第30話 魔王様の話
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食事の後は、3人でブライトンの町を観光して回った。
魔王様のレストランで食事を楽しんだばかりなのでお腹は空いていないが、飲食店関係はチェスターの町と同様に日本で食べた様々な店が並んでいる。
その中でも、豚骨ラーメン店を見つけた俺は、懐かしい豚骨ラーメンがどうしても食べたくなった。
チェスターの町にもラーメン店はあったのだが、味噌ラーメンと醤油ラーメンのお店で、豚骨ラーメン店は無かった。
シルビアとエオリアはお腹がいっぱいだそうなので、チビを2人に預けて一人で豚骨ラーメン店に入った。
小さな店舗であるが、店内にはカウンター席とお座敷席があり、お昼を過ぎた時間帯であるが、多くの客が並んでいた。
しばらく待って、カウンター席に着いた。
カウンター席の前に張られたメニューは、ラーメン、大盛ラーメン、餃子、おにぎり、ごはん、替玉のみ。
俺は、転生前に近くの豚骨ラーメン店でよく頼んでいたラーメンの固めん、餃子、おにぎり2個を店主に注文した。
ラーメンスープは、ニンニクが効いており、長浜ラーメンの様な細麺ではなく、中太面でスープと絡んで旨い。
チャーシューも柔らかすぎず、ちょうどいい固さで俺が通っていた福岡の田舎町のラーメン店の味にそっくりだった。
今後ブライトンの町に来るときは、必ず立ち寄ろうと思った。
豚骨ラーメンを堪能した俺は、シルビア達と合流して、喫茶店、武器店、魔道具店、冒険者ギルドなどを見てまわりブライトンの町の観光を楽しんだ。
広い町なので観光を楽しんでいると、あっという間に魔王様との約束の時間となった。
俺たちは遅れないようにレストランスマイリーへと急いだ。
店の入口には、都合により夕方の営業はお休みしますと案内が貼ってあった。
ドアの前に立つと、魔王カオリさんが俺たちを迎えてくれた。
魔王様の隣には、金髪のエルフの男性が立っている。
「ヒデユキ様、こちらは私の旦那様でブライトンの町長をしているヘンリーです」
「ヒデユキ様、ブライトンの町へようこそおいでくださいました」
「今後とも、カオリ共々よろしくお願いします」
「ヘンリー様、こちらこそよろしくお願いします」
「隣にいるのは、私と一緒に冒険者をしておりますブローニュの町のシルビアとエオリア、それと我が家のペットのチビです」
「シルビアさん、エオリアさん、チビちゃん、ようこそいらっしゃいました」
「料理も出来ていますので、堅苦しいあいさつはこの辺にして、テーブルへご案内します」
「それと、お互いに名前で呼び合いましょう」
ヘンリーさんが、俺たちを席に案内してくれた。
テーブルには、大皿に盛られた様々な洋食を中心とした料理が並べられている。
俺たちは、大皿からそれぞれ好きな料理を取り分けながら、しばらくワインを飲みながらヘンリー夫妻と夕食を楽しんだ。
魔王であるカオリさんからは色々な話を聞けた。
カオリさんは、前世では俺と同じ福岡県でホテルのシェフをしていたそうだが、令和4年の冬の朝方に突然、こちらの世界に転生したそうだ。
今の容姿は前世の姿とは異なっているようで、昼間にあった時はコック帽で分からなかったが、黒髪の上には2本の白い角が生えている。
話から転生した時期は、俺と同じ令和4年の冬の朝のようであるが、カオリさんがこの世界に転生してきたのは、今から約200年も昔だそうで、同じ時期に転生しても、別の時代に着いたようである。
ブライトンの町の近くに転生したカオリさんは、俺と同じように精霊に愛されているようで、当時のブライトンの町の人たちは、変わった容姿をしたカオリさんを快く受け入れてくれたそうだ。
カオリさんは精霊魔法全般と水、風、光の魔法が使えるようで、特殊な能力として、植物の改良を行なえる精霊魔法が使えるそうだ。
シェフとして料理の腕を活かすため、精霊魔法でこの世界には無かった米や調味料の捕れる植物を育てて、こちらの世界の人々に育て方や加工の仕方を教えたそうだ。
この世界で食べられる日本で食べた様々な美味しい料理は、ほぼ全てをカオリさんがこの世界の人々に教えた。
以前は多くの町を回って、新しい農作物の普及活動にも力を入れた。
美味しい様々な料理と新たな農作物の普及は、この世界の人々に衝撃を与え、いつの日からかカオリさんは、この世界の人々から魔王様と崇められて、コインのモデルにもなってしまったようだ。
カオリさん本人は、コインの肖像画は辞退したかったそうだが、多くの町の町長から是非にと頼まれて、仕方なく承諾したそうだ。
コインに描かれている竜と対峙したカオリさんの姿のことを聞いてみた。
100年ほど前にイーシャの町に繋がる門の近くの森で大きな黒龍が暴れて、森の魔物達が一斉に逃げ出した事件があったそうだ。
森で暴れまわった黒龍は、その後、ブライトンの町に向かって飛んで来たそうで、たまたま町の城壁の外で農作物の普及活動をしていたカオリさんが、黒龍に遭遇して、得意な雷撃の魔法で黒龍を撃退したそうで、その時のデザインが採用されたそうだ。
カオリさんは、自分を受け入れてくれたこちらの世界の人々に感謝し、美味しい料理と農作物の普及活動を行う為に冒険者登録をした。
普及活動の為に、この世界の色々な町には行ったことはあるが、あまり戦闘は好きではなく、冒険者としての活動も普及活動の期間ぐらいしか行っていないそうだ。
夫のヘンリーさんとは、冒険者活動をしていた時に一緒にパーティーを組んでいたそうで、料理と農作物の普及活動を終えてから、ブライトンの町に戻り結婚したそうである。
カオリさんの魔素と魔力量はこの世界の人々よりもだいぶ多いようで、冒険者として旅をする時の護身用に風と水の魔法でイメージした雷撃魔法を覚えたそうだ。
俺もカオリさんから雷撃魔法のイメージを教えてもらい、今後練習することにした。
それと以前、イーシャの町で聞いたダンジョン内に探索の拠点となる町の建設を始めたところ、魔物が押し寄せて建設中の町を破壊し、魔物はその後、ダンジョンから飛び出してイーシャの町を壊滅させたという事件であるが、これは黒龍が暴れて、魔物が暴走したこの事件によるものであるようだ。
俺からは、人族のヒデユキの姿が真の姿ではなく、タールの魔人の姿が本当の姿であること。
特殊能力として、取り込んだ魔物の姿に変身できること。
1日以内であれば、体に多くの物を取り込んで持ち運べることを話した。
俺の転生した場所は、イーシャの門の外にある魔の森と呼ばれている場所で、こちらの世界程ではないが魔素の濃い場所であったこと。
門の外の世界は、魔の森以外は魔素がとても薄く、食べ物の味がしないこと。
外の世界では、精霊の姿は見られなかったことを話した。
カオリさんもイーシャの門の外には行った事が無いそうだ。
ヘンリーさんからは、この北の領域の地図を見せてもらった。
ここブライトンの町から平原を北東方向に進むと森がある。
森を抜けた先にある山岳地帯の麓には、千人程のラミア族が住む町スラウがあり、山岳地帯の中腹には北の領域のドワーフの町モーカムがある。
山岳地帯の先は海に繋がっている。
また、ブライトンの町から平原を北に進むとドワーフの住む山岳地帯から流れる大きな河川があり、橋を渡った河川の対岸には3千人程のリザードマンが住む町エクセターがある。
エクセターから更に北に進むと森があり、森を抜けた平原の先に港町カールトンがある。
カールトンの人口は2万人程で、獣人族が多く住むが、ドワーフ、リザードマン、ラミア族、エルフも住んでいるそうだ。
カールトンは海に面した港町であり、豊かな海産物が豊富に取れる町である。
カオリさんは、新鮮な魚介類を使った料理が作りたいそうだが、カールトンの町まではユニコーンに乗っても、10日以上かかるそうで運搬は難しいようだ。
俺が変身して運搬すれば可能なのだが、これ以上輸送の業務を増やすと、冒険する時間が無くなってしまう。
今後も、ずっと冒険者活動を続けて行けば、海を越えて新たな大陸探しなんかもやってみたいし、その際は、輸送業務がしばらく出来なくなる事も考えられる。
俺は、ヨークの魔道具職人のルーバンさんと相談して、空を飛んで輸送ができる魔道飛行艇なんかの開発もやってみたいと思った。
再び、北の領域の地図の話に戻るが、ブライトンの町を北西に進むと平原の先の森に出る。
ドワーフの住む山岳地帯から流れる大きな河川沿いに森を北西に進むと、森の中に大きな湖があり、湖の畔に北の領域のエルフの町トーキがあるそうだ。
湖からは西の海に向けて、更に川が流れているそうで川沿いに森を抜けると海に出るそうだ。
カオリさんからは、転生者としての過去の出来事を色々と教えてもらった。
ヘンリーさんからは、北の領域の町についての貴重な情報と北の領域の地図をもらった。
外も暗くなり、この日はヘンリー夫妻のご厚意でご自宅に泊めてもらうことになった。
ヘンリー夫妻のご自宅は、店の2階と3階がそのまま住居スペースとなっており、俺たちは2階の客間に案内された。
本来ならば、今日はブローニュの町に帰還する予定であったが、今日はヘンリー夫妻のご厚意に甘えて、明日ブローニュの町に帰宅することにした。
夜は、シルビア、エオリアと今後の冒険について話をした。
2人とも、このまま北の領域の各町を徒歩で冒険したいそうなので、俺たちはしばらく、このまま2泊3日の日程で北の領域の冒険を続けることにした。
今度、ソフィア達を魔王様の住むブライトンの町に連れてくる約束も果たさなければならないし、途中で思いついた魔道飛行艇の製作にも取り掛かりたい。
俺は、たくさんあるやりたいことを考えながら眠りについた。
頑張って書いてます。
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