ考えると、3500以上であるということは覚悟したほうが良いだろう。そうなると今の俺と同等あるいはそれ以上ということになる。その場合、戦闘の鍵になるのは間違いなくスキルである。強力なスキルを持っている方が明らかに有利に戦闘をすすめられるだろう。ただしいま俺が持つ戦闘に有用そうなスキルなど<暴食>しかない。<暴食>の性能が具体的にわからない以上<暴食>に賭けるのはナンセンスだろう。するとなにか強力なスキルを得る必要があるだろう。
そう考えた俺が使うのはこのアプリ
「ショップ」
ではなく「副業」を使おうと思う。
理由としては資金が60000ゴールドと限られている今、食料などの調達もあるためできる限り節約するべきだと考えたからだ。また少し「ショップ」を覗いたところ60000ゴールド使ったとしても<爆絶級>に効果的な強力なスキルを得ることは難しいように感じたのである。
また、副業アプリで第2職業を得ることで強力な職業スキルを得ることができる。
そのようなことから俺は「副業」を使うことにした。
<副業>
第2職業設定
・戦闘系
見習い剣士 1ポイント
剣士 2ポイント
軽騎士 4ポイント
上級騎士 5ポイント
見習い魔法使い 1ポイント
魔法使い 2ポイント
付与術師 4ポイント
回復術師 4ポイント
魔術師 5ポイント
拳闘士 3ポイント
格闘家 5ポイント
狩人 2ポイント
罠師 4ポイント
弓使い 3ポイント
テイマー 4ポイント
etc
結構選択肢は多いようだ。所持している5ポイントまでの範囲で選べるものは戦闘職だけでもざっと20はありそうだ。
ここで選ぶ第2職業でこれからの戦闘に大きく関わるので相当に大事だ。
さて何を選ぶか……
剣士系統の職業はイメージがカッコよく選びたい気持ちがあるが今回は一番最初に除外する。理由は単純でお金だ。剣士系統の職業は剣を買わなければならないのでお金を消費してしまう。そのため剣士系統はパスだ。
お金があまり掛かりそうにないものをピックすることにする。
魔法使い系統、拳闘士、格闘家、罠師くらいだろうか。
まず魔法使い系統。これは簡単で魔力を消費して魔法を使う職業だ。魔法杖があれば魔法の威力や制御がよくなるそうだがなくても問題なく戦闘できるそうだ。
次に拳闘士、格闘家だ。これらは名の通り、肉弾戦を行う職業だ。籠手を装備して技の破壊力などを上げることもできるそうだがなくても問題ないそうだ。
最後に罠師で、これはあまり選ぶ気が起きない。理由は規模の小さい罠ならば何もいらないのだが強力な罠を作るならば罠の素材が必要なのだとか(スマホが教えてくれた)。
うーん、迷う。これから命を預ける職業だと思うとなかなか決断ができなかった。
「隼様におすすめの職業があります。」
ほうほう、スマホにはおすすめの職業があるのか。
教えてくれ。
「はい。それは消費ジョブポイント4の暗殺者です。」
…………は?
どういうことだ?
「はい。まずお気になされていたお金については、もともと装備されていた銅の剣を使えば良いと思われます。短剣まではいきませんが十分に短い刀身をした片手剣ですので問題はないでしょう。また、強度に関しても存在進化時に装備品も強化されており、いまでは銅の剣、鉄の胸当てはともに伝説級になっているため問題ないと思われます。そして何よりこの職業を推す理由は得られるスキルにあります。まずこの職業は盗賊の上級職の隠密者の上級職であるため、職業設定時にいくつかのスキルが得られます。そのためモンスターとの戦闘でレベルを上げずともスキルを職業スキルの習得ができます。また、職業柄得られるスキルには隠密に偏ったものが手に入ります。この階層、それ以上の下層のモンスターを相手に戦うのであれば、必然と自分と同等もしくはそれ以上の強敵と戦うことになります。そうなった場合正面衝突をすれば少なからずダメージを受けることは確実です。連戦になる可能性がある中、多くのダメージを受けることは死に近づくことに他なりません。そのため相手に気づかれるよりも早く敵を倒し効率よくレベルアップすることが必要になります。そこで必要になるものが隠密系のスキルです。隠密系のスキルを初戦闘時から使える暗殺者を推奨させていただきました。」
ほう、このスマホがこう言っているならばそうなのだろう。
まあ、ひとまずは銅の剣を見てみる。だが元のものと何ら変わっていないように感じるのだが。
「アプリ「解析」起動。対象銅の剣、鉄の胸当て。スキャン開始……完了。解析開始…………完了。」
<解析結果>
銅の剣…伝説級。銅で作られた片手魔剣。勇者の存在進化の影響を受けて大幅に強化された。刀身には膨大な魔力を宿しており、一気に開放すれば人間の国一つを半壊させられる。また強化時に大罪スキル<暴食>の影響を受けたため生物を斬った際に生命力を吸い取ることで自身を強化する。
鉄の胸当て…伝説級。鉄で作られた魔防具。勇者の存在進化の影響を受けて大幅に強化された。この胸当てに込められた膨大な魔力は胸だけでなく全身を守っており、その防御力は非常に高く隕石程度では傷一つつけられないだろう。また強化時に大罪スキル<暴食>の影響を受けたため所有者が倒した生物の生命力を吸い取ることで自身を強化する。
スマホが言っていることは本当だった。
てかお前勝手にアプリの起動とか使用とかできるのな!
「はい、一部は可能です。しかし基本は隼様の許可が必要です。」
そうらしい。
けど本当に伝説級なのかよ。これはやばいな。
ちなみにここでこの世界の武器の等級を解説しておく。
武器の等級には大きく分けて6つある。上から順に創世級、神話級、幻想級、伝説級、貴重級、普通級に分かれる。その中でも上位4つは異次元の力を持つ武器でそれ一つで世界のあり方すらも変えるとされ、最上四級と呼ばれており今世界で確認されてるものは北にあるアギスミレ女王国の最強の戦女神アテナが持つと言われる幻想級「聖盾イージス」、俺たちを召喚したスノドロ王国が保有する伝説級「勇聖剣」、スノドロ王国と隣接するハナズ王国最上位騎士のガラハッドが持つ伝説級「湖光の聖剣アロンダイト」、他2種が確認されている。ただ逆に言うとこれだけしか確認されていない。ここは所謂剣と魔法のファンタジー世界である。武器の母数が少ないわけがない。それでもこれだけしか確認されていないのだ。このことから最上四級の貴重さがうかがえるだろう。また先に言ったとおり性能もぶっ壊れだ。それらより下の貴重級、普通級はそれぞれさらに4種に性能で別れており、貴重級は黒級、金級、銀級、銅級、普通級は赤級、青級、黄給、白級となっている。ただそれぞれのクラスに最上四級と比べると大きな差はなく黒級でも一振りで戦況を覆すことはない。
とまあ、スマホが言う提案に間違いはない気がする。
ということで俺は「副業」アプリで4ポイントを消費して、第2職業を暗殺者に設定した。