第23話 変化する日常
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季節は7月、ブローニュからヨーク、ボルトン、チェスターと町を行き来する内に町の生活も色々と変化していった。
ブローニュでは、麦、米、大豆の他、多種多様な野菜や果物、ハーブ、紅茶の葉や香辛料も育てられている。
エルフの農業は精霊魔法を多用し、農作物の味は最高に美味しい。
今までは、人口千人程のブローニュのエルフの食料を賄えれば何も問題なかったが、俺は毎週のように、ヨークやボルトン、チェスターなどの町を行き来する。
身体に取り込めば大量の物資を短時間で運ぶことが出来るため、ヨークやボルトン、チェスターの町からは、美味しいブローニュの野菜や果物、ワインや火酒をぜひ買い取らせてほしいとの要望がどんどん増えていった。
最初は、他の町に住むエルフが、同郷のシルビアとエオリアに美味しい故郷の食材を久しぶりに食べたいとお願いし、旅のついでに少量運搬する程度であったが、あまりにもおいしいエルフの食材の噂は、瞬く間に町中に広まり、今では毎週各町に大量の食材を運搬することになった。
シルビアとエオリアは、他の町からの要望をエスターシャ長老と相談し、エルフの農家に農作物やワインや火酒などの特産品を増産するように依頼した。
エルフの農家も自分たちが育てた農作物やワインや火酒などの特産品が、他の町で高く評価されていることは喜ばしいことであり、当然その販売により収入も増えていった。
ブローニュでも、他の町で売られている魔道具や鍛冶製品、甘いお菓子やカレーライスなどの食文化も広がり、今では各町にブローニュの農産物や特産品と、ブローニュの町で必要な品を集める専用窓口が出来たほどだ。
この取引については、シルビアとエオリアがとても頑張ってくれた。
ブローニュでは、畑や果樹園が徐々に広がり、酒蔵も増設された。
この現象はヨークでも同じで、ボビー町長と秘書のテオさんが中心となって、ヨークの魔道具、鍛冶製品、エールや岩塩など、他の町の専用窓口を通じて販売し、ヨークで必要な魔物の素材や農産物、火酒などの輸入を始めた。
俺は西の海での海産物の販売時には、ブローニュとヨークの専用窓口に立ち寄って、物資を運搬し、ボルトンでの冒険者活動の行きと帰りにも町に1カ所ずつある専用窓口に立ち寄って、物資を運搬するようになった。
俺からすれば、それぞれの町への行きと帰りに町に1カ所ある専用窓口に寄って、町毎にまとめられた荷物を出し入れするだけなので、それほど大変なことではない。
4つの町の経済循環が急激に広がっていった。
今ではこの4つの町には火竜の姿で広場に降りても誰も驚かなくなった。
俺たちの1週間のサイクルも固定されてきた。
1日目:西の海で1泊し、海産物を採取。
2日目:海産物をブローニュとヨークで販売しヨークの温泉宿で1泊
3日目:チェスターに1泊、もしくはボルトンで1泊。
4日目:ボルトンで冒険し、ボルトンで1泊。
5日目:ボルトンで冒険し、ボルトンで1泊。
6日目:チェスター、ヨークに立ち寄り、ブローニュに帰還。
7日目:休日
最近は、こんな感じの1週間を過ごしている。
もちろん、ブローニュから西の海、またブローニュからボルトンまでは4時間飛べば着くので、ヨークとチェスターには立ち寄るだけで、冒険者活動に比重を置くことも、日帰りでそれぞれの町に寄り、ブローニュでの生活を重視することもできる。
少し話はさかのぼるが、東エリア最大の町チェスターは、城塞都市ボルトンを支えるとても大きな町で、一番多く住んでいる種族は獣人族であるが、エルフやドワーフ、リザードマン、ラミア族など、たくさんの種族が住んでいる。
最近ではボルトンでの冒険者活動に向かう途中とブローニュへの帰還時にも立ち寄っている。
町の近くには大きな河川が流れており、町の周辺部の広大な草原地帯には、大きな田んぼや畑、果樹園が広がっている。
チェスターの町では、ボルトンでも食べたカレーライスやから揚げをはじめ、天ぷら、パスタ、ピザ、カツどん、豚丼、親子丼、ラーメン、うどん、焼き鳥、たこ焼き、焼きそば、ケーキ、お菓子、ソフトクリーム等々、懐かしい日本の食べ物を楽しむことができる。
この町に来ると、美味しい食事が楽しめると同時に、俺の他にも日本からの転生者が絶対にいると実感する。
もしも、日本人の転生者がいるのならば、是非会ってみたい。
シルビアとエオリアと美味しい食べ物を食べ歩き、その都度、店の主人にこの料理の発案者はどんな人なのかを聞いて回っているが、店の主人からは昔からある郷土料理との答えしか返ってこない。
絶対にどこかに日本人の転生者がいるはずだ。
同じ転生者でも俺は何も生み出していない。
日本の美味しい食を広めた転生者の存在は、この世界に何も広められない自分の不甲斐無さとつい比較してしまう。
城塞都市ボルトンに近い町とあり、チェスターの町には冒険者活動で亡くなった人も多く、残された子供たちを預かる孤児院がある。
俺たちは、日々、海産物の販売や冒険者活動を続けているが、海産物の売り上げや冒険者活動での素材採取などで得られたお金の使い道はほとんどない。
お金をためて買いたい物も無いし、お金は循環してこそ生かされる物だと思い俺は、シルビアとエオリアと相談して、不要なお金は孤児院に寄付することにした。
この世界の人々は、優しい人が多い。
国王も貴族もいないし、偉そうな役人もいない。
「魔王様はいるそうですが…」
俺の知るこっちの町の町長達も、日本で報道されていた金の亡者のような政治家、パワハラ議員なんかとは違って、本当に町のために仕事をしている人ばかりだ。
チェスターの町を訪問して、この町に孤児院があると聞いた俺たちは訪ねてみた。
この町の孤児院は、異世界ファンタジーあるあるの町の権力者や裏社会のボスから酷い扱いを受けているような雰囲気はなく、多くの人々に支えられながら子供たちを育てるアットホームな孤児院の様だった。
孤児院長のハンナさんは年配の獣人族の女性、ハンナさんを補佐する獣人族の若いシスターはこの孤児院出身のリリーさん。
子どもたちは満足のいく食事も与えられずに頬がこけているような事はまったくなく、皆で協力し合っていきいきとした笑顔で生活している。
孤児院には30名の子どもたちが暮らしており、大きな子どもが小さな子の面倒をよくみている。
町の人々も、ボルトンの冒険者も親のいない子供たちを皆で支えている。
俺は、稼いだお金を寄付しようと院長のハンナに進言したが、お金は不要でむしろ子供たちとの触れ合いを大切にしてくださいと言われた。
不要と言われたが、取り合えずお金は受け取ってもらえた。
小さな子供たちは、カーバンクルのかわいいチビに興味津々で、チビは追い回されてたくさんの子どもから撫でまわされている。
俺とシルビア、エオリアは孤児院で冒険者を目指している子どもたちに剣や弓の稽古をつける。
ボルトンでワイルドボアなど、食用の獲物が狩れると、帰りに孤児院に寄って肉のお裾分けをするようになった。
ボルトンで冒険者活動を続け、俺たちの冒険者ラングはEランクとなった。
ボルトンの森に入るときは、ソフィア達ミレニアムと一緒に行動する。
かつて大けがで、6年間冒険者活動を休止していたミレニアムのメンバーも、復帰後の魔物討伐でだいぶ勘も戻ってきたそうだ。
ある日、冒険から戻り、居酒屋でいつもの反省会を兼ねた飲み会をしていると、何だかソフィア、ルビー、ベラの3人は俺に何か言いたげな様子でモジモジしている。
「3人ともどうかしたの?」
と聞いてみると
「実はヒデユキに頼みがあるのだが?」
「すぐにでは無くていいので、今度私たちを西の海に連れて行ってくれないだろうか?」
「私たち海を見たことがないし、泳いでもみたいし、シルビアとエオリアから聞いた海産物も食べてみたいんだ!」
何か重大な話なのかと思いきや、かわいらしい3人からのお願いであった。
真夏の海は泳ぐには最適だし、5人の水着の美女を砂浜で眺めるのも悪くない。
「それじゃあ週末、西の海への素材採取の前に迎えに来ます」
海に潜るのなら、水中でも呼吸ができる水の魔道具も必要なので、帰りにヨークの魔道具職人のルーバンさんの店で購入し、週末に迎えに来ると約束した。
3人はとても喜んでくれた。
週末はソフィア達を迎えに行くため、俺一人でブローニュからボルトンへと飛んだ。
今回の西の海へは、ソフィアも含めて5人を乗せて飛ぶことになる。
いつものワイバーンでの移動ではなく、大型の火竜に変身して飛ぶ。
飛竜は大きく重たいので、ワイバーンと比べると飛行速度が遅くなる。
俺はこの弱点を克服するため、ボルトンまでの飛行の間、火竜に変身して新しい飛行魔法を練習した。
風を体にまとわせる魔法は同じであるが、もう一つ飛行速度を上げるため、飛行機のジェットエンジンのように風の魔法を後方に噴射し推進力上げるイメージの魔法を発動した。
魔力は消費するが、飛行速度は飛躍的に上がり、ボルトンへはワイバーンで飛ぶのと同じ時間で到着した。
予定よりだいぶ早く到着したので、そのままボルトンの森に降りて、付近の魔物を討伐し取り込んで魔素を補充した。
ついでに、海への飛行分の魔素補充用に魔石と魔力草、魔素キノコなどを確保した。
これから、ボルトンでソフィア達を乗せて、先ずはブローニュで1泊する。
ソフィアも久々のブローニュへの里帰りとなるそうだ。
頑張って書いてます。
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