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悪霊令嬢 あくりょうれいじょう ~とんでもないモノに憑りつかれている私は、そのまま異世界に転生してしまいました~  作者: にわとりぶらま


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第074話 オペル座

「まぁまぁ~懐かしいですわ~ オペル座に来るのは久しぶりですもの~」


 受付を済ませたコロン嬢はロビー広間に入って、踊り出しそうなぐらいに上機嫌である。


「このまま、アレン皇子の事も、シス王女の事も忘れて、上機嫌のままならいいのにですね」


「そうよね、公演が終わってから、上機嫌の時に、最近、アレン皇子に突っかかる理由を聞き出さないとね…」


 私とマルティナは上機嫌でそこらかしこに歩き回るコロン嬢を眺めながら言葉を交わす。


「そうだそうだ!公演が始まる前に、香盤を確認しないと!」


 コロン嬢は手を叩いて、思い出したように声を上げる。


「ねぇ、マルティナ、香盤ってなにかしら?」


「あぁ、公演での役名や出番が書かれている表の事よ」


「なるほど、出演表ね」


 コロン嬢は、ロビーに掲示された役名と出演者の名前が吊るされた香盤表の所へ行き、見上げて眺める。


「あら?あらら? マルティナ! レイチェル様もお越しくださいまし!」


 香盤表を眺めていたコロン嬢が私たちに振り返り、手招きをしている。


「どうかなされましたか?コロン様」


「何か問題でも?」


 私とマルティナがコロン嬢の所まで進み、呼ばれた理由を尋ねる。


「ここ!ここの主役のオスカーの出演者の所を見てくださいまし!!」


 私とマルティナはコロン嬢が指差した主役の一人オスカーの出演者の名前を確認する。


「あれ!? これって、学園のオードリー様じゃないですの?」


「ホントだわ、オードリー様だ…」


 出演者の使命にはきっちりとオードリー・ミール・トゥールとフルネームで記されている。名前だけなら別人という事はありうるが、トゥール家の人間でミールという侯爵家の子女を現す言葉が入っている以上別人という事はありえない。


 確かにゲームの中ではヅカっぽいキャラで描かれていたが、実際に演劇を行うという事はなかった。これはどうなっているのか全く分からない。


「そう…やはり、彼女は夢を追うのね…」


 コロン嬢がポツリと呟く。


「夢を追うって、どういうことですか?」


「あぁ、ごめんなさい。彼女の個人的な話だから、あまり人には話せないのよ」


 思わず口から漏れたことを聞かれたことに、コロン嬢は少し狼狽しながら取り繕う。


「コロン様、とりあえず公演を見てから確認しましょうか」


 マルティナがコロン様の手を引く。


「そ、そうね、それでどこの席かしら」


「バンブーシューツ席ですよ」


 マルティナは少し自慢気にコロン嬢の分のチケットを手渡す。


「まぁ! まぁまぁ! 凄いわ! マルティナ! こんな席をとれるなんて! あぁ素敵!」


「えへへ、そうでしょ?そうでしょ? 私、頑張ったんですよ!」


「流石!私の心の友! マルティナですわ!」


 コロン嬢、貴方もその言い方をなさるのですね…


「さぁ! 早く座席について開演を待ちましょう!」


 もはや、コロン嬢の独壇場である。


 その後、コロン嬢とマルティナとで公演を見たのであるが、私にはとっては衝撃的なカルチャーショックを受けた。


 舞台に上がる豪華な衣装に濃いメイクの役者たちが、舞台の上で、現代技術にも勝るとも劣らない魔法を使った技術で演出されて、セリフや歌も魔法によって、ただ耳に聞こえるのではなく、頭や身体に響くように感じられる。


 私は、前世の玲子時代にテレビもあまり見なかったし、音楽もたまにテレビを通して聞く程度で、わざわざ、お金と労力を使って、コンサート会場やライブに行く人たちを全く理解出来なかった。しかし、この公演を見た私は、転生してようやくその素晴らしさに気が付く事が出来たのである。


 そして、この公演の肝は、主役を務める、『悪役令嬢』の一人のオードリーである。学園ではたまにしか、彼女のその姿を見る事が出来ないが、女性であるのに頭一つ高い身長に、凛々しく整った顔立ち、まるで美青年を思わせる佇まいで、数多くの取り巻きの令嬢を引きつれている。私はその取り巻きを作る本当の理由を今日知ることができた。


 そして、オスカー役のオードリーが魔法に倒れつつも突撃を指示し、最後に実らなかった思い人の名を呼ぶところは、コロン嬢やマルティナだけではなく、私も泣かずには見ていられなかった。


 公演が終了し、最後のカーテンが引かれても、コロン嬢とマルティナ、そして私も拍手を鳴らし続けた。


「素晴らしい! 本当に素晴らしいですわ!! オスカーの運命が分かっていても、何度も見て虜になってしまう… やはり、ナンばらは最高ですわ!!」


「コロン様、私も感動しました! ハッピーエンド以外の作品でこんなに感動したのは初めてです!!」


 声を上げて演劇の余韻に浸るコロン嬢に、マルティナが自身の感動を伝える。


「そうでしょ! そうでしょ! マルティナも感動したのね!! レイチェル様も感動なさったでしょ!」


「はい… 私、初めて知りました… 薔薇は散っても美しいものだと…」


 コロン嬢の様に、興奮状態の感動表現は出来ないが、私の体は今、感動で満ち溢れ、私の一番の推しポイントをコロン嬢に伝える。


「そうですわ! レイチェル様! 尊き物はその散り際でこそ、ようやく価値が分かるものなのです。初めてなのにそこに気が付かれるとは、流石、私のお友達ですわ!!」


 どうやら私の感想はコロン様にもちゃんと通じたようだ。


「このまま、それぞれ帰るのは勿体ないわね、そうだわ、ここのNAVOでお茶会をして、お互いに思いのたけを話し合いましょうよ」


 NAVOってのは喫茶店かな?


 そんな事を思っていると、この劇団の従業員と思わしき少女が私たちの所へやってくる。


「あの… コロン・ミール・マウリシオ・ロラード様でしょうか?」


「はい、そうですが…貴方は?」


 コロン嬢はキョトンとした顔をで少女を見る。


「私はこの劇団の者です。とある方からのメッセージをお伝えに参りました」


 そう言って少女はメッセージカードをコロン嬢に差し出す。


「ありがとう…どなたかしら… まぁ!」


 メッセージカードに目を落としていたコロン嬢は突然に、歓喜の声を上げる。


「マルティナ、レイチェル様! すぐにNAVOに行きますわよ!!」


「どうなさったのですか?コロン様」


 歩き始めるコロン嬢にマルティナが尋ねる。


「とあるお方が私たちとのお茶会をご所望なのよ」


 コロン嬢は微笑んで答える。


 私はもしかしてと思いつつ、コロン嬢の後に続いた。



連絡先 ツイッター にわとりぶらま @silky_ukokkei


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もご愛読頂ければ幸いです。

※はらついの次回は現在プロット作成中です。


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