第8話 イーシャのダンジョン
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朝になった。
ステーキと魔石を美味しく頂き、俺は装備を整えて、いよいよ今日イーシャのダンジョンに挑戦する。
旅の途中にエルザさんに聞いていたんだが、ダンジョンの入り口は、大きな広場の中央にそびえ立つエトワールの凱旋門のような門だそうで、門からは反対側の景色が見えるが入ると、ダンジョンのある森の中の草原に着く、子どもや観光客が間違えて侵入しないように防護柵と衛兵が常時見張っている。
ちなみに過去、ダンジョン内に拠点の町の建設を計画し、魔物の襲撃を受けたとき以外、何故か魔物はダンジョン入口の門には近づかないそうで、門番は冒険者の侵入と間違えて子どもなどが、入り込まないように管理しているだけだそうだ。
広場のダンジョンに到着すると、多くの冒険者が並んでいる。
ダンジョンに入るには、身分証の提示と大銅貨1枚の支払いが義務となっている。
衛兵は名前と日帰りか長期滞在かを確認記録して冒険者に木札を渡す。
木札には、入った月と日付、番号が記載され、帰還時は衛兵に木札を返して生存を報告する。
ちなみに木札を紛失した際は、大銅貨1枚を支払う。
門は表と裏どちらから入っても、ダンジョンに着くのだが、管理の都合で侵入は一方通行となっており、ダンジョン側の門にも衛兵がいて、帰還も一方通行で入口とは反対側の門から出てくる。
当然、死亡して帰ってこない冒険者も多数いる。
例外的にクラン所属で、食料や装備などの補給が行える冒険者は、月単位でダンジョンに挑戦しており、1年以上ダンジョンに入る場合は、木札の確認で帰還報告ができなくなるので、クランから生存の報告を衛兵に連絡する。
さすがに、1年以上ダンジョンで活動する冒険者は少なく、そんな冒険者は帰還することなく、ダンジョンの中で生涯を終えることがほとんどで、過去に1年以上ダンジョンに滞在して帰還した冒険者は6人だけだそうだ。
俺も列に並び、衛兵に身分証を提示し日帰りと報告。
大銅貨1枚を払い木札を受け取る。
木札には10月11日、105番と記載されていた。
門を抜けると、そこは森に囲まれた平原だった。
目の前には、先に入った冒険者の姿が見える。
入った瞬間。
魔素の濃さを実感すると共に、非常に心地よく感じた。
やはり、魔物の体の俺にとっては、こっちの世界が本当の居場所なのかも。
ホーシャム村の魔の森よりも、濃い魔素を実感した。
俺は前を行く冒険者が少ない西の森に向かった。
エルザさんの事前情報で、西の森の浅い箇所は群れで活動するシルバーウルフが多く生息し、少数で活動する採取目的の冒険者には人気がないとのことだった。
俺はあえて冒険者の少ない西の森に進んだ。
森に入ってしばらく進むと美味しい気配を感じた。
近づくと魔素キノコが3本生えていた。
久しぶりの取れたてキノコは、格別に旨く感じた。
魔素の濃さにより、ホーシャムで食べていたキノコより美味しく感じる。
魔力草や魔素キノコを食べながら進むと、森には赤や緑、水色、茶色、黄色、黒などの小さな玉のようなものが漂っているのを感じた。
魔力草などの気になる気配とは、また違った気配も感じられるので、取り合えず近づいて食べてみた。
魔石などとは異なるが、美味しく感じる。
小さな玉は、森の奥に進むほど増えていくが、手に取ろうとしても掴めなく、持ち帰ることはできそうにない。
この球は、ダンジョン特有のものなのか?
こんどエルザさんに会ったら聞いてみよう。
そんな風に探索を続けると、前方に9つの動く気配を感じた。
気配は素早く近づいて来て、視界にとらえると赤い目をしたオオカミの群れであった。
エルザさんに聞いたシルバーウルフだろう。
シルバーウルフは俺をめがけて駆けてくる。
9体とは多いな、ちょっと不安。
俺は先頭を走る集団に音と光を閉ざす闇魔法を放った。
5頭が鳴き声を上げて、前のめりに倒れた。
続けて、石ツブテを生成し風魔法に乗せて4頭に放った。
4頭のシルバーウルフは頭部に石ツブテを受けて倒れた。
俺、強いのかも?
石つぶてを頭部に受けたシルバーウルフに近づき、息のある個体に剣で止めをさして取りこんだ。
闇魔法を受けた5頭は、頭をきょろきょろ動かして怯えた様子で伏せている。
3体はそのまま剣でとどめをさして取りこんだ。
残る2体はミスリルの剣の試し切りとする。
少し離れて、1体の魔法を解除した。
シルバーウルフは立ち上がって向かってきた、
タイミングを合わせて剣を振りかざすと、抜群の切れ味でシルバーウルフの体を切り裂いた。
死体を取りこんでから、今度は剣に少し魔力を込めてみた。
刀身が淡く輝いている。
最後のシルバーウルフの魔法を解除すると、魔物は立ち上がって向かってきた。
魔力を込めた剣を振るうと、手ごたえをほとんど感じることなく、魔物は真っ二つに切り裂かれた。
お~150万円の剣ってやっぱ凄い。
前のと違う。
切り裂いた魔物を取りこんで、魔石を意識して1個を手のひらに取り出した。
色は緑でゴブリンソルジャーの魔石と同じぐらいの大きさだった。
ついでにさっきいっぱい取り込んだ小さな色のついた玉を意識すると、体の中に感じるが魔石はない様だ。
一つ意識して手のひらに取り出すと、赤い球は再び空中に漂い始めた。
これってなんだろう?
それからは、換金と食事用に魔力草と魔素キノコを採取して、門へと戻った。
門をでて、衛兵に木札を返して冒険者ギルドに向かった。
ギルドの換金所で魔素キノコを換金し、振り返るとエルザさん達、ベルベットのメンバーがちょうど入ってきた。
俺はベルベットの皆さんに、剣と宿の紹介のお礼をしに近づくと、3人は笑顔で迎えてくれた。
「カイルくんも、ダンジョンにいってたのかい?」
「はい、魔素キノコを採取して換金したところです」
「剣を買ったみたいだね。見せてみな」
俺は、剣を抜いてエルザさんに渡した。
「ほう、ミスリルの剣かい。いい剣だ」
「扱いやすくて、手にしっくりきます」
換金を終えたベルベットのメンバーと食堂で少し話をした。
俺は、西の森で見た空を漂う色のある玉について聞いてみたが、3人ともそんなのは見たことがないと答えた。
あれは俺にだけ見えるのか?
美味いんですけど。
玉の正体は分からないままだった。
エルザさん達は、今日は肩慣らしに少しダンジョンに入ったそうで、今後は南に向けて、しばらく遠征するそうだ。
しばらく話して、ロビンさんから一人なんだから、決して無理をしないように念を押されて解散した。
アイリス停に戻った俺は、サウナに入りステーキを食べて、部屋でシルバーウルフに変身したりした。
部屋の中で、再度色のついた玉を取り出すと、玉は手のひらから漂うことなく消滅した。
ダンジョンでしか生きられないのか?
ベッドに横になり、明日以降のことを考えた。
宿も3日の予約だったので、町で生活するならば延長するしかない。
ダンジョンに入った瞬間に感じたが、人の姿に化けているが、所詮俺は魔物だし、ダンジョンの中のほうが心地良い。
話し相手となるのは魔物だけだけど。
人として、エルザさん達や町の人と交流して、いろんな話をしながら過ごすのも捨てがたいが、明日からはしばらくダンジョンに潜って冒険をしてみよう。
そう決めて眠りについた。
翌朝食事を済ませて、アイラちゃんにしばらくダンジョンで遠征するから、戻ったらまたよろしくね。
と言って宿を後にした。
初投稿作品です。
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