第11話 魔の領域に行ってみよう
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翌朝は朝食のステーキに塩をふって食べた。
アイラちゃんには、またしばらくダンジョンに遠征に行くことを伝えた。
朝食後は冒険者ギルドで採取した素材の買い取りをお願いして雑貨屋に向かった。
雑貨屋では、ダンジョン内での調理用に鍋と薄い鉄板、木皿などを購入した。
魔石を入れると、明かりが灯る魔道具のランプが金貨1枚であったので、試しに購入してみた。
ちなみに魔道具に入れる魔石の色は問わないそうだ。
今までよりも大きなリュックも購入して、鍋と鉄板、ランプを入れてダンジョンに向かった。
今回は、東にあるという魔の領域に入ろうと思う。
やっぱり、魔物の俺はダンジョン内の世界の方がしっくりくる。
近くで見てみないと何とも言えないが、魔の領域には非常に興味がある。
衛兵に大銅貨1枚を支払い、長期滞在を告げてダンジョンに入った。
東の森に進んで、しばらく歩き周りに冒険者がいないことを確認してから、裸になって荷物をリュックにまとめた。
ワイバーンに変身した俺は、風をまとって大空に羽ばたいた。
魔物や冒険者から狙撃されないように高度を高くとって東に進んだ。
高速で飛行し、森を抜けて山岳地帯を抜けると魔の領域と言われる森が見えてきた。上空から見ると特に違和感は感じない。
しばらく魔の領域の境界付近を旋回し、恐る恐る魔の領域の上空に侵入してみたが何ともない。
上空を奥まで進んでからいったん引き返してもみたが普通に出れる。
上空は大丈夫なのかな?
それとも俺が魔物だからかな?
考えても分からないので、高度を上げて上空を進んでいった。
今までのダンジョンの森と同じように、濃い魔素を感じる。
非常に心地いい。
しばらく上空から眺めると、大きな湖のある開けた土地と大きな町が見えてきた。
「エ~!町あるじゃん!」
「聞いてたのと違う~」
俺は町から少し離れた湖の手前に高度を下げて舞い降りた。
カイルに変身して、服と装備を着る。
地上に降りると魔素の濃さを実感する。
それと、漂う色のついた玉が異常に多い。
お腹もすいたので、漂う玉を食べながら湖に向かった。
湖に着くと、遠くに人影が見えた。
町の人であろう。
近づいていくと、相手もこちらに気づいた。
相手は女性の様だ。
俺は、脅かさないようにゆっくりと近づいた。
戦士風の女性は、近づく俺に向かって声を発した。
「人間がなぜここまで!」
俺は驚いた!
彼女は長い銀髪に浅黒い肌、しかも顔はこの世の女性とは思えないほど美しい、それにとがった耳をしていた。
「エルフ、ファンタジー世界の憧れ。あなたはエルフなのですか!」
俺は力いっぱいの声で問い返した。
エルフはしばらく考えて言った。
「お前は門の外の人間だろ?なぜ、ここまで来れたのだ」
俺も答えを考えたが、よくわからない。
誠意をもって応えよう。
「俺は人間ではない。多分魔物だ!」
「嘘をつくな!お前の姿は人間だ」
「これは変身した仮の姿だ。本当の姿は醜い」
「ならば本当の姿を見せろ」
「俺に攻撃しないと約束するなら見せよう」
「承知した。精霊に誓って攻撃はしない」
「おれは、魔素の垂れ流しを解除して、タールの魔物に戻った」
俺の姿を見たエルフは固まった。
しばらく固まってから問いかけた。
「膨大な魔素とその姿、闇の精霊の加護を受けているのか?」
「闇魔法は得意ですが、精霊のことは分かりません」
「お前には、精霊の姿が見えるか?」
「この漂う色のついた玉が精霊ならば見えます」
「長老達のもとへ案内する。そのまま付いてこい」
そう言うと、エルフは集落に向かって歩き出した。
衣服や装備、リュックなど気になるが、その場において、俺は一生懸命ついて行こうとする。
えっちらおっちら進むが、エルフとはどんどん差が広がっていく。
何気に精霊さん運んでくれないかな~
と考えたら、漂う精霊達が集まってきて運んでくれた。
ついでに荷物の運搬もお願いした。
お~、精霊の加護あるのかも?
今まで、たくさん食べてごめんなさい。
振り返って、俺を見たエルフは2度見していた。
町の周辺には畑や果樹園が広がり、町の中には自然と調和のとれた木造の家々が立ち並ぶ。
精霊達に運ばれて俺は町に入った。
町には、浅黒い肌をしたエルフも白い肌のエルフもおり、大人から、子どもまで多くの住人の姿が見える。
子どもも大人も、男も女も顔立ちはみな美しく整っている。
俺を見るエルフたちは、興味津々といった風に遠巻きに俺を見る。
エルフの案内は、広場の先にある大きな建物の前で止まった。
しばらく建物の前で待つように言われてエルフは中に入った。
しばらく待つと、先ほどのエルフが出てきて俺を中に案内した。
俺は精霊に運ばれたまま建物に入った。
集会所のような大広間を過ぎて、奥の部屋に入ると正面のイスには3人の年老いたエルフが座っていた。
真ん中には、女性エルフが座り、その両側に男性エルフが座っている。
男性エルフの一人は、浅黒い肌をしたエルフであった。
俺は、3人の長老の前で精霊達に降ろしてもらった。
荷物も部屋の隅に置いてもらった。
精霊達は、そのまま俺の上を漂っている。
女性エルフは
「私はエルフの町ブローニュの長老エスターシャです」
「精霊に愛されし者の訪問を歓迎します」
「エスターシャ様、精霊に愛されているかは分かりませんが、歓迎のお言葉ありがとうございます」
「私は冒険者をしております。ヒデユキと申します」
「この森の上空を飛んでいましたところ、集落を見つけたので立ち寄らせていただきました」
俺は、前世の名前を名乗った。
「普通は、各属性の精霊達が集まって、行動するようなことはありません。
「あなたが精霊に愛されているから、精霊達が願いを聞いてくれたのでしょう」
「飛んで来たとおっしゃいますと、先ほどのように精霊に乗って来られたのですか?」
「いえ、ワイバーンの姿に変身して飛んできました」
「魔物の姿に変身できるのですが?」
「はい、取り込んだ生き物の姿に変身できます」
「私も長く生きてきましたが、そのような能力は聞いたことがありません」
「北に住む魔王様でも、そのような能力は持っていないと思います」
「よろしければ、広場で見せていただけませんか?」
承諾し、俺は再び精霊達に運んでもらい長老らと広場に出た。
さらっと言ったが、この世界には魔王がいるんだ。
「エスターシャ様。それではワイバーンに変身します」
俺は、ワイバーンに変身した。
広場には、町のエルフ達も集まっており、皆驚愕の声をあげた。
変身能力を明かすのは不味いかなとも考えたが、心地よいこの地で自分を偽ることなく、受け入れてもらいたいと考えた。
しばらくして、俺はタールの魔物の姿にもどった。
しばし広場内に驚愕の声が聞こえるなかエスターシャが
「皆の者、こちらは精霊に愛されしお方、ヒデユキ様です」
「ブローニュは、ヒデユキ様の訪問を歓迎します」
「皆もそのように心得よ」
広場には、歓声と驚愕の声がこだまする。
俺は、エスターシャ様にお礼の言葉を述べて、この姿では動きにくいので、人間の冒険者に変身することの許可を得た。
さっきの建物の部屋の一角でカイルの姿に変身して服と装備を整えた。
俺はこの地で今日から、カイルを改め前世でのヒデユキを名乗ろうと決めた。
部屋で着替え終わった俺のもとに、長老たちの他、最初に出会ったエルフの女性がやってきた。
エスターシャ様は
「ヒデユキ様、この者の名はシルビアと申します」
「なれないブローニュでの生活で困らぬように、シルビアをお側に付けますので、お使いください」
「住まいも用意しましたので、遠慮なくお使いください」
「シルビアです。ヒデユキ様どうぞよろしくお願い致します」
と、シルビアが紹介された。
「エスターシャ様、何から何までありがとうございます」
「それとエスターシャ様もシルビアさんも、ヒデユキとお呼びください」
「それでは、私のこともエスターシャと呼んでください」
その後、シルビアに連れられて、木造の家に案内された。
中に入ると床は板張りで、リビング兼台所のある4名が座れるテーブルを備えた広間があり、奥に3部屋で内2部屋にベッドがあった。
室内には風呂とトイレも備えられていた。
一般的なエルフの家で、シルビアも一緒に住むと言われた。
寝室が2つあるので部屋は別々であるが、美しいエルフの女性と男性冒険者の生活って、周りのエルフから疎まれないのか心配したが、俺の本当の姿がタールの魔物なので、その辺は問題外なのだろうか?
人種も文化も違うので良くわかりません。
「シルビアと呼ばせてもらいますが、あなたは私と一緒に住むことに抵抗がないのか?」
「もし、長老の命令で仕方なく住むのであれば、私からエスターシャに話をする」
と大事なことなので聞いてみた。
「ヒデユキは、身にまとう魔素も凄いし、精霊に愛されている」
「私はエルフの戦士であり、冒険者のヒデユキと行動を共にすることもできるので何も問題ない」
少し答えがずれているようだが、シルビアは俺との生活は問題ないようだ。
とんとん拍子にブローニュでのシルビアさんとの生活が始まった。
初投稿作品です。
最初に書いたストックも底をつき、本業も3月の繁忙期を迎えて、今後は投稿間隔が遅くなると思います。
週に1話を目標に投稿していきたいと思いますので、末永くの応援よろしくお願い致します。
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