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第6話 イーシャへの旅立ち

いいね!評価、ブックマークなど頂けると、大変励みになりますのでどうぞよろしくお願い致します。

 魔法の練習をしながら、9月の終わりを迎えるころになると、素材採取で軍資金もだいぶ溜まった。


 冒険者ギルドでは知り合いも増えて、ソロ活動を続ける俺には、パーティー勧誘の話も多くなってきた。

 将来的には、冒険者パーティーにも入ってみたいが、今はまだソロで経験を積みたい。


 今のところ、この村で(カイル)のことを知る冒険者には会ったことがないが、そろそろ異世界の大きな町も観てみたい。

 最近、そんなことを考えていた。


 そんな時、冒険者仲間との会話で、イーシャという町の噂を聞いた。

 かなり大きな町で、特徴的なのは町の中にダンジョンの入口があること。

 ダンジョンに入ると、そこには空があり、お日様も昇り、夜も訪れる。

 魔の森のように魔物が多く生息し、海や山もあるとのこと。


 まさにダンジョンの入口が、異世界に繋がっている世界。

 未だに、すべてを制覇した者はいないというファンタジーワールド。

 

 本当の話か疑問もあるが、俺自身がファンタジー世界を実感中なので、是非行ってみたい。

 冒険者仲間に聞いたところ、隣町バトリーからイーシャへの馬車が出ていて、馬車で10日はかかるようだ。

 ダンジョンの町イーシャは、ここホーシャム村と同じクロスター王国に属するそうで、身分証があれば移動は問題ないそうだ。


 翌日には、冒険者ギルドのおばちゃんに近々、イーシャに旅立つことを話した。

 ちなみにギルドのおばちゃんの名前は(マリリン)この時初めて知った。

 ギルドを出た後は、宿屋のノアちゃんに旅立ちを告げた。

 

「寂しくなります。カイルさん、いつか必ず帰ってきてくださいね」

 ノアちゃんからうれしい言葉をもらった。


 それからは魔の森に入り、長期旅行に備えて、食料となる魔力草、魔素キノコ、魔石をたくさん採取した。


 隣町バトリーは、川沿いを南下した先にあるそうで、俺はホーシャム村を離れて、徒歩でバトリーに向かった。


 夕方前には、丘からバトリーの街並みが見えた。

 町の外周には、広大な畑が広がっている。小麦の産地と聞いていたので、今は収穫後にあたるのかな?

  丘から見るとホーシャム村の倍ほどの家が立ち並ぶ。


 門番にあいさつし、身分証を提示するとすんなり町に入れた。

 入口近くの宿屋に入り、受付の女性にイーシャへの馬車について尋ねた。


「イーシャでしたら、中継都市ブリストルを経由しますね」

「ブリストルへの馬車でしたら、明日の朝、広場から便が出ますよ」


「ちょうどよかった。それでは一泊宿をお願いします」


 宿代は食事付きで一泊大銅貨8枚、ホーシャム村より少し高い。

 夜はよく眠れて朝を迎えた。


 朝食を部屋でとってから、広場に向かった。


 広場には、2頭引きの幌馬車が2台あり、御者に中継都市ブリストルへの乗車をお願いした。

 ブリストルへは途中2つの村で宿泊し、4日目の夕方に到着予定で、初日は野宿とのこと。運賃は宿泊費込みで銀貨6枚。

 宿泊地での夕食と朝食以外は、自分持ちとのことだった。

 まもなく出発するとのことで、御者に銀貨を渡し、幌馬車に乗り込んだ。


 馬車には、俺のほかに獣人の親子4人と若い夫婦が2人乗っていた。

 2台目の馬車には、大量の農作物と行商人兼護衛の2人が乗っている。


 馬車は、中継都市ブリストルから村々で商品を販売しながら、バトリーに来て、帰りに農作物を買い取りながら、乗客を乗せてブリストルに戻るそうで、バトリーでは大量の小麦を購入したとのことだ。


 舗装されていない馬車の旅は揺れがひどい、俺の体は痛みを感じてないが、同乗する獣人の親子と若い夫婦には辛いようだ。

 最初ははしゃいでいた子どもも、今は親の膝で、ぐったりしている。

 10月に入り暑くは無いが、幌馬車の旅は後ろの景色をみながら、ひたすらおしりの痛みに耐える苦行のようである。


 お昼になると、御者は馬を川辺で休ませ乗客は、腰を伸ばしてそれぞれ簡単な昼食をとる。

 俺も少し離れたところに座って、目立たぬように魔力草と魔素キノコ、魔石を食べた。


 行商人兼護衛2人の名前はローガンさんとヘンリーさん。

 少し話しをすると、ここら辺はオオカミなどの肉食動物が生息し、最近は盗賊が出没するようになったそうで、2人の本業は行商人だが護衛を兼務して警戒しているとの話であった。

 ちなみに2人は30代のパッと見ベテラン冒険者だが、腕前はそこそこで、リーダーはローガンさんとのことだった。


「盗賊が出たら運賃無料にするから援護してね」

 と、冗談交じりで頼まれた。

 

 1時間ほどの休憩の後は、再び馬車は揺れながら今夜の野営地まで進んだ。

 夕方になる前には見晴らしのいい川辺の野営地に着き、それぞれが食事の支度をはじめた。

 俺も食事をとり就寝した。

 

 オオカミや盗賊の話があったので、夜間は不安もあったが、襲撃もなく、無事朝を迎えた。

 各々が朝食を食べ出発の支度をし、2日目の宿泊地コビーに向けて馬車の旅が始まった。


 出発してしばらくし、渓谷を進むころ異変が起きた。

 前方の道には大木が横たわり、道を塞いでいる。

 

 後方の馬車から、ローガンさんが「盗賊だ!」と鋭い声を発した。

 すぐに崖の上に弓を構えた盗賊3人と、後方からも武装した7人が現れた。


 後方の7人のうち、ボスらしい男がドスの効いた声で

「逃げ場はない。抵抗すれば殺すぞ」

 獣人の子ども達は「ママー」と怯えながら母親にしがみつく。

 若い夫婦も、不安に身を寄せ合う。


 怯える獣人の子ども達を見て、怒りが込み上げてきた。

 こいつら許さんぜよ!


 俺は、怒りに身を包み馬車を降り、崖の上で弓を構える3人に音と視界を閉ざす闇魔法を放った。

 3人は悲鳴と共に膝を折り、内2人が崖から落ちた。


 そのまま後方の馬車に近づき、7人の盗賊の足元に泥沼魔法を放った。

 足をとられた盗賊は首まで泥沼に沈んだ。


 振り返ると、闇魔法を受けた3人の盗賊は、落ちた2人に続き、残り1人も転落していた。

 泥沼に沈んだ7人の盗賊は、首だけ出して何やら喚きちらしている。

 ローガンさんとヘンリーさんは、「ポカン」とした表情で俺を見て、馬車から降りてきた。


「カイル君、あんた魔法が使えるのか?助かったよ」


 獣人親子と若い夫婦からも、笑顔で感謝された。


 その後、ローガンさんから、盗賊の処遇について相談された。

「捕縛は、カイル君の功績だ。こいつらどうする?」


「盗賊の処遇と言われても、分からないので教えてもらえますか?」


 通常盗賊を捕縛したら、処分は捕縛者の裁量に任される。

 首を切り落として、近隣の町や村に報告すると報奨金がもらえる。

 盗賊に懸賞金がかけられている場合は、懸賞金ももらえる。

 盗賊を生きたまま捕縛して、健康な状態で、突き出せば犯罪奴隷として売れるので、報奨金が増額されるとのことだった。


 俺は、ローガンさんら行商人とお金は折半でいいので、処分はローガンさんに任せたいとお願いした。


「俺たちは、何もしてないのにいいのか?」

 ローガンさんに確認されたが、まったく問題ないのでお願いしますと答えた。


 盗賊の処遇は、崖から落ちた3人の内2人は死んでおり、残りの1人もひん死の重傷のため、首だけの姿となった。

 泥沼の7人は、一人ずつ引き上げて、猿ぐつわを噛ませロープで縛って馬車につないだ。


 3人の首を、盗賊によく見えるよう、先頭に繋いだボスの背中に吊るし

「お前ら、遅れるようなら容赦なく首をはねるぞ!」

 ローガンさんの説得力のある一言で、盗賊はおとなしくなった。


 その後、ローガンさん達と前方の大木を処理して、俺は泥沼から魔法で水分を取り除き、昼食後、宿泊地コビーに向けて出発した。

 盗賊騒ぎもあり、コビーに着いた頃には辺りは暗くなっていた。

 

 乗客は皆、疲れて直ぐに宿に向かったが、俺とローガンさんは盗賊の件もあり、門番に連れられて町の事務所に案内された。


 事務員によると、盗賊は最近、渓谷付近で噂されている盗賊団に間違いなく、報奨金はボスが金貨2枚、他の団員は銀貨7枚であった。

 別に盗賊団には金貨10枚の懸賞金も出ており、五体満足の状態で7人引き渡したため犯罪奴隷として1人あたり、金貨3枚で買い取ると言われ、ローガンさんは終始ホクホク顔となっていた。

 

 お金は明日の出発までに用意すると告げられて、総額金貨39枚と銀貨3枚と記載された金銭受渡しの引換証をもらった。


 事務所を出たローガンさんは、お金は折版といったが、あんまりなのでカイル君が金貨20枚、俺たちが金貨19枚と銀貨3枚にしようと提案され了承した。

 ローガンさん曰く、犯罪奴隷の買い取り価格が一人金貨3枚は安いけど、食事や運搬、販売の手間を考えたらしょうがない。


 銀貨1枚が1万円と考えて金貨1枚は10万円。

 力のある奴隷一人の価値が30万円は、確かに安いかも。

 そのなことを考えながら、宿の部屋で食事をとった。


 翌日、出発前に町事務所で引換証を渡して、お金を受け取った後は、ローガンさんに金貨19枚と銀貨3枚を手渡した。

 ローガンさんからは、以前口約束した運賃無料分の銀貨6枚が返された。

 

 その後の馬車の旅は問題もなく進み、4日目の夕方には予定どおり、高い城壁に覆われた中継都市ブリストルに到着した。


初投稿作品です。

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