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第17話 幻獣カーバンクルのチビ

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 冬の間も週に1回は西の海で海産物を採取し、ブローニュとヨークの町に届けた。


 鍛冶師のルイさんにお願いした武器や防具、魔道具職人ルーバンさんの魔法防御を付与したお揃いのネックレスも完成した。


 火竜の素材を使った防具、武器、お揃いの短剣とネックレスは、どれも素晴らしい出来で、俺たちは雪の積もる森にも頻繁に狩りに向かった。


 魔物と遭遇すると、魔力アップを目指して、シルビアとエオリアが競うように討伐した。


 俺は主に使える素材の運搬と魔物の魔素の取り込みを担当した。

 俺の魔物を取り込む能力があれば魔力が上がりやすいのだが、この能力は魔法ではどうにもならない様だ。


 狩りの実践練習で、2人ともミスリルの剣に魔力を流す感覚と魔法を組み合わせた戦いにも慣れてきた。


 今ではほとんどの魔物は、俺は見ているだけで、2人だけで戦えるようになった。


 今日も3人お揃いの装備に身を包み狩りの支度をした。

 ワイバーンで飛び立ち、町から少し離れた場所に降りて狩りを開始する。


 俺は精霊にお願いして、2人を温かい風で包んでもらう。

 進行方向に積もった深い雪は、俺が取り込んで横に排出する。

 まるで人間除雪車のようで雪の中でも問題なく狩りができる。


 雪に埋まった魔素キノコや魔力草は俺の気配探知で採取し、山鳥やウサギなどは2人が弓で仕留めた。


 今まで冬の間は、狩りが出来ずに塩漬け肉などの保存食で雪解けを待つことが主流であったブローニュの生活も、俺の便利機能で冬でも新鮮な肉と海産物が町の食卓で楽しめるようになったと皆に喜ばれた。


 昼になったので付近の雪を除雪して、ヨークで手に入れた携帯用魔道コンロで山鳥とウサギの肉、魔素キノコを塩コショウで焼き、持って来たみそ汁を温めていただいた。


 昼食を終えて、俺は道具を取り込んだ。

 鍋や器も取り込んで汚れを排除するイメージをするときれいになる。

 我ながらとても便利な体だと思う。


 昼からの狩りを始めると魔物の気配を感じた。

 魔物3体が狩りをしているようだ。


 シルビアとエオリアに伝えて魔物の気配のする方角に向かった。


 前方にはシルバーウルフ3体がいた。

 俺たちを発見すると魔物が向かってきた。


 剣に魔力を流したシルビアとエオリアは、3体のシルバーウルフを瞬殺した。

 2人はシルバーウルフ程度の魔物は、もはや魔法を使わずに倒せるようになっている。


 俺は魔物を取り込んだ。

 シルバーウルフは魔石と毛皮が素材として売れる。


 シルバーウルフは狩りをしていたようで、前方にはかみ殺された幻獣カーバンクルの亡骸があった。


 カーバンクルは魔物ではなく、幻獣と呼ばれ気配も魔物とは異なる。

 魔物と違って、見たら必ず襲ってくるようなこともない。


 カーバンクルは精霊の加護を受けた動物で、この個体は色が黒く、闇の精霊の加護を受けているようだ。

 姿も猫の様であるが、額にはルビーのような魔石がある。


 近くに気配を感じ覗いてみると、黒くて小さなカーバンクルの子供がうずくまっていた。

 寒さと恐怖で震えている。


 俺はすぐに抱きかかえて、温かい風の精霊魔法で包み込んだ。

 前世でも犬や猫を飼っていた俺は、小さなカーバンクルの子供がたまらなくかわいい。

 カーバンクルは、母親の亡骸を見て、ミャアミャアと泣いている。


 俺は泣くカーバンクルを抱いて、子どもに見えないように母親の亡骸を取り込んだ。


 俺はシルビアとエオリアにカーバンクルの子供を飼いたいと相談した。


「とってもかわいいから、いいと思うよ」

「私にも抱っこさせて」


 カーバンクルの子供はすぐに2人に取り上げられた。

 ブローニュの町には、羊のような動物がいてミルクも手に入る。

 俺はすぐに今日は帰宅することを告げて、ワイバーンに変身した。


 2人とカーバンクルの子供を乗せてブローニュに帰った。


 帰宅後はシルビアにミルクを買ってきてもらい、精霊魔法で部屋を暖かくして、カーバンクルの子供にミルクを与えた。

 黒くて小さなカーバンクルの子供はお腹がすいていたのか、すぐにミルクを飲み始めた。


 少し安心して、3人でこの子の名前を決めることにした。

 ちなみに2人には悪いが、俺の中でこの子の名前は既に決まっている。

 俺は前世で、犬や猫を飼っていたが、名前はすべて「チビ」と決めていた。


「シルビア、エオリア、この子の名前はチビにしたいんだけど?」

「かわいいから、チビでいいよ」


 2人とも賛成してくれた。


「今日からお前の名前はチビだよ」


 ミルクを飲んだ後、チビは2人に抱かれてかわいがられた。

 しばらくすると眠ってしまったので、クッションの上にそっと置いた。


 前世ではトイレ用に猫砂があった。

 俺は土魔法で猫砂用の箱を作り、中に砂を詰めた。


 チビはぐっすり寝ている。

 しばらく3人でチビを囲んで眺めたり、撫でたりとまったりとした時間を過ごした。


「ペットのいる生活って、家族が増えたみたいでいいな~」

「私たちの子供みたいだね」


 自然とそんな会話も膨らむ。


「魚も食べるかな?」

「まだ小さいから無理じゃない」

「すり身にしたら食べれるんじゃない」

「夕食に少し用意しよう」


 3人で夕食の準備をして、チビ用にアジのすり身とミルクも用意した。

 チビが起きてモジモジしだしたら、猫砂トイレに連れて行った。


 夕食にミルクとアジのすり身を出すと、すり身も食べてくれた。


 こんな感じで、ゆっくりとした夜を過ごしたが問題が発生した。

 今日は誰の部屋でチビを寝かすのか?


 シルビアとエオリアは互いに譲らない。

 俺が一番チビと寝たいんだが、この話に俺が入る余地はなかった。

 2人はまったく妥協する風じゃない。


 多分、このままでは2人が一緒にチビと寝ると言い出すと思った俺は、自分の部屋に向かった。


 服を脱いで取り込んだカーバンクルの母親に変身した。

 俺の姿を見たチビは飛ぶように駆けてきた。

 チビは俺にすり寄ってくる。


「ヒデユキ、あなた卑怯よ」

 シルビアとエオリアから罵声が浴びせられる。


 カーバンクルに変身した俺には、何となくチビの言葉が分かる。

 まだ、小さいのでうまく表現は出来ないが、俺の姿に安心と喜びが伝わってくる。


 本当の母親が死んでしまったことは、チビが少し大きくなったら伝えようと考え、チビへの愛情を伝えた。


 シルビアとエオリアからは、しばらくの間、非難の声が聞こえていたが、カーバンクルの親の姿になった俺の姿も十分に可愛らしく見えるので、その内2匹とも2人に撫でまわされることになった。


 最初の夜は、チビを俺のベッドに連れて行き大きなベッドの布団の上で眠りについた。


 翌朝は、チビが起きたらカーバンクルの姿のまま猫砂トイレに連れて行き、トイレはここでするように教えた。


 しばらくチビを部屋でなめまわし、目の前でヒデユキに変身する姿を見せた。


 チビは驚いていたが、ヒデユキの姿になっても何となくチビとは意思疎通が出来るようになったようなので、小さな子供に俺が変身できることを伝えた。


 カーバンクルの親の姿とヒデユキの姿を交互に変身してみせると、何となく小さなチビも理解したようだ。


 その日からは、俺たち3人にチビを加えて、西の海や狩りに出かけるようになった。


 チビ用にお腹の部分に入れられる皮の袋を作ってもらい、雪深い狩りの際は俺がチビの世話をするようになった。


 猫は風呂が嫌いだったが、チビはお風呂も大丈夫なようで、毎日は良くないがたまに風呂に入ってくるようにもなった。


 西の海の採取の際は、風の精霊にお願いして、チビの入る皮袋周辺を空気の膜で覆ってもらうようにイメージを伝えた。

 空気の循環もお願いして、海の中にチビを連れて入ることも出来た。


 こんな感じで、3人と1匹の生活がはじまり、3月末の雪解けの時期になると、チビも森での狩りには歩いて付いてこられるようになった。


 流石に西の海は、袋の中で空気の膜に包んで入るが、猫のように魚は大好き。

 アジ、タイ、ヒラメなどは焼いても食べるが、新鮮な刺身にすると喜んで食べる。


 チビもだいぶ大きくなったので、最近では俺との意思疎通もスムーズに伝わるようになった。


 チビは闇の精霊と相性がいいみたいなので、もう少し大きくなったら、闇の精霊魔法も教えてみようと思う。


 ちなみに我が家のチビはとてもかわいい女の子である。


初投稿作品です。

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