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第2話 変身

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 湖から離れて森に入った。

 森に入ると、日の光が届かない薄暗い空間。

 ノロノロと進んでいくと、草むらが揺れて、緑色をした魔物が2体現れた。


 逃げようとしたが、この体は動きが遅い。

 ファンタジー世界でいう2体のゴブリンは俺の姿を見るなり、お互いの顔を見合わせて、飛びかかってきた。


 必死になり、飛びかかってきたゴブリンに噛みついた。

 噛みつくと、呆気なくゴブリンの上半身は、引きちぎられて俺の体の中に吸い込まれた。

 それを見て、もう一体のゴブリンは、きびきを返して森の中へと逃げていった。


 何とかゴブリンを撃退できたが、噛みついたゴブリンの上半身は俺が食ったという解釈になるのだろうか?


 美味しくいただいて、空腹感は満たされた。

 残された下半身も、口を開けて取り込んだ。


 自分の体と同じくらいの大きさのゴブリンを1体食べたにしては、お腹は膨れてない。

 意識するとゴブリンの死体が俺の体の中にあることを感じ、ゴブリンの体の心臓部分に力の込められた小さな石のような物を感じた。

 最初に上半身だけを飲み込んだゴブリンらしき魔物と2体分の力ある小さな石のような物を感じた俺は、意識して石だけを口から吐き出そうとする。


 黒くて小さな石が2つ口から出てきた。

 これはモンスターあるあるの魔石?


 ファンタジーあるあるの魔石、町に持っていけば売れるのではと一瞬考えたが、手も足もないこの姿では、運ぶことも出来ない。


 運べたとしても人に見つかれば、確実に駆除される。

 どうにもできないので再び飲み込んだ。

 飲み込むと、おいしく感じた。


 しばらく森を散策しているとお日様が沈み、森は暗闇に包まれた。


 人として生活していた時は、極度の方向音痴であったが、この体になると何故か、昼間に訪れた湖の位置が分かる。


 真っ暗な森の中は不気味な姿となった俺でも、やっぱり不気味だし、暗闇の中で強いモンスターなんかに襲われるのも怖い。

 今日は湖の見える森の際で、明るくなるまでひっそりと身を隠すことにした。


 草むらから夜空を見上げると、空には大小2つの月が浮かんでいた。

 色は大きい月が赤で小さいのが緑。

 月と呼んで良いかは分からないが、ここはやっぱり地球じゃないと実感した。


 夜の間は、音をたてないよう気を付けながらあたりを見渡した。

 月明かりの中、何か淡い光を発する気配を森の所々から感じた。

 いつの間にか、うとうとし朝を迎えた。


 淡い光は明るくなっても感じられる。

 近づくと、それは、キノコだったり、少し変わった草だったり、魔石っぽい石だったりした。


 お腹が空いたので、気になる気配に近づいて口に入れた。

 キノコなんかは毒キノコかもと考えたが、気にせず口にすると旨い。

 体の中を意識すると、明るくなってから食べた「キノコ」なんかは、体の中にあると感じたが、昨日食べたゴブリンと2個の魔石は感じなかった。


 消化したのかな?


 気になる気配がする魔石やキノコ、草だったりを口に入れるとおいしく感じるということは


 気になる気配がする物は、この体の栄養になるのか?

 何気に昨日食べたゴブリンを思い浮かべた。

 すると何ということでしょう?


 突然視界が高くなり、緑の手と足が体から生えてきた。


 急いで湖に向かい自分の姿を確認すると…

 水面には、昨日食べたゴブリンが映る。


 元のタールの魔物を思い浮かべると、視界が低くなって元の姿にもどった。


 生活するにはこの体より、断然ゴブリンの姿の方が自由度が高いので、俺は再びゴブリンを意識し変身した。


 ちなみにその姿は、一糸まとわぬ雄の姿で、恥ずかしいので、大事な所をツタで隠した。

 そのあと、人間であった時の自分の姿を思い浮かべたが、変身できなかった。

 この体は食べた生物に変身できるのか?


 タールのモンスターは、ゴブリンをひと噛みで倒したが、ゴブリンの姿になったら弱くなるのでは?


 こんな心配もあり、試しに右手に草をぐるぐると巻き森の大木に拳を打ち込んでみた。

 右手は手首までが大木にめり込んだ。


 凄い威力!


 この後、人間だった時は持ち上げられない大きさの石を持ち上げたが、難なく持ち上がり、大木に投げると幹が砕けた。

 これなら何とかなる。


 それからはこぶし大の石を集めて、大木に向けて投石の練習をした。

 人間だった頃は、届かないであろう15メートル程離れた場所からの投石は面白いように当たり、当った箇所は大きく陥没する。


 とりあえず、こぶし大の石を10個ほど集めて、蔦で作った袋に入れて持ち運び、手ごろな枝を槍のようにして、モンスターに備えた。

 何となく戦える体制を整えた後、森に入り、気になる気配を探して食べてまわった。


 いくら食べても、お腹いっぱいにはならない。

 いくらでも食べられるようだし、すぐ空腹になる。

 体の燃費は悪いようだ。


 食べ歩きをしていて気づいたが、どうやらこの体、つかんで口に入れなくても取り込むイメージをすると、触らなくても食べられる。


 まさにファンタジー!


 しばらくの間、キノコや謎の草、魔石を食べると、今度は動きのある気配を2つ前方に感じた。

 そっと近づいて覗いてみると、2体のゴブリンがこっちに向かって歩いていた。

 俺は袋から石を取り出し、近づいてくるゴブリンの頭部に狙いを定めて投げると、石は見事にゴブリンの頭部を打ち抜いた。


 その後、残ったゴブリンに駆け寄り、手に持った槍を胸に突き刺した。

 一瞬にして、2体のゴブリンを仕留めた。


 あとは、ゴブリンの死体を体に取り込むイメージを浮かべると、2体の死体は取り込まれた。ちなみに満腹感は無く、お腹も膨らんでない。


 俺の体は四次元ポケットか?

 と一人ツッコミを入れる。


 この体は、すぐ空腹になる。

 その日から俺は、湖の周辺でひたすら拾いぐいと、遭遇したゴブリンの討伐を繰り返した。

 夜はタールの体に変身して、草むらに身を潜めた。


 ある日、キノコっぽい気配に近づいていくと、ゴブリンが俺より先にキノコにかぶりついていた。

 さすがに何体もゴブリンを狩ってきた俺は、今更ゴブリンなど怖くもない。


 そこで今日は、ゴブリンとコミュニケーションをとろうと、キノコを貪るゴブリンに後ろから近づき話しかけた。


「おい、そこのゴブリン」

 ビクッ!となって振り向いたゴブリンは、俺を見ると固まって失禁した。


「おい、俺の言葉が分かるか」


 しばらく固まっていたゴブリンは悲鳴を上げて、膝をついて頭を下げた。

「お前怖い、言うこと聞く」


 どうやら、会話は可能なようだ。

 

 たどたどしく話すゴブリンの言葉は聞き取りにくいが、この世界に来て初めてのコミュニケーション。

 機会を逃したくない俺は、時間をかけて色々な質問をした。


 分かったことは、

・ゴブリンは俺が活動する湖の東側の森の洞窟に住処があること。

・ゴブリンに名前は無いこと。

・森の中で、キノコや謎の草、小動物、他の魔物などを食べて生活していること。

・魔素を多く含んだ物や魔物を食べると強くなること。

・強くなったゴブリンは、進化すること。

・ゴブリンの中には、魔法を使える者もいること。

・洞窟の住処にはゴブリンの王がいること。

・湖の西側の森の中にはコボルトの集落があり、ゴブリンと争っていること。

・湖の北側の森の深い場所にはオークやオーガ、オオカミ、大蛇、大蜘蛛など強い魔物が住んでいること。

・湖の南側の森の外には人族の集落があること。

・最近、この付近のゴブリンが多数狩られている事が話題となっており、討伐隊が組まれたこと。


 かなり有益な情報を得られた。


 すぐに強いゴブリンの討伐対がやってくるかも!


 最後にゴブリンの姿をした俺を見て、何故怖がったのか聞く。

 姿はゴブリンでも俺の体からは強い魔素が漏れ出ており、恐怖を感じたようだ。

 見た目はゴブリンでも、敵と分かるのは非常に不味い。


 意識して魔素を体の内に封じるように念じると。

 ゴブリンは「仲間になった」と話した。

 貴重な情報を聞いたゴブリンとはここで別れた。


 意識して魔素の漏れを封じると、お腹がすぐに減ることはなくなった。

 どうやら燃費の悪さは、魔素の漏れが原因だったようだ。


初投稿作品です。

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