第082話 確認できない問題
ミーシャの悩み事相談の時間は終了したが、解決を見ていないので、なんだかもやもや気持ちで終わる。
「じゃあ、気持ちを切り替える為にも、お茶とお菓子のお代わりをしましょうか」
マルティナが重くなった空気を切り替えるために、少しわざとらしく話を切り出して明るく振舞う。
「さぁ!みんな、このくじを引いてみて!」
なんだか、前に見たことがあるくじである。いもくじであろうか?
「私は子と書いてあるね」
「私は親と書いてあります」
「私は子ですわ」
オードリー、ミーシャ、テレジア嬢がくじを引いてそれぞれ内容を読み上げる。
「コロン様どうぞ」
「私ね… あれ?大王って書いてあるけど…親子じゃないの?」
コロン嬢はくじの内容に首を傾げる。
「コロン様!おめでとうございます! それ大当たりですよ! この一番大きいのをお取り下さい!」
「まぁ、大当たりなの!? この一番大きなお花のお菓子を頂いていいのね?」
コロン嬢はマルティナから大きな薄いピンク色の花型のお菓子を受け取り、くじを引いた皆もそれぞれの大きさのお菓子を受け取る。
「次はレイチェル、今度は先に引かせてあげるわ」
マルティナがくじの入った箱を私に差し出す。私はくじを引いて開けてみる。
「あら、大王って書いてあるわ」
「あぁ、残り福を狙っていたのに、レイチェルに引かれちゃったわ!」
マルティナはそう言って、悔しそうな顔をしながら、私に大きい花型のお菓子を差し出し、マルティナ自身は子を引いたようで、がっくりしながら小さいお菓子をとった。
先程のミーシャのくじらクッキーに引き続き、この大王である。味はあっさりとした甘味にしっとりとした口当たりなので、口元では非常に食べやすい。しかし、胃にどっしりとした食べ応えがある。
「さて、では次の相談者は誰を選ぶの? ミーシャ」
「じゃあ、マルティナで…」
「えっ? 私!? 私かぁ~」
指名を受けたマルティナは首を捻る。
「御悩み事相談があると言えばあるんだけど…」
「やはり、カイレルの事なの?」
私はマルティナに尋ねる。
「そうなの、あのクソめ… いや、カイレルの事なんだけどね」
マルティナの言葉にコロン嬢がぷっと吹き出して、慌てて扇子で口元を隠す。これはコロン嬢もカイレルの事をクソ眼鏡と思っていたのだろう。
「カイレルの事に問題があるのなら、ここで話して皆と相談すればいいじゃないか」
オードリーがマルティナに言葉を投げかける。
「いや、そうなんですけど、カイレルの今の態度に問題があって、私もいい加減、婚約を解消したいのですけど…」
「では、すればいいのでは?」
オードリーのその言葉に、マルティナはバツの悪そうな顔をする。
「それが…小さい時に私が言い始めたことなので、私の方からは言い難いんですよ…」
「あぁ…確かにそれは言いづらいね…」
「私が小さな子供のころ、カイレルに勉強を教えてもらって、私、馬鹿だから頭の良い人と結婚したいと思ったらしくて、それでつい… でも、大きくなってから、カイレルが私が頭が悪いのを馬鹿にして毛嫌いしはじめたんです…」
確かにゲームの中のマルティナもお馬鹿さんだった。冒頭でのイベントで、貴族令嬢が置き勉なんてすると思っていたところも馬鹿さ加減が伺える。そして、転生したスズキ・マリコもなんだか、ゲームの中のマルティナと同じ匂いがする人物である。勉強熱心なカイレルからするとお馬鹿なマルティナとは相性が悪いかもしれない。
「とりあえず、私と一緒にもう少し勉強を頑張りましょう?」
私はマルティナに声を掛ける。
「そうね、マルティナ、先ずは勉強を頑張って、く…カイレルに馬鹿にされないようにしてから考えましょう。成績が良くなってもカイレルの態度が変わらなければ、改めて考えましょう。結論を急ぐ必要はないわ」
「わ、わかりました、コロン様、勉強を頑張ります…」
確かにコロン嬢の言う通り、結論を急いでマルティナから婚約破棄をする必要はないであろう。先ずは勉強が先だ。ゲームの中でもマルティナは馬鹿な行動を繰り返して、カイレルから、そして家からも見捨てられ追放されてしまうのだ。いくら、私がカイレルルートを選ばないからといっても、学問で実績を残さなければ家から追放されてしまう恐れがある。
「では、マルティナの問題はひと先ず、勉強をすることで保留ね。次は誰を選ぶの?」
マルティナは残っている、私、コロン嬢、テレジア嬢を見る。
「では、次はテレジア様で」
「えぇ?私なの?」
テレジア嬢が目を丸くする。
てっきり、私かコロン嬢を選ぶものと考えていたが、〆に回すつもりなのであろう。
「私は仕事も順調だし、その婚約者のウルグとも何もないから…まぁ、強いてあげればウルグとは何も話をしないのが問題だけど…」
ここが不思議に思う点である。他の『攻略対象』達は、私が行動しなくても、勝手に私に好意を高めて、様々なイベントを起こしてくる。しかし、ウルグだけは全くといっていいほど、イベントが発生していない。他の『攻略対象』達と一緒にいても、なんだか借りてきた猫のようで、一人一歩引いた場所から他の『攻略対象』達を見ているようだ。
ゲーム本来のウルグはイキリキャラで、集団イベントでも自ら進んで前に出てくるキャラである。それが、この現実では、DQNの不良たちに引きずりまわされている一般人の様に大人しくしているのは何かおかしい。
そして、ゲームの中のテレジア嬢ももっとウルグに固執していたが、この世界のテレジア嬢はウルグに全くと言っていいほど固執していない。この点もかなり不思議な現象だ。何故、テレジア嬢もウルグもゲーム通りの行動に動かないのであろう…もしかして…
「あの…テレジア様…」
「なにしかしら?」
私はテレジア嬢に声を掛ける。
「変な話を聞きますが、変わった夢…別の世界の夢とか見たことがありますか?」
私は変わった質問をテレジア嬢に投げかける。テレジア嬢は私の質問に首を捻り、マルティナは最初は『何を言い出すの?』と言う顔をしていたが、私の言葉の意味が分かった瞬間、真剣な眼差しになってテレジア嬢に向き直る。
「別の世界の夢ですか… 見たことはないですね、私がよく見るのは亡くなった家族の夢が多いです」
テレジア嬢は少し悲しそうな顔をしながら答える。
私は直接、転生者であるかどうかは聞けなかったので、遠回しに尋ねたつもりであったが、テレジア嬢の反応を見る限り、テレジア嬢は転生者ではないようだ。では、どうして彼女はゲームの内容通りの行動にでないのであろう。まぁ、出ない方が、不幸な結末を回避できるのではあるが。
「ただ、私はたった一人の家族のおじい様と一緒に幸せに過ごせれば良いです」
私はテレジア嬢のその言葉で思い出す。
確かゲームの中のテレジア嬢は、そのたった一人の祖父が倒れて、テレジア嬢では治療できない為、ウルグとの結婚を急ぎ、ウルグのウリクリ家の財力で祖父を治療しようとしていたはず。だから、ウルグに色目を使う主人公を、必死に阻止しようとしたのは、その祖父の治療の為なのであろう。
これは意外と難しい問題かもしれない。テレジア嬢自身に何かあるのではなく、ゲーム上ではどのタイミングで発生するか分からない、また学園の生徒でもない、テレジア嬢の祖父のカイ老人の安否を観察するのは難しい。私が診療所の帰りに送ってもらうぐらいしか接点がないのだ。
こう考えると診療所の仕事の重要度はぐんと増す。倒れた理由が病気であるのなら、診療所で顔を合わせる事によって、その健康状態を見る事ができる。しかし、事故であった場合ならどうなのであろう。テレジア嬢の治癒魔法でも治療する事の出来ない大怪我を追うのであろうか…
「テレジア様にはとくに悩み事がないようだから、次に行きましょうか」
「では、次はレイチェルさん、貴方の番でお願いします」
私が考えているうちに、私の番が回ってきたのであった。
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