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第29話 北の町ブライトン

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 北の領域での冒険を始めてから4週目となった。

 基本、週に2泊3日の日程で山岳地帯を突き進み3日目の夕方、ブローニュの町までワイバーンに変身して帰宅する。

 翌週は、探索が終了した地点までワイバーンで飛んで、探索終了地点から冒険をスタートする。


 山岳地帯での魔物討伐は、チビ、シルビア、エオリアの2人と1匹で対処している。

 チビはこの間に闇魔法の毒の魔法を覚えて、毒魔法で魔物を仕留められるようになったし、シルビアとエオリアの冒険者としての力量も益々上達している。

 俺は、魔物の素材の取り込み、疲労の回復、夜間の野営地づくりのサポートに徹している。


 魔物を討伐しながら、山脈地帯を延べ11日歩きようやく草原が見えてきた。

 ここからは草原を更に北に進んでいく、俺たちは山際まで下山して、昼食を食べてから北を目指した。

 草原と言っても、生えている草木は俺の背丈よりも高く伸びて視界は悪い。

 下山中に見下ろした草原の北方向には町の姿は見えなかったので、ここからは草木を払いながらひたすら北に向けて進むことになる。


 山岳地帯ではシルビアが先頭に立って山道を進んだが、ここからは俺の便利機能で、前方の草木を体に取り込んで障害物を排除しながら進むことにした。

 俺の前方と左右2mぐらいの範囲の草木を取り込みながら北に進む。

 途中に魔素キノコや魔力草の気配があれば回収していく。


 草木の背丈が高く、視界は悪いが魔物の気配は感知できるので問題ない。

 しばらく進むと地中から1体の魔物の気配を感じた。

 かなり大きいようだ。


「シルビア、エオリア、チビ、地中から大きな魔物が近づいてくる」


 2人と1匹に伝えて、俺は戦いやすいように周りの草木を広く取り込み視界を確保した。

 魔物は地中を掘り進めながらゆっくりと近づいてくる。

 モグラの様な魔物であろうか?


 5メートル程前方の地面が隆起して、魔物が姿を現した。

 魔物は巨大なミミズの様な姿で、頭部には大きな口と鋭い歯が口一面に生えている。

 グロテスクな姿であり、体は地表から7メートル程飛び出ている。


 魔物は大きな口を開いたまま上から俺たちを飲み込もうと攻撃してくる。

 俺たちは魔物の一撃を後方に飛んでかわした。

 攻撃をかわされた魔物は地表に飛び出した。

 魔物は10メートル程の巨体を持ち、頭を高く上げて次の攻撃態勢を取る。

 動きは遅く、グロテスクな姿をした魔物である。


 チビが毒魔法を放ったが、魔物の体が大きすぎて、魔法を受けた個所は黒く変色しているが、大きなダメージは負っていないようだ。

 シルビアが火炎魔法を浴びせると、魔物の皮膚が焼けて肉の焦げる匂いがする。

 エオリアは魔力を流した槍で魔物を切り刻む。

 上部からの魔物の攻撃をかわしながら、チビの毒魔法、シルビアの火炎魔法、エオリアの槍の攻撃を続けると魔物は地中に逃れようと動き出した。

 俺は、土魔法で魔物の周辺の土を固めて魔物の逃げ場をふさいだ。

 最後はシルビアとエオリアの魔力剣と槍の攻撃で魔物に止めを刺した。


 巨大な魔物も2人と1匹の連携で仕留めることができた。

 終盤、剣と槍で魔物を切り刻んだシルビアとエオリアは、グロテスクなワームの魔物の粘々な体液をたくさん浴びて哀れな姿になっていた。

 俺は、暖かなシャワーの水魔法を放って、2人の汚れを落としていった。

 粘々体液をきれいに洗い流して、温風魔法で2人の装備と服を乾かした。


 俺は残った魔物を取り込んで、魔石のみを取り出した。

 魔石は茶色く人の頭ほどの大きさがあった。

 流石にこの魔物の肉は、例え美味しくても食べる気にはなれなかったので、魔石以外はそのまま俺が取り込むことにした。


 俺たちは魔物を討伐しながら夕方まで草原を北に進み見晴らしの良い高台を今晩の野営地にすることにした。

 高台から北を見渡すと、遠くに町の城壁のような壁が見えた。


「ヒデユキ、あそこに見えるの町の城壁じゃない?」

「ようやく、町が見えてきたよ」


 今回の北への冒険はここまで徒歩で進んできたため、町の発見の喜びもひとしおである。

 今日はもうすぐ夜になるので、ここで野営し発見した町へは明日向かうことにした。


 翌日、朝食を食べた俺たちは町を目指して北に進んだ。

 12日目にしてようやく町の姿を目にしたこともあり、俺たちの足取りは軽い。

 お昼前には、町の外に広がる小麦畑を通る街道に到着して、小麦畑や果樹園を眺めながら城門へと歩いた。

 町の住人は獣人族が多いようで、ドワーフ、リザードマン、ラミア族、エルフの姿も見える。

 東エリア最大の町チェスターと同様にこの町も5種族が住んでいるようだ。


 大きな城門に着くとシルビアが獣人族の衛兵にブローニュの町から来たことを告げて、ボルトンのギルドの冒険者証を提示した。

 エオリアと俺も同じく冒険者証を提示した。

 ちなみにボルトンでの冒険者活動によって、俺たちの冒険者ランクはCになっている。

 衛兵は人族の俺の姿に少しだけ怪訝な顔をしたが、問題なく町には入れた。

 衛兵に町の名前を聞くと、ブライトンと答えた。

 確か以前聞いたエスターシャ長老の話では、魔王様はブライトンの町に住んでいると聞いたことがある。


 城門を抜けると最初に大きな石畳の広場が広がり、多数の露店が並んでいる。

 お昼時ということもあり、露店からは美味しそうな匂いが漂い、沢山の住民が行き交う。

 やはりこの町にも、獣人族、リザードマン、ドワーフ、エルフ、ラミア族の5種族がいるようだが、人族の姿は見えない。


 お昼時でちょうどお腹も空いた俺たちは、美味しい匂いのする露店で先ずは腹ごしらえをすることにした。

 広場を囲む家々は石造りの建物が多く、道行く人々の数はチェスターの町よりも多いかもしれない。

 美味しそうな匂いがする焼き鳥の屋台で、取り合えず焼き鳥を20本注文し、獣人族の店主に魔王様にはどうすれば会えるかを聞いてみた。


「魔王様なら町の大通りでスマイリーと言う名のレストランを開いているから店に行けば会えるよ」


「魔王様がレストランで働いているんですか?」


「魔王様はスマイリーのシェフだよ」


「魔王様って、この銀貨のモデルになっている魔王様ですよね?」


「そうだよ。行ってみな」


 この世界の金貨、銀貨、大銅貨、銅貨には魔王様の姿が描かれている。

 俺たちは、魔王様がお城のような所に住んでいると思っていたので、店主に再度確認してみたが、コインに描かれている魔王様はレストランのシェフだそうだ。


 シルビアとエオリアも魔王様がレストランのシェフをしていることは、知らなかったそうで、俺たちは手渡された焼き鳥を広場のテーブルで頂き、食べ足りない分は魔王様のレストランで食べることにした。


 広場から町の中心部へと延びる大通りをスマイリーというレストランを探しながら歩いていくと、スマイリーと書かれたレストランを見つけた。

 魔王様のレストランというので、大きな店を想像していたが、特別豪華な造りでもなく周りの店舗と同じような大きさだった。

 窓から店内を覗くと、満席で順番待ちの人もいる。

 かなり繁盛しているようだ。


 エオリアが店内に入り、ペットの持ち込みが可能かどうか確認すると、小型の幻獣ならば個室はOKだったので個室を予約した。

 30分ほど順番を待って個室に案内された。

 店内は日本のファミリーレストランの様な造りで、大通り側の窓には外を見渡せる大きなガラス窓があり、こちらの世界の飲食店の造りとは少し異なる。


 メニュー表を見ると、パスタやピザ、オムライス、グラタン、ハンバーグなどの洋食メニューの他にも、コースメニューもあり、リーズナブルな価格である。

 3人と1匹で話して、俺たちは一番高いシェフ自慢のコースメニューを4人分頼むことにした。

 ちなみにカーバンクルのチビも、俺たちと共に生活するようになってから、同じ料理を食べるようになった。

 あまり濃い味の料理は、幻獣のチビの体には良くないと思うので、なるべく薄味の魚や肉を食べさせてはいるが、本人は濃い味も美味しいので問題ないと主張している。

 今日はせっかく魔王様のレストランに来たので、同じコースメニューを頼むことにした。


 しばらく待つと、トマトと生ハムを使った前菜、コンソメスープ、川魚と川エビの蒸し焼きをソースで彩った魚料理、リンゴのシャーベット、分厚いワイルドボア肉のステーキ、イチゴのショートケーキ、食後のコーヒーと、程よいタイミングで見た目にも美しく美味しいフランス料理のフルコースメニューが運ばれてきた。

 俺たちは、次々と運ばれてくる美味しいコースメニューを存分に堪能した。


 食べた料理の感想を3人と1匹で話しながら、食後のコーヒーを飲んでいると、個室にシェフである魔王様が、お礼のあいさつに来てくれた。

 魔王様の姿は、今まで小さなコインに描かれたドラゴンと対峙する小さな立ち姿しか見たことがなかったが、お礼のあいさつに来た魔王様は女性だった。


 俺は固定概念で魔王様は男性であろうと勝手に思い込んでいたが、シェフの白いコックコートに身を包んだ魔王様は、色白で大きなコック帽から見えるもみあげ部分の髪の色は黒、しかも、こちらの世界ではとても珍しい東洋人的な顔立ちをしていた。


「コース料理はお口に合いましたか?」

 魔王様が料理の感想を聞いてきた。


「まるでフランス料理のコースメニューのようで、彩も味もとても素晴らしく堪能できました」


「フランス料理…、お客様は人族の様ですがお名前を伺ってもよろしいいでしょうか?」


「私の名前はヒデユキと申します」

「魔王様、私は2年ほど前に、この世界とは別の世界、日本という国から突然転生して、こちらの世界に参りました」


「まあ、驚きました」

「ヒデユキ様、私も日本からの転生者です」

「日本に住んでいた時の名前はカオリと申します」

「この世界に来てから、長い年月が過ぎましたが、転生者に合ったのはあなたが初めてです」

「色々と話したいことがあるのですが、今はまだ仕事も残っていますので、もしご都合がよろしければ、夕方、皆さんでこの店に来てはもらえませんか?」

「夕食を食べながら、色々とお話を伺いたいです」


 俺は、シルビア、エオリアと相談して、夕方魔王様の店に来ることにした。

 俺にとっても、初めての同じ転生者との話ができるせっかくの機会なので楽しみである。

 夕方までの時間は皆でブライトンの町を観光して回ることにした。


頑張って書いてます。

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