第1話 これは転生なのか?
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6時45分。
携帯電話が起床の鐘をならす。
俺は枕もとのスマホを手探り、停止をタップした。
世界が変わった。
そこは真っ暗な世界。
俺?どうなっちまったんだ。
これは夢なのか?
しばらくボーっとしても何も変わらない。
手をのばして、辺りを探ろうとしたが、手を伸ばす感覚がない。
足を動かそうとしても、足を動かす感覚がない。
これって、もしかして死後の世界?
体には痛みはない。お腹は空いてない。
眠くもない。音も聞こえない。
頭は不安で一杯だけど、不思議と心地いい。
もしかして、俺は生まれ変わって、植物にでもなったのか?
誰も答えてくれない。
しばらく考えたが何の変化もない。
とりあえず動いてみよう。
五感を集中してしばらくすると、何となく体の下に地面があるのが分かった。
横になってお腹に地面の圧力を感じるような感覚。
芋虫のように体を動かして移動を意識すると、お腹の下の地面がぼこぼこして、動いているように感じる。
しばらく、前進すると何かにあたったようで、進めなくなった。
壁にあたったような感じがした。
障害物をかわそうともがき、そのまま進んだ。
真っ暗な中、時間感覚は無いが、ひたすら障害物をかわしながら前進する。
もしかして芋虫になったのかな?
そんな事を考えながらしばらく前進すると何かあたった。
かわそうとするが、かわせる感じがせず、痛みを感じた。
これってもしかして、食べられているのでは?
痛みと不安と焦りで、命の危機を感じる。
このままではやばい!
俺は必死になって、逃げようとするが、手の感覚も足の感覚もない。
無我夢中で、相手に噛みつく様にあらがった。
しばらくすると、痛みが治まった。
ボンヤリと光が見える。
真っ暗な部屋から急に明るい所に出たように、だんだん周りの景色が見えてきた。
そこは薄暗い森の中、そして目の前には、食べられた様に腰から下だけが残った緑色の下半身が横たわっている。
俺がやったのか?
頭の中を整理しよう。
命の危険を感じて、噛みつこうと思った。
犯人は俺なのか?
もしかして俺って殺人犯?
気持ち悪いから、ここから離れよう。
体をくねくねして、その場から離れようと動いた。
今までと違って、目も見え、音も聞こえ、匂いもする。
森の中は薄暗く、時折、獣の叫び声のような声が聞こえてくる。
俺の移動速度は非常にゆっくりで、自分の姿を見ることはできないが、確実に手と足は無いことだけは分かった。
後ろを振り返っても、尻尾はないようだ。
もしかしてファンタジー小説に出てくるようなスライムにでもなったのかと考えながらひたすら前進すると、目の前が明るく開けて大きな湖があらわれた。
自分の姿が見れる。
ゆっくりと水面に近づいて恐る恐る自分の姿を見た。
お~!なんてこった。
絶望で、ため息が漏れる。
49歳中年、地方公務員だった俺が、何の前触れもなく突然転生したらこんな姿になるなんて!
自分では何となく、「転生したら…だった件」みたいな可愛らしいスライムを想像していたが、水面に映る俺の姿は、赤い目のような物が付いた真っ黒いタールのような禍々しい姿であった。
ちなみに口は無いが、口を開けるよう意識すると目の下の部分が開き、不快感の塊のようなおぞましい姿となった。
人にあったら確実に駆除されそう。
転生前によくある女神なんかによる説明もない。
ステータスオープンと唱えても、何も出てこない。
ちょっと、これひどくない?
・俺の姿は禍々しい、タールのようなモンスター。
・目が見えて、耳も聞こえるようになった。
・どれくらいの時間がたったのかは分からないが、お腹がすいた。
・ここは森の中、見上げるとお日様が見える
・最初は目も見えず、音も聞こえなかったが、緑色の生き物を半分食べたら(食べたとは認めたくないが)目も見えて、匂いもするし、音も聞こえる。
・ここが、何処かは分からないが、地球にはタールのようなモンスターなんていない。
人に見つかったら、駆除されるか、実験されるだろう。
分かった事は少ないが、とにかく今は人に見つからないように気を付けながら、森を探索して生き延びよう。
初投稿作品です。
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