第3話 人間のまちに行こう
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南側の森の外には人族の集落がある。
ゴブリンの姿で人間にあったら、襲われそうだが、とりあえず人間の集落をみてみたい。
俺は南に向かった。
しばらく南に進むと、争うような音が聞こえた。
そっと近づき覗くと、人間とゴブリンが争っていた。
ゴブリンはよく見る小さなのが3体と、一回り大きなのが2体。
大きな2体はこん棒を持っている。
人間の方は、若い男が3人。
2人が剣と盾を持つ戦士風、1人は弓矢を手にし、3人とも皮の防具を着ていかにも冒険者といった感じがする。
冒険者は囲まれて応戦している。
弓を持った冒険者の放った矢が大きなゴブリンの肩に刺さったが、ゴブリンは矢を無造作に引き抜き、戦士に向かってこん棒を振りかざした。
大きいゴブリン2体が2人の戦士と戦い、弓の冒険者は小さなゴブリン1体を仕留めたが、今は小さなゴブリン2体に囲まれて、短剣で応戦中。
戦闘はしばらく続いたが、2人の戦士は徐々にゴブリンに圧倒され倒れた。
弓の冒険者は小さなゴブリンに善戦していたが、その後大きなゴブリンに倒された。
俺は、このままこの場を去ろうとも考えたが、大きなゴブリン1体に向けて思いっきり石を投げた。
石は頭を打ち抜き倒し、俺は素早くもう1体のゴブリンに近づくと、相手はこん棒を振り上げた。
構わず勢い良く飛び蹴りすると、ゴブリンは後ろに大きく吹き飛んだ。
着地と同時にゴブリンに駆け寄り、顔に渾身の拳の一撃。
大きなゴブリンを倒した。
残った2体の小さいゴブリンは、ポカンと立ちつくす。
俺はそのまま2体のゴブリンを殴り殺した。
冒険者の3人は既に息絶えていた。
その場には、大きなゴブリン2体、小さなゴブリン3体と人間3人の死体が横たわる。
俺は先ずゴブリン5体を取り込んだ。
その後、人間の死体を調べると、3人は首に身分証の様なものを下げていた。それぞれ文字が書かれているが読めない。
名前かな?
それぞれ携帯食料、水袋、塗り薬、ナイフ、銀貨や銅貨を持っていた。
他には皮袋に森で採取した薬草?いつも俺が食べている謎の草、キノコなどが入っていた。
とりあえず、3人の死体から装備と衣服を脱がして、ゴブリンと同様に取り込んだ。
取りこんだが、ゴブリンの方が美味しく感じる。
人間の死体からは、魔石の存在は感じられない。
やはり、魔物の方が魔素が多いから美味しく感じるのかな?
これだけ取りこんでも、お腹は膨れない。まさに四次元ポケット!
持っていた携帯食料も食べてみたが、まったく美味しく感じない。
それから、取りこんだ片方の戦士を思い浮かべると、俺の姿は人間の戦士になった。
大きなゴブリンを意識すると大きなゴブリンにも変身できた。
再び人間の戦士に変身し、服と防具を着る。
人間に変身してから再度、携帯食料を食べたが、やはり美味しく感じなかった。
変身しても味覚は魔物のままなのかな?
変身した戦士の身分証を首に下げて、剣1本、短剣1本、水袋を腰につるし、革袋に他2人の身分証と携帯食料、銀貨、銅貨、ナイフ、塗り薬を入れた。
他にも薬草?謎の草、キノコの入った採取袋に、先ほど取りこんだ大小2体のゴブリンの魔石を吐き出して入れた。
大きいゴブリンの魔石は、小さいゴブリンの魔石より一回り大きかった。
その場を離れる前に弓矢を背中にしょって、盾を手に持った。
結構な荷物となった。
人間の姿になった俺は、南に向かった。
途中、小さな川を見つけた。
水面に写る俺の姿は、人間の戦士。
しばらく、顔の表情の確認などをして川辺で過ごした。
川辺で弓矢の練習をしてみたが、狙ったところには当たらない。
弓の冒険者に変身して再度試すと矢は狙った所に突き刺さった。
しばらく、練習して弓矢の感覚に慣れてから再び戦士に変身し、弓を引くと次々に的に当たる。
この体は、変身した者の特技を習得でき、次に引き継げるのか?
新たな便利機能を発見したが、記憶は引き継げない様だ。
投石が得意だったのは、変身したゴブリンに投石が得意な個体がいたのかな?
ゴブリンとの会話で魔法が使えるゴブリンがいることを思い出し、大きなゴブリンに変身して試してみたが、魔法は使えなかった。
ちなみに人間の冒険者3人に変身して、火と光の魔法を試してみたが、やっぱり魔法は発動しなかった。
残念!
その日の夜は、装備を脱いでタールの魔物に変身して草むらで朝を迎えた。
次の日は人間の戦士に変身して、剣の稽古をした。
前世では、小学生時代に剣道クラブに通い、高校の授業では剣道を選択した程度。
冒険者の戦士の腕前は分からないが、所詮大きなゴブリンにやられる程度なので、期待はできそうにないので、早めに稽古は切り上げる。
気配を感じて何気に川辺を見ると、そこには水色の丸い生き物がいた。
これはスライム?
何となく、自分(黒いタール)がスライムと思っていたが、そこにはアニメ「転生したら…だった件」に出てくる様な可愛らしいスライムがいた。
近づくと飛び掛かってきたので、剣で切り裂く。
あっさり倒して取りこんだ。
意識すると、小さな魔石を感じた。
ちなみに魔石は小ゴブリンより小さい水色。
俺って、スライムじゃなかったんだ。
それからは川沿いを南に歩いた。
途中で見つけたキノコと謎の草は、半分食べて、半分を弁当がわりに袋に入れた。
しばらく歩くと森を抜けて平原にでた。
村があるなら、川沿いを進むのが正解と思い川沿いを進むと村が見えた。
覚悟を決めて村の入り口に付くと、門番が
「よう仲間はどうした」
言葉は通じる。
「森で、ゴブリンにヤラレました」
「そうか、仲間は残念だったな。入りな」
村に入ると、入り口近くに剣と盾の看板のある大きな建物を発見。
お決まりの冒険者ギルド!
中に入ると、受付には恰幅の良いおばちゃん。
若い女の子じゃないんか~い。
「カイルさん素材採取どうでした?」
俺の名はカイル。
「素材は採れたのですが、2人は亡くなりました」
袋から2人の身分証を出して、おばちゃんに渡した。
「ハッシュさんとケビンさん…残念です」
「魔の森で何があったのですか?」
「素材採取中にゴブリンに囲まれて、2人はやられました」
「魔の森の奥まで行ったの?」
「小川を越えた辺りです」
「小川の先は、ゴブリンやコボルトが出るから危険だと言ったでしょ」
「2人のことは残念ですが、冒険者は自己責任。素材があれば買い取ります」
袋から彼らが採取した薬草10束、謎の草2束、キノコを1個を取り出した。
おばちゃんは査定して、薬草が大銅貨5枚、魔力草(謎の草)が銀貨1枚、魔素キノコが銀貨2枚になった。
帰り際、おばちゃんは
「あなた達は同郷だったでしょ。2人のことはあなたから家族に伝えてくださいね」
と言われた。
カイルがこの村の出身じゃないのは、記憶がないので助かる。
カイルの見た目は、10代後半、前世でいう白人系の顔立ちで赤髪。
身長は180センチぐらい、村ですれ違う成人男性を見ると、この世界の成人男性の平均より少し背が高い程度の一般的な体形である。
3人の冒険者の中では、見た目が一番カッコよかったのでカイルを選んだ。
冒険者ギルドを出た俺は宿屋を探した。
途中、女の子に銅貨を1枚渡して、この村の名前と宿屋の場所を聞いた。
村の名前はホーシャム村、宿は冒険者ギルドの近くに1軒と村の中心に1軒あったが、俺は中心にある宿を選んだ。
宿の受付は、15歳ぐらいの女性だった。
名前はノアちゃん。
値段を聞くと、1泊大銅貨5枚、食事は朝昼で銅貨15枚だった。
俺は、3日分の宿泊をお願いし、銀貨を2枚出すと銅貨5枚のお釣りをもらった。
銅貨10枚で大銅貨1枚、大銅貨10枚で銀貨1枚か。
ちなみに食事は部屋で取ることをお願いした。
部屋は2階、ビジネスホテル風の部屋にベッドが一つ。
風呂は無く、銅貨5枚で湯あみができる。
トイレは共同。
窓はあるがガラスは無い。窓から洗濯物が干せる。
そういえば、この体になってから排泄物は出てない。
トイレは必要ないようだが、不審に思われないように朝と夜にトイレに籠ろう。
荷物を部屋において、村を散策し、雑貨屋で着替えの下着3セットと普段着を2セット買った。
銀貨7枚と結構な値段で、カイル達の持っていた手持ちのお金も寂しくなった。
宿の部屋での夕食は、大盛シチューにパンだったが、魔素が無いので美味しく感じない。
取りこめば一瞬で食べれるけど、人間の姿を意識して、弁当がてらに持ち帰った魔力草と魔素キノコを刻んでまぶし、スプーンを使って口から食べた。
美味しく頂けました。
夜はこっちの世界に来て、初めてベッドで寝れる。
寝る前に横になって、色々考えた。
この先、この宿を拠点に、人間社会で生活するには、最低でも週に銀貨5枚は必要。
食事用に、魔力草と魔素キノコ、魔石は必要だな。
ゆっくり眠れて朝を迎えた。
初投稿作品です。
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