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悪霊令嬢 あくりょうれいじょう ~とんでもないモノに憑りつかれている私は、そのまま異世界に転生してしまいました~  作者: にわとりぶらま


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第094話 オードリーの家出

 私とマルティナとオードリー嬢は食堂で夕食を取った後にお茶を飲みながら会話を続けていた。


「そういえば、オードリー様はどうして、マルティナの所に泊まりに来たのですか?」


「その事か…実は、恥ずかしい話なのだが、父から逃げているんだ」


 そう言って頬を赤らめる。取り巻きの令嬢達が入ればさぞかし喜んだであろうが、私はそこ迄、オードリー嬢にのめり込んでいないので、そのまま会話を続ける。


「お父様からお逃げになるというのは、喧嘩でもなさったのですか?」


「いや、喧嘩はしていないのだが…その、面倒な事になっていて…」

 

「面倒な事?」


「逆に構ってくるのですか?」


 マルティナがそう言うと、オードリー嬢は顔を挙げてマルティナに向き直る。


「まさにその通りだよ! 父が何かとことある度に声を掛けてくるんだ、しかも話の内容はその…本のことなんだけど」


「家を継がないといけないから、領地運営の為の本を読めとかそんなのですか?」


 私の場合は直接読めとは言われなかったが、家にその類の本しかなかったので、その本を読むしかなかった。まぁ、マルティナの様に娯楽用の本を何冊も買えるのは上級貴族ぐらいであろう。


「いや、そういった本なら、まだ良かったんだけど…」


 オードリー嬢は、唇を噛み締め顔を逸らす。頬を赤らめている所を見ると、これは怒りではなく羞恥の様だが…


「もしかして、漫画の本とか?」


 マルティナがそう言うと、オードリー嬢はビクッと肩を震わす。


「えっ? 漫画なんですか?」


 全国のオタク男性に偏見を持って申し訳ないが、オードリー嬢の父親像が、小太りの漫画を持った男性を想像してしまった。それならば、妻に逃げられたのも分かるような気がする。


「一体、なんの漫画なんですか? オードリー様、男性が娘と会話しようとする漫画って…」


 マルティナの言葉に、オードリー嬢は、困り眉に口を作んだ顔をチラリと向けるが、すぐに項垂れる。普段、男役をなさっているオードリー嬢がこんな表情を見せるのはちょっと可愛い。


「そ、その…『ガラスのマスク』だ…」


「えっ?」


「それって、少女漫画じゃないですか!?」


 本のタイトルに私とマルティナが驚きの声をあげる。


「そうなんだよ…しかも内容が演劇の話なんだ…もしかして、私がオペル座に通っている事がばれているのかな… それで私の口から失言を狙っているのかも…」


 すでにオペル座に通っていることを知っているのなら、そんな回りくどい方法を使って白状させるのであろうか? それとなんだか話の内容が聞き覚えのあるような気がする。


 しかし、そんな偶然なんて度々起こる訳がないと思うし、帝都には数多くの貴族がいる。でも、私は一応、オードリー嬢に確かめてみる。


「あの…オードリー様、一つお尋ねしてもよいですか?」


「…なんだい?」


 私はゴクリと唾を呑み込んでから尋ねる。


「もしかして、事前にその本を40冊ぐらいプレゼントされませんでした?」


「えっ!? どうしてその事を知っているんだい!?」


 いや…まだだ…まだ偶然が重なっているかも知れない…私は書店で出会った貴族男性の特徴を思い出す。確かやせ型の高身長で白髪交じりの髪を後ろに流していたと思う。


「えぇっと、知っているかどうかはまだ分からないのですが、オードリー様のお父様は40~50歳ぐらいのやせ型の高身長で、白髪交じりの髪をなさってますか?それも後ろに流す髪型の…」


「君は私の父に会ったことがあるのかい? まさしくその通りだよ」


 あぁ、やはりあの書店で出会ったのは別人ではなく、オードリー嬢の父親だ…


「出会ったというか、本を買うのを手伝ったのが私なんですよ…」


 こういう事は隠しても良くないので、私は正直にオードリー嬢に告げる。


「君が手伝ったってどういう事?」


「少し前に書店に行った時に、困っておられる貴族の男性に声を掛けられて、本の購入をてつだったんです。そして、先日もまたお会いして、またプレゼント用の本を捜しているとおっしゃったので、好きかどうか分からない本をプレゼントするよりかは、以前渡した本について会話してみてはどうかとお伝えしたんですよ」


 私の言葉にオードリー嬢は大きくため息をついて頭を抱える。


「それで、最近、本の内容について話しかけてくるのか… 私はてっきり父が変な趣味に目覚めたんじゃないかと心配したんだよ…」


「す、すみません… オードリー様のお父様とは知らずに、変な事を教えてしまって…」


 申し訳なく思い、頭を下げる。


「いやいや、君は善意から言ったのだろう? それをその気になって話しかけてくる父の方が悪いのだから…」


 私は、あの人物に娘と仲良くするために、会話する方法を教えたつもりである。それはただの善意ではなく、不器用な父親が思春期の娘を理解しようと努力している姿に心打たれた身体。


「でも、そんなにお父様と会話するのがお嫌いなのですか?」


 私がそう尋ねるとオードリー様は表情を曇らせる。


「…まだ何も知らない小さな子供の頃の私は、父の事が大好きだったよ…でも、分別がつくようになって、母が屋敷から去った理由が父の浮気だった事を知ってからは…父の事が嫌いになった…今では会話もしたくないと思っている」


 確かにその理由は分かるような気がする。しかし、私の場合は、父が新しい女を作って、母と共に私も追い出されたから、そう思うだけで、母だけが追い出されて私が家に残った場合はやはり同じように思うのであろうか?


 オードリー嬢の父親の場合は、浮気が原因で母親がいなくなったとしても、父親と一緒にいて、あの親御さんのいう事には、オードリー嬢に対して愛情は注いでいたと思われる。


 私もあの時、父から愛情を受けていたら、また別の感情を父に抱いていたのだろうか、それともオードリー嬢と同じ憎しみにいた感情を持ち続けていたのであろうか。


 どちらに傾いていたかは分からないが、私自身がオードリー嬢と面識があり、そして、その父親とも面識を持ってしまった。だから、どちらか一方だけを擁護することは難しくなった。オードリーの気持ちも分かるし、親御さんの気持ちも分かる。しかもどちらかが相手に対して直接酷いことをしたという事ではない。


 出来れば、二人には仲良くなってもらいたいと思うが、マルティナの目線が何か語りかけてくる。きっとあのお茶会の時にミーシャがエリシオを信じると告げた時に、コロン嬢が人の心まで他人がとやかく言うものではないと言った時の事を目で告げているのであろう。


 私はもやもやした気持ちを胸に抱えながら、食後のお茶を飲み干したのであった。



 


連絡先 ツイッター にわとりぶらま @silky_ukokkei


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※はらついの次回は現在プロット作成中です。


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