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第31話 魔道飛行艇の製作

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 ブライトンの町で魔王様夫妻から北の領域の町についての貴重な情報と北の領域の地図をもらった俺たちは、その後も週に2泊3日の日程で北部の町を巡る冒険を続けた。


 それと俺が行っている輸送業務を魔道飛行艇を開発することにより、それぞれの町で可能にする試みとして、魔道具の製作を休日や空いた時間に取り組むことにした。

 もともと前世では、物を作ったりすることが好きだった俺は、この世界の魔道具の製作にもとても興味がある。


 最近では、休日や空いた時間にヨークの魔道具職人のルーバンさんのところに行って、魔道具の製作を教えてもらっている。

 前世にあった家電製品の製作などは、とても素人の俺には不可能であるが、この世界の魔道具の構造を聞いてみると、各種魔法が使える俺にも出来そうな感じであった。


 魔道具の構造を簡単に説明すると、例えば魔道冷蔵庫の構造だが、主要な回路は魔力を伝達しやすいミスリルの薄い板であった。

 冷気の魔法をイメージしてミスリルの薄い板に放つと、ミスリルの板には冷気の魔法の魔法陣が浮かび上がる。

 この魔法陣が浮かび上がったミスリルの薄い板が冷蔵庫の魔道具の核となる。


 この魔法陣を起動すると冷気が発生する。

 起動には魔石を使うのだが、魔石は風の魔石が最適であるが、火、土、水、無、光、闇の魔石でも起動する。

 風の魔石であれば、魔石の魔力をそのまま核となるミスリル板に流すのだが、他の魔石であった場合でも、各属性の魔石の魔力を変換する魔法陣が刻まれたミスリル板を通すことによって、他の属性の魔石でも冷気が発生するようになっている。


 この2つのミスリル板が魔道具の核となる部分で、あとは冷蔵庫の魔道具であれば、側となる箱やドア部分を金属や保温に優れた魔物の素材で作ることになる。


 俺は、物資を輸送する飛行艇の話を魔道具職人のルーバンさんとしたところ、ルーバンさんも空を飛ぶ魔道具の製作を以前から模索していたそうで、とても乗り気に話に乗ってくれた。


 俺の中では、飛行艇の魔道具は前世にあった4枚のプロペラを持つドローンをイメージしている。

 ルーバンさんにⅩ(エックス)型に4つのプロペラを装備し、時計回りと反時計回りに回転するプロペラの構造と、前進する時は前進する方向のプロペラの回転を遅くし、左右に移動する場合は左右のプロペラの回転速度を変えるなどのドローンの基本的な構造を教えて、先ずは一人乗用の小型の試作機を作ることにした。


 ドワーフの職人達にも依頼して、4つのプロペラは扇風機の魔道具を応用した3枚羽の右回転用プロペラと左回転用プロペラを4つ作ってもらった。

 プロペラの構造は飛行に強く影響するため、専属となる職人を組織して、少しずつ改良を加えていくことにした。


 プロペラの動力となる回転の魔道具は魔道扇風機に使っている風の魔法のイメージを教えてもらい俺がミスリル板に魔法陣を転写した。

 4つの動力となる回転する魔道具の操作は、中央下部にある操縦席で操作出来るようにルーバンさんが調整し、離陸、着陸、前進、後退、右旋回、左旋回、回転に対応できるように4つの動力の出力調整も操縦席での操作が可能とする。

 燃料となる魔石は主電源と予備電源を2つセット出来るようにし、魔石の交換も操縦席でできるようにした。


俺は週に1、2回ルーバンさんの工房に顔を出す程度だが、空を飛ぶ魔道具の開発に情熱を燃やすルーバンさんらドワーフの職人達は寝る間も惜しんでドローン型の飛行艇試作機の製作に取り組み僅か20日間で試作機を完成させた。


 今日は試作機の試験飛行をドワーフの町ヨークで行う日。

 俺は朝早くにシルビアとエオリア、チビを乗せてヨークの町へと飛んだ。

 ヨークの広場に到着すると、縦横5メートル程の巨大ドローンが設置されている。


 ルーバンさんと開発に携わったドワーフ達はみな目の下にクマを作って、ほとんど寝ていないような表情をしているが、目だけがギラギラしている。

 ルーバンさん曰く、紐で機体を結んでの試験飛行は何度も行ったようで、今でも200キロ程度の重量を運べるそうだ。


 試験飛行は万が一の墜落を考えて、変身して空を飛べる俺がすることになった。

 ヨークの広場には珍しい乗り物を見ようとたくさんのドワーフ達が集まっている。

 飛行艇はⅩ型の骨組みに4つの3枚羽のプロペラを備えている。

 機体は極力軽く作られており、4つのプロペラの下に4本の脚が付いており、中央部分にアミ状に四角く肩の高さまで囲われた操縦席と後ろに同乗者席が付いている。

 2人が乗れる造りとなっている。

 見た目は、まさに巨大なドローンといった感じだ。


 操縦席にはパイロットシートとシートの前に1本のスティックが付いており、スティックに着いたレバーを握るとプロペラが動き出す。

 スティックのレバーを深く握ると回転数が上がり、浅く握ると回転数が下がる。

 また、スティックを前方に傾けると前進、後方に傾けると後退、左右に傾けると左右に旋回する。

 スティックを左右に回すとその場で回した方向に旋回する。


 スティック1本で全ての操作が可能な簡単構造となっていて、ルーバンさんらドワーフの高い技術力が伺える。

 シルビアとエオリアも乗ってみたいようだが、万が一の墜落に備えて最初は俺が一人で試乗する。


 シートに座ると操縦席は革張りシートで座り心地が良いし、イスの高さも調節できる。

 多くの住民が注目するなか、俺はシートに深く座って、スティックのレバーをゆっくりと握った。


 レバーを握ると4つのプロペラがゆっくりと回転しだした。

 徐々にレバーを強く握るとプロペラの回転数が速くなり、機体はゆっくりと上昇していった。

 車のエンジンの様な大きな音は無く、操縦席にはプロペラが風を切る音のみが聞こえる。


 機体が空に浮かぶと広場に集まった住民からの大きな歓声が聞こえてきた。

 俺は、高さ10メートル程の高度になるまでその場で上昇し、上昇後にスティックを左右に回転させて、静止したままでの左右への旋回を試してみた。

 機体はスムーズにその場で左右に旋回する。


 次はスティックを前後に傾けて前進、後退を試した。

 これもスムーズに動き、今度は前進しながら右旋回、左旋回、後退しながら右旋回、左旋回を試した。

どの操作も思ったとおりにスムーズに動く。

 さすがドワーフの技術力。


 俺は高度をさらに上げて、スティックを徐々に前方に倒して最高速度を試してみた。

 機体は徐々にスピードを上げて、高度を保ったまま右旋回、左旋回など、さまざまな飛行実験を楽しんだ。

 前世のテレビで人が乗れるドローンで時速100kmを超えたというニュースを見たことがあるが、この飛行艇の体感速度は時速100kmを超えているように感じた。


 飛行実験は何の問題もなく、1時間ほど空を飛行して広場にゆっくりと着陸した。

 飛行艇は離着陸に滑走路などが不要なため、狭い場所でも降りられる。

 この世界で初となる飛行艇の性能を目のあたりにした住民から再び大きな歓声が聞こえてきた。


 俺は飛行艇から降りて、何の問題もなく飛行艇の試験飛行が成功したことをルーバンさんら技術者に伝えて、彼らを褒めたたえた。

 ルーバンさんらは、この飛行実験の成功を嬉し涙を流して喜びあった。


 一つ付け加えるならば、操縦席周りを俺がワイバーンに変身して飛ぶときにする風の魔法で包み込めば、上空の寒さや風の影響を受けずに飛べるので、後で魔道具にして取り付ける事を提案することにした。


 ルーバンさんら技術者は、さっそく着陸した機体の点検と魔石の魔力残量を記録した。

 点検が終わると、シルビアとエオリアがルーバンさんに飛行艇を操縦したいとお願いした。

 ルーバンさんらが2人の飛行を許可したので、俺は2人に操縦方法を教えた。

 操縦方法はとても簡単なので、2人は説明を聞いてすぐに飛行艇に乗り込んだ。

 最初はシルビアが操縦するようだ。


 俺は2人が心配なので、火竜に変身して飛行艇に付いて飛ぶことにした。

 シルビアがスティックのレバーを握り、飛行艇はゆっくりと上空に浮かんだ。

 上空でしばらく旋回などの基本操作を試してから、更に高度を上げて2人は約1時間ずつ飛行艇の操縦を楽しんだ。


 操縦方法を少し聞いただけで、自由に空の旅を楽しめる飛行艇の試験飛行は大成功と言えるだろう。

 2人が試験飛行を終えて着陸するとルーバンさんら技術者は、機体の点検と魔石の魔力残量を記録して、技術者同士で改善点などの打ち合わせを始めた。


 俺も先ほど、改善点として考えた操縦席を風の魔道具で包み込む案を提案して、さっそく操縦席に合わせた大きさの風の魔法陣をミスリル板に転写して、魔法のイメージをルーバンさんに伝えた。


 ドワーフの技術者たちは、休むことなく目の下にクマを付けたまま飛行艇を工房に運んで、この後も細かい改善点を話し合い作業を続けるようである。

 居眠り運転が怖いので、飛行艇はシルビアが操縦してルーバンさんの工房に運んだ。


 工房では、試験飛行の祝いの火酒を飲みながら試作機の改善点と大型飛行艇の製作が話し合われた。

 俺も安全対策として、万が一の墜落に備えた安全装置の魔道具案を提案した。


 俺の安全装置の案は、落下したときに墜落の衝撃を吸収する魔道具で、ボタンを押すと光魔法のプロテクトの様な光の膜が体を包み込むイメージである。

 試しに光魔法で、ルーバンさんの体を光の丸い膜で包み込むイメージの魔法を放った。


 光の膜に包まれたルーバンさんを隣のドワーフの技術者が棍棒で殴ってみると、棍棒は光の膜にはじかれた。


「これはならいけそうだ」


 ルーバンさんは、そう言うとすぐに3階に上がって、窓から道路に飛び降りた。

 酔った勢いもあったのか、だれも止める間もなくルーバンさんは地面に叩きつけられたが、地面に落ちると光の膜でボールのように道路を跳ねて、無傷で戻ってきた。


「さっそく魔道具にしよう」

 ルーバンさんの人体実験で、落下の安全装置の魔道具が作られることになり、俺は光魔法のプロテクトの魔法陣をミスリル板に複数転写した。


 こんな感じで、この世界で飛行艇の運用が本格的に開始されることとなった。


頑張って書いてます。

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