第069話 システィーナ王女の対処
シス王女と知り合って以降、何かと私とマルティナで彼女に声を掛け、一緒に行動する機会も増えたのであるが、目を離している内に、シス王女はアレン皇子たちと行動することも多くなった。
こう言ってはシス王女に悪いが、田舎の国から来た少女に、帝国の洗練された皇子の姿は眩しく映るのであろう。日本人が、白人に憧れるようなものである。また、彼女自身も箱入り娘だったのか、男慣れしておらず、アレン皇子の甘いささやきに簡単にメロメロになっている状態である。
「ちょっと、マズいよね…」
マルティナがアレン皇子たちと連れ立って歩いているシス王女を見て、ぽろっと呟く。
「シス王女が学園生活に馴染んでいるのは良い事だけど、あの人たちと絡むのはね…」
私はマルティナの呟きに答える。
「いや、それだけじゃないのよ」
マルティナはアレン皇子たちから視線を動かさず、眉を顰めて答える。
「それだけじゃないって、どういうこと?」
「コロン様の機嫌が悪くなっているのよ…」
「コロン様が?」
コロン嬢は今まで、アレン皇子たちの素行不良を見つけては、まるで母親か保護者の様にしかりつける事はあった。その時にご機嫌斜めになる事はあるが、マルティナが改めて口に出すような事はなかった。なのに、マルティナが口に出すという事は、相当、御冠なのであろう。
「そんなに機嫌が悪いの?」
「もう悪いってもんじゃないわよ、常にイライラなさっている感じで… コロン様って、普段はアレン皇子に怒っても、私たちと話す時は、ニコニコの上機嫌になっているでしょ?それが、私と話していても、眉間に皺を寄せたままなのよ…」
ゲームの中のコロン嬢は、アレン皇子を狙う主人公目線だったので、不機嫌な顔は普通であったが、この世界の私にとっては、アレン皇子とはあまり関りを持っておらず、また、コロン嬢との交友関係も良好の為、上機嫌の顔が普通であった。
「気分転換にお茶会でも誘ってみたらどうかしら?」
私はマルティナに提案してみる。
「それがね、声を掛けたんだけど、心、ここにあらずって感じで、その上、タイミングが悪いことに、アレン皇子とシス王女が連れ立って現れたもので、お流れになっちゃったのよ」
私が思いつくような事は既にマルティナが行っていたのか…
「しかし、少し変よね…」
「変って何が?」
私の漏らした言葉に、マルティナが振り返って尋ねる。
「いや、コロン様って、本来はアレン皇子の女性関係に関しては大らかなのよ。私なんて、前に二人でお茶会をした時は、私ならアレン皇子の側室に大丈夫って言われたのよ」
「えっ? レイチェル、貴方、コロン様にそんな事を言われたの?」
私の言葉にマルティナは目を丸くする。
「えぇ、そうよ。どこの馬の骨か分からない娘がアレン皇子の側室になるのなら、私の様な人間がいいって… その事を踏まえれば、シス王女は仮にも一国のお姫様なんだから、どこの馬の骨って訳ではないし…」
「あぁ~ それなら、礼儀作法の事でコロン様はご機嫌斜めなのかな?」
「礼儀作法か…」
確かに私は、コロン嬢とのお茶会で、お茶の作法の選択肢に正解したから、彼女に認められる存在となった。それに比べてシス王女は、この帝国に留学をしているのにも関わらず、ずっと故郷の礼儀作法で通している。その事が帝国をコケにされているように思って、コロン嬢は機嫌を損ねているのであろうか。
「では、どうするの? シス王女に帝国式の礼儀作法を教える?」
「でも、それじゃ、シス王女を馬鹿にしている様な気がするのよね…体臭が匂う人に風呂入れよって言うみたいで」
私の提案にマルティナはとんでもない例え話をする。
「シス王女は腰の低い気さくな人だけど、異文化人だから、言い方を気を付けないといけないわね」
「じゃあ、アレン皇子ともっと仲良くするためってのはどうよ?」
マルティナは名案でも思いついたかのようにドヤ顔で言ってくる。
「えっと、マルティナ、アレン皇子が誰の婚約者かって事を覚えてる?」
「あっ…」
どうやらマルティナはそんな基本の事を忘れていたようだ。
「まぁ…アレン皇子の名前は出さず、暗に仄めかす程度で留めて置いた方がよさそうね、それならシス王女もやる気になってくれると思うから」
「そ、そうね…でも、友人に友人の婚約者と仲良くなる方法を教えるって、結構、ドロドロな事をやる事になるわね…日本人の感覚でいったら友人への裏切り行為よ」
確かにSNSのまとめサイトに取り上げられそうな、ドロドロした事情である。
「礼儀作法の事で、コロン嬢がイライラしているのなら、シス王女がこの国の礼儀作法を覚えれば解消されるわけだし、私たちはただ単に礼儀作法を教えるという事で…」
「それで、免罪符になるのかなぁ~…」
確かに微妙な所である。
「礼儀作法の事でコロン嬢が機嫌を損ねているのではなかった時は、その時で改めて考えましょう…」
「そうよね、そもそもシス王女はゲームの中では存在しなかった人だし、攻略方法も分かんないわよね」
そう、マルティナの言った通り、システィーナ王女の存在は、ゲームの中では一切語られていない。おそらく、私が関わった事で、彼女は除霊に成功し、再び学園へと復学できることになったのであろう。もし、私が関わらなかったら、彼女はゲームと同じように、学園の舞台に立つことは無かったと思われる。
しかし、ゲームの中のシス王女はどうなっていたのであろう…やはり、除霊されずにあの地下室にずっと監禁されたままだったのであろうか。でも、その場合には外交上の問題が発生しそうである。
ゲーム後半の帝国の動乱にはその辺りが関わっているのであろうか。でも、彼女の祖国であるプラム聖王国は帝国の侯爵家にも及ばないぐらいの小国である。帝国を動乱に陥らせるような影響力は持っていないだろう。現状ではなんとも言えない。
「レイチェル、とりあえず、シス王女が一人になった時に声を掛けてみましょうか」
考え事をしていた私にマルティナが声を掛けてくる。
「え、えぇ、そうね、そうしましょう」
こうして、私とマルティナはシス王女に帝国式の礼儀作法を教える事となった。
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