第13話 西の海に行こう
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ブローニュでの生活も10日が過ぎた。
最近では、シルビアの妹のエオリアも遊びに来るようになって、狩りや魔法の練習など、3人で活動することが多くなった。
ちなみにエオリアは光の精霊の寵愛を多く受けており肌は白い。
魔法は光魔法と水魔法、精霊魔法も光と水が得意だそう。
姉妹とあって、二人とも肌の色は違うが、髪は銀髪でよく似ている。
しかもとても美しい。
今日は3人で西の海に塩の採取をかねて遊びに行くことになった。
ちなみに俺の体に荷物を取り込んで運べる機能だが、保存を意識すれば1日以内なら溶けたりせずに取り出せる事が分かった。
1日を過ぎると消化して取り出せなくなるようだ。
俺の体は熱さ寒さを感じないが、季節は11月となり肌寒い。
俺は問題ないが、シルビア達が海で泳ぐのは厳しそうだ。
今日は塩採取と、海産物のバーベキューを楽しもうと、たくさんの袋と鉄板などの調理器具と調味料を準備した。
ブローニュにはしょう油と味噌もある。
海に行けば、サザエのつぼ焼きや海鮮鍋も堪能できるのだ。
広場でワイバーンに変身し、ユニコーン用の鞍を付けて、シルビアとエオリアを背に乗せて慎重に飛び立った。
上空では2人を包み込むように風をまとった。
徐々にスピードを上げて、2人に寒くないか尋ねたが、風の魔法で包み込んでいるので、寒くもないし強風にさらされる事も無いようなので安心して、最高速度で西に向かった。
全速力で飛び、昼前には西の海に到着した。
冒険者などが居ないことを確認して、砂浜に舞い降りた。
シルビアとエオリアは初めての飛行に興奮して、こんなに早く飛べて、初めて海を見れたことをとても喜んでくれた。
2人は砂浜と波打ち際を散策するそうなので、俺は昼飯のバーベキュー用に海に潜って海産物採取をすることにした。
手つかずの海は、ウニやアワビ、サザエ、ハマグリなど取り放題。
俺はたくさんの食材を取り込んで、タイっぽい魚とアジっぽい魚、エビやカニを採取して砂浜に戻った。
砂浜では、小石をたくさん集めて火魔法で加熱した上に鉄板を乗せて、サザエやアワビ、ハマグリ、エビを焼いた。
サザエにはしょう油を垂らして、アワビにはバターを少し、エビには塩をふった。
シルビアもエオリアも海産物のバーベキューは初めてなので、俺はエビの皮をむいて、食べ方を教えた。
サザエも木の串で身を取り出して口に運んだ。
エビはぷりぷりだし、サザエはしょう油の香りと味で予想以上に旨い。
アワビもコリコリした触感がたまらないし、ハマグリもしょう油を垂らすとスープまでもが最高の味。
シルビアたちは、最初はサザエやアワビの姿に戸惑っていたが、食べるとその美味しさに夢中で食べまくっている。
俺は、隣にも小石を集めて加熱し、カニの塩湯でとタイの塩焼きを準備して、アジは開いて、塩水に漬けてから天日干しにした。
タイの塩焼きもカニも当然最高においしく頂いて、3人でバーベキューを心ゆくまで堪能した。
「今日はここで泊まろうよ」
とエオリアの提案もあり、2人はさっそくテントの準備を始めた。
テントも念のため、俺が取り込んで持ってきていた。
夜は、シルビア達が味噌を使った海鮮鍋を作ってくれるというのでお願いした。
俺は、その間、塩づくりを始めた。
この前のように大量に海水を取り込んで、塩のみを残して水分と不純物を輩出すると、きれいな塩が採れる。
塩がたまったら、持ってきた大量の袋に詰めていった。
沢山作って、帰ったら町のみんなに分けてあげようと、日が暮れるまでの時間、塩づくりに励んだ。
夜は2人が作ってくれた海鮮鍋を堪能した。
カニやエビ、タイやアワビにハマグリなど、たくさんの魚貝と味噌と塩の味付けは、これまた最高に美味しかった。
俺はきれいに洗ったウニの身を大量に板に載せて、2人に食べさせた。
舌の上で独特な美味しさを味わえるウニに、2人とも見た目と違ってとても美味しいと喜んでくれた。
食事を堪能していると、森から複数の魔物の気配を感じた。
しばらくすると、20体ほどのオークの集団が近づいてきた。
シルビアとエオリアは剣と弓を手に戦いの準備を始めた。
食事中の戦闘を避けたい俺は、試しに魔素を全開放して、オークの集団を威圧してみた。
魔素を開放した俺の姿をみたオークたちは、その場に立ち止まったので、俺は死にたくなければ、森に帰れと威圧を込めて告げた。
オークたちは急いで森へと帰っていった。
シルビアいわく、魔物は相手の強さを魔素の大きさで判断する。
俺の魔素がとてつもなく大きいので逃げたのだ。
魔物除けになるならば、今夜は魔素を開放したまま寝ることにしよう。
俺たちは、再び美味しい夕食を堪能した。
翌朝はお腹がすいて夜明け前に目が覚めた。
久しぶりに魔素を垂れ流したので、お腹がすくのが早い。
シルビアとエオリアはまだ眠っている。
二人を起こさないようにそっとミスリルの剣を装備して、森に向かった。
魔素の漏れを封じて、魔力草と魔素キノコを取り込んで回った。
途中、大きな魔物の気配を感じて、近づくと巨大なヴァイパーがいた。
闇魔法を発動し、動かなくなったところを瞬殺して取り込んだ。
大きな黒い魔石を鞄に入れた。
美味しく頂いて、空腹感も無くなったので、朝食用に魔素キノコを採取してテントに帰った。
食事はやっぱり火をとおして調理する方が断然美味しく感じる。
朝日が昇り、二人は目を覚ました。
2人に今日の予定について聞いてみると、朝食にはカニの塩ゆでとエビの塩焼き、サザエのつぼ焼きが食べたいそうだ。
朝食後は、町のみんなにも美味しい海産物を食べてもらいたいので、たくさん採取してお土産にしようと提案があった。
早い話が、俺に海でたくさん海産物を取ってこいということですね。
「俺も、カニの塩ゆでが食べたかったので何も問題ないです」
2人が食事の用意を始めたので、俺はさっそく海に潜った。
町の皆へのお土産なので、カニ、エビ、アワビ、ウニ、サザエ、鯛やアジ、ヒラメなどの魚も大量に獲った。
しばらくすると、魔物の気配が近づいてきた。
大きなサーペントだ。
10メートル以上ありそうだ。
この前、食べたら脂がのっていて旨かったし、光属性の魔石が得られたことを思い出し、さっそく闇魔法を放った。
その場で暴れはじめたので効いている。
俺はミスリルの剣に魔力を流して、頭を切り落とした。
直ぐに取り込んで、シルビアたちのもとへと戻った。
2人は調理の準備を終えて俺を待っていた。
直ぐにご所望のカニ、エビ、サザエを取り出して渡すとすぐに調理が始まった。
俺はサーペントから光の魔石を取り出して袋に入れて、サーペントの肉を食べる分だけ切り分けた。
エオリアにこれはサーペントの肉で、この前食べたらとっても美味しかったと伝えると、肉食女子は塩コショウをふって、すぐに鉄板に載せた。
調理したサーペントの肉は、牛肉のステーキのように肉厚でジューシー。
「この肉最高に美味しい」
「魚貝もいいけど、やっぱりバーベキューにお肉は欠かせないわね」
と姉妹が感想を述べた。
確かにサーペント肉は、臭みも無くステーキに最適だ。
「サーペントは大きいから、肉は沢山あるからね」
と言うと、2人ともおかわりを要求した。
俺も食べたかったので、追加で厚めに3枚の肉を切り分けた。
ついでに昨日一夜干しにしたアジの開きも、3枚焼いてみた。
これも、塩気がちょうどいい具合に脂と甘みを引き立てて美味でした。
3人で朝から最高の食事を堪能した。
お腹一杯になって、少し休憩を挟んでテントと調理器具を片付けて、昼前には帰宅の準備が整った。
夕方前には、町に戻ろうと俺はワイバーンに変身して2人を乗せて飛び立った。
風の魔法で2人を包み、全速力でブローニュへと帰った。
予定どおり、夕方前にはブローニュの広場に到着した。
俺は、変身を解いて木陰で服を着た。
シルビアはエスターシャさんのもとへ行き、町の皆にバーベキューの準備をお願いした。
広場には、集会所からテーブルが運ばれて、俺はカニ、エビ、アワビ、ウニ、サザエ、鯛やアジ、ヒラメなど獲った大量の魚介類をテーブルに並べた。
手際よく、バーベキューの準備を整えて、広場のあちこちでシルビア、エオリア指導のもと、海鮮バーベキュー大会が始まった。
俺も、肉屋のエドガーさんと巨大なサーペント肉の解体に取り掛かり、焼き肉用の肉の仕込みを手伝った。
海産物に慣れていないエルフ達は、カニやエビ、アワビ、サザエ、ウニの姿に多少戸惑っていたが、食べるとその美味しさに驚き、広場は笑顔と笑い声に包まれた。
大量に採取した塩は、エスターシャに預けて、町の皆で分ける様に頼んだ。
どこからか酒も用意され、海鮮とサーペント肉のバーベキュー大会は夜遅くまで賑やかに楽しまれた。
こんな感じで、ブローニュで生活を始めて12月を迎えた。
今では3人で週に1度、西の海に塩と海産物の採取に行くようにもなった。
エスターシャ長老の申し出により、俺たちが採取した塩と海産物は町で買い取られ、肉屋で販売されるようになり、ブローニュの各家庭では、海産物が普通に食べられるようになった。
今ではワカメも販売している。
例年12月中旬ぐらいから雪が降り初め、3月末まで森は雪に包まれるそうで、各家庭では、薪の準備や保存食の確保に忙しい。
家の方も最初はシルビアと俺の2人での生活だったが、今では当たり前のようにエオリアと3人での生活となった。
朝は、シルビアとエオリアがご飯とみそ汁にアジの一夜干しを作ってくれて、純和風の朝食を楽しんだ。
朝食後にはエスターシャさんが訪ねてきた。
何でも、東の山脈に住むドワーフの町に行って、町長に手紙を渡してほしいとの内容であった。
今までは、町の塩を確保するために定期的に徒歩で3日かかるドワーフの町に行き、山岳地帯で取れる岩塩を融通してもらっていたそうだが、最近では俺たちが毎週海に行って塩を採取してくるので、危険を冒して岩塩を運搬する必要がなくなり、その詫び状だそうで、エスターシャはドワーフとの今後の付き合いも大事にしたく、手紙と一緒にドワーフの好きなブローニュ産の火酒と農産物を届けてほしいそうだ。
俺が、エルフの里の客人としてブローニュに迎えられたことも伝えたいそうで、塩の件は俺にも関係があるので承諾した。
ダンジョン内のこっちの世界にもドワーフがいることは、シルビアから事前に聞いて知っていたが、こちらのドワーフは火と土の精霊に愛された種族で、ダンジョンの外に住むドワーフとは、姿は同じでも別の種族として扱われているらしい。
ドワーフの町の場所は、シルビアとエオリアが知っているので、道案内と俺の紹介をお願いした。
ワイバーンで飛んでいくが、魔物の姿のままドワーフの町に行くわけにもいかないので、手前で降りてタールの魔物の姿で精霊に乗って、町に入ることを事前に打ち合わせた。
ドワーフ達は酒好きだそうなので、お近づきの印にブローニュのお土産とは別におつまみ用にアジの一夜干しと最近加工したスルメイカを用意して飛び立った。
初投稿作品です。
週に1話を目標に投稿していきたいと思いますので、末永くの応援よろしくお願いします。
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