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第34話 通信魔道具を作ってみました

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 一旦ブローニュに帰還した俺たちは、ボルトンのギルド長クロエさんのもとへと向かい、南の領域の森で起きた一連のアンデット騒動について報告した。


 南の領域のエルフの集落の悲劇と、森の魔物のアンデット化はこの世界の住人にとって見過ごすことのできない事態であり、直ぐにボルトンの冒険者を大型飛行艇で南の領域に派遣して、アンデットの掃討戦が行われることになった。


 俺たちも、ソフィア達と専用飛行艇でアンデット掃討戦に参加することになった。

 この間、アンデットと戦う武器のないチビには、ヨークの鍛冶職人のルイさんにお願いして、前足に装着する魔力を流せるミスリル製のかぎ爪を2本作製してもらった。


 少し動きづらい箇所を改良し、ソフィア達ミレニアムのメンバーと掃討戦に参加した。

 12月になり比較的暖かい南部領域でも、もうすぐ雪が降り始めるので、掃討戦は多くの冒険者に動員をかけて、精霊の導きのもと短期集中的に開始された。


 精霊達には各チームに分かれた冒険者達をアンデットの場所まで案内するようにお願いし、広域的な掃討作戦により、12月が終わる頃には森のアンデットは冒険者達の手によって掃討された。


 俺たちもソフィア達ミレニアムのメンバーと久々にチームを組んで、アンデット掃討作戦に参加した。

 この間、チビもミスリルのかぎ爪型を使いこなせるようになった。


 南の領域のアンデット掃討作戦が無事終了し、ボルトンでは冒険者ギルド主催の慰労会が開催された。

 慰労会には多くの冒険者達が参加し、酒を酌み交わして情報交換をするなかで、冒険者の中にも俺たちのように専用飛行艇を購入し、遠くの領域まで冒険に向かうチームもだんだんと増えてきたことを知った。


 今回の掃討作戦で、俺は前世にあった携帯電話のような通信手段が魔道具で作れないか真剣に考えるようになった。

 携帯電話の様な魔道具があれば、その場に行かずに遠くの町との情報交換も可能となるし、今回の様な合同作戦では、冒険者間やギルドとの連絡が出来れば、ピンチになった時の救出などにも幅広く使える。


 俺はその日から携帯電話の魔道具の仕組みについて色々と考えるようになった。

 音を電気信号に変えて電波で飛ばすような前世の高度な技術を再現するような能力はないので、魔法を使って簡単に通信が可能な仕組みを考えた。


 ああでもない、こうでもないと試行錯誤し、闇魔法を使って音を吸収する魔法と吸収した音を放出する魔法を考えた。

 ミスリル板に闇魔法で音を吸収する魔法陣を描き、もう1枚のミスリル板には音を放出する魔法陣を描いた。

 ミスリル板が近くにあると吸収の魔法陣に吸い込まれた音は、放出の魔法陣の描かれたミスリル板から聞こえてくる。


 しかし、2つのミスリル板を遠くに離すと音は聞こえなくなった。

 俺はヨークの魔道具職人のルーバンさんに離れた2枚のミスリル板を連動させる魔法的な仕組みが作れないかを相談することにした。


 俺はさっそく、ヨークに飛んでルーバンさんの工房に向かった。

 ルーバンさんの工房では、技術者と職人らにより大型飛行艇の製作が行われていた。

 最近では大量生産のため、店舗と離れた場所に大きな工房が増設され、一部の部品の製作は他の店舗にも協力してもらっているそうだ。


「ルーバンさん、忙しいところ恐縮ですが、新しい魔道具製作の相談に乗ってもらえませんか?」


「何、新しい魔道具だと、さあ話してみろ」


 俺は、闇魔法を使った音を吸収する魔法陣と放出の魔法陣について説明し、ミスリル板を遠くに離しても2つのミスリル板を連動させる魔法的な仕組みが作れないかを相談した。


「これは面白い」

「ミスリル板に無属性魔法の同調を加えてみたら面白いかもしれないぞ」


 俺は無属性魔法の同調魔法についてのイメージを教えてもらい、音吸収の魔法陣が描かれたミスリル板と音放出のミスリル板を並べて、上部の空いたスペースに同調の魔法陣を描いた。


 すぐに2枚のミスリル板を離して、実験すると離れた場所でも放出のミスリル板から音が聞こえるようになった。


「成功したぞ!」


 俺は同調の魔法陣を描いたミスリル板を2組作って、公衆電話の受話器の様な形の入れ物を土魔法で作り、2組のミスリル板を互い違いにし、口元には吸収、耳元には放出をセットして、受話器型の魔道具を2個作った。


 完成した魔道具のテストの為、一つをルーバンさんに預けて、一つは俺が持ってテストをしながら離れて行った。

 ヨークの町の両端に離れても、受話器からはルーバンさんの声が聞こえた。

 大成功である。


 その後、俺とルーバンさんは別々の魔道飛行艇に乗り込んで、ヨークの町を逆方向に飛び立って、距離が大きく離れても会話が可能かをテストした。

 受話器型の魔道具からは別の町まで飛んでも鮮明にお互いの声が聞こえて来た。

 俺たちは実験成功の喜びを噛みしめながらヨークの町に戻り、画期的な通信魔道具の構造をドワーフの技術者らを集めて説明した。


 俺は技術者達に吸収と放出の闇魔法のイメージを伝えて、工房にあるミスリル板に次々と吸収と放出の魔法陣を描いた。

 実験を兼ねて同じ同調の魔法陣を刻んだミスリル板を6枚2セット製作し、6台の受話器型通信魔道具を作った。


 テストすると6台の通信魔道具は6人での会話が可能であった。

 この通信魔道具はテストも兼ねて東部領域の6つの町の代表者に配って、それぞれの町の連絡用に使ってもらうつもりだ。

 それとソフィア達と俺たちの連絡用とルーバンさんと俺の連絡用に通信魔道具を2組作った。


 大型飛行艇の生産が忙しいルーバンさん達には申し訳ないが、技術者チームには、これから通信魔道具のテストを続けてもらい、その技術を他の町の技術者達に伝えてもらう事にした。


 ルーバンさんの工房を後にしてからは、東部領域の代表者たちとソフィアに製作した通信魔道具を配り、使い方の説明をした。


 ラミア族の町マーゲイトも今では人族の姿のまま訪問している。

 以前は、ミレニアムのメンバーのラミア族のベラに俺が人族の姿でマーゲイトに行けば、女性だけの種族ラミア族の誘惑により、町を出られなくなると言われていたが、他の町の代表者達からラミア族のリーダーのオリビアさんに俺を絶対に誘惑しないように誓約書が交わされ、今では人族の姿で町に行けるようになった。


 俺としては、ラミア族の誘惑を個人的に体験してみたいのだが、シルビアとエオリア同行の元、東の領域の代表者と交わされた誓約はしっかりと守られている。


 俺たちの冒険は、3人とチビと話をして雪解けの4月から南部領域の森の先を冒険することにした。

 1月から3月まで俺は魔道具製作とシルビア、エオリア、チビとブローニュ周辺での冒険者活動を続けた。


 冬の間に通信魔道具の普及も進み、飛行艇には通信魔道具が標準装備され、冒険者達にも行きわたるようになった。


 冒険者用の通信魔道具は所属する冒険者ギルドで一括購入され、出発する冒険者に貸与される。

 これにより、不測の事態に陥った冒険者からギルドに緊急連絡が入るようになり、ギルドは直ぐに近くにいる冒険者に救助などの連絡を送れるようになった。


 今後は、1つの通信魔道具で電話のように複数個所に通信を繋げられるような仕組みが出来ないかを模索していく。


 雪解けの4月、俺たちは3泊4日の日程で南部領域の冒険を再開した。

 アンデット掃討作戦が行われた森の先は草原が続いていた。

 今では俺たちの他にも、魔道飛行艇を使って南部領域の冒険を始めた冒険者チームもいて、新しく発見した情報は冒険者ギルドを通じて、多くの冒険者たちに情報共有が行われるようになった。


 俺たちは南部領域の草原を魔物と戦いながら南に進んで行った。

 野営を続けながら南へと突き進むと前方に巨大な地割れが出現した。

 対岸は数百メートル先に見える。

 地割れを覗くと真っ暗で底は見えなかった。


 とても徒歩では越えられそうもないので、俺たちは魔道飛行艇で地割れ部分を飛び越えることにした。

 念のため、高度を上げて地割の長さを確認してみたが、いくら高度を上げても地割れは先が見えない所まで延々と続いていた。


 俺たちは地割れ部分を飛び越えた先から冒険を続けた。

 3泊4日の日程で冒険を続け、5月に入った頃、ようやく草原の先に町の城壁が見えてきた。

 南部領域の冒険を続けて、廃墟となったエルフの町を見つけて以来の町の発見である。


 俺たちは通信魔道具を使って、ボルトンの冒険者ギルドに南部領域での町の城壁発見と今から町を訪問することを報告した。

 冒険者ギルドからは、異常事態が起きた時は直ぐに連絡するよう指示を受けた。


 警戒しながら城門へと近づくと城門には2人の衛兵が立っていた。

 俺たちは衛兵の姿が確認できる距離まで近づくと、その異様な衛兵の姿に驚いた。

 衛兵は2人とも人族の姿をしているが、ひとりは頭部に鳥の頭が付いており、背中には羽が生えていた。

 もうひとりの頭部には馬の頭が付いていた。


「言葉、通じるのかな?」


 今までエルフ、ドワーフ、リザードマン、ラミア、獣人族などは見てきたが、頭部が完全に動物の顔をした種族は見たことがない。

 俺は、人族の姿から久々にタールの魔人の姿に戻って、漂う精霊達に乗せてもらって衛兵に接触することにした。


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