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悪霊令嬢 あくりょうれいじょう ~とんでもないモノに憑りつかれている私は、そのまま異世界に転生してしまいました~  作者: にわとりぶらま


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第382話 伝えたい想い

「レ…チ…………」


 声が聞こえる…


「レイ……ル……」


 この声は私の名を呼ぶ声?


「レイチ…ル…!!」


 私の名前を呼ぶ声だ。


 その声に霞かかった私の意識は、次第に覚醒へと向かっていく。


「うぅ…」


 私は力がごっそり抜け落ちたような倦怠感を感じながら、薄っすらとその瞼を開いていく。


「レイチェル君!!」


 ぼんやりと聞こえていた声がハッキリと聞こえ、その声がディーバ先生のものだと分かると、私は、瞼を開け放つ。


 すると、目の前には非常に心配そうな顔で、私を覗き込むディーバ先生の顔があった。


「ディーバ…先生?」


「そうだ! 私だ! ディーバだ!!」


 声と姿で目の前にいる人物がディーバ先生だと分かると、私は思わずディーバ先生にしがみ付く。


「ディーバ先生!! ディーバ先生!!! 良かった…良かった!!」


「レ、レイチェル君…」


 私に突然しがみ付かれたディーバ先生は、動揺して声が上ずる。


「私…ディーバ先生が鎖になってしまったと思って…辛くて…悲しくて… でも、こうしてディーバ先生がいてくれることが嬉しいんです!! 幸せなんです!!!」


 私は子供の様に泣きじゃくりながら、顔をディーバ先生に擦り付けるように、留まる事のない思いの丈を構わずに声に出して、ディーバ先生に伝える。


「そうか…レイチェル君…私の事を心配してくれていたのか…」


 ディーバ先生の優しくて穏やかな声が私に降りかかる。


 私はその言葉に、顔を上げて、ディーバ先生の顔を見る。


 すると、ディーバ先生は今までにない、柔らかで優しい笑顔で私を見ていた。


 私はその笑顔に再び胸の内に湧き上がる思いが吹き出して、ディーバ先生を強く抱きしめる。


「私…ディーバ先生が鎖になって消えてしまったと思ってから、ディーバ先生に一杯、一杯! 一杯!!! 伝えなくっちゃいけない事に気が付きました! いつも助けてもらった事、いつも手を貸してもらった事、私が子供の様に拗ねたのに大人として接してもらった事、一杯、一杯! お礼と感謝の気持ちを伝えなくっちゃいけない事に…そして…」


 私はディーバ先生の顔を見つめる。


「私がディーバ先生に好意を持ち始めていた事… 好きに成り始めていた事… 愛してしまっていた事を…」


 ディーバ先生は私の言葉に驚いたように少し目を見開く。


「ディーバ先生!! 私…貴方の事が好きです!!! 愛しています!!!」


 胸の中に仄かに芽生え始めた思い…初めは気の迷いだと思って、無視していた…


 しかし、ディーバ先生と接するたびに、その芽生えた思いは、まるで水を与えられた植物のように、日に日に、高く大きく成長していった。


 私は、借り物だと思っていた身体で、この世界の人を愛する事に対する忌避感や、前世の父に捨てられた母の事を思い出し、ずっとその成長していく思いを心の奥底に封じ込めてきた。


 しかし、私の胸の魔法陣から鎖が飛び出した瞬間、私は取り返しのつかない事をしてしまったと後悔して悔やんだ。


 転生してしまった事により、前の世界の母に何も思いを伝える事が出来ないように、鎖になってしまったディーバ先生に何も思いを伝える事が出来ない…


 マリスティーヌ様にも言われていた事なのに、私は同じ過ちを繰り返してしまったと激しく後悔した。


 でも、今こうして、私の目の前に、ディーバ先生がいる。言葉を伝えられる距離にいる。そんな状況に今まで胸の内に押しとどめていた思いを、もはや閉じ込める事なんて出来やしなかった。


 だから、私は胸の内にあった思いの丈を、全てディーバ先生に打ち明けた。今までに無い強い思いで心の内の私の本当の気持ちをディーバ先生に伝えたのだ。


「ディーバ先生…」


 私は縋るような気持ちでディーバ先生を見つめる。


 そのディーバ先生は困惑した困った顔して、動揺している様であった。


「わ、私からの…告白は…迷惑ですか・・?」


 私は恐る恐るディーバ先生に尋ねた。どんな返事が返ってくるのかが怖かったが、私の中では、どんな返事でも受け入れられるような気もしていた。何故なら、自分の本当の気持ちを、出来る限り全部伝える事が出来たからだ。もう伝えられずに会えなくなる恐怖と後悔なんて無かったからだ。


「い、いや…そうではない…何というか… 今まで、これ程までに強い思いの丈を向けられた事が無くて…恥ずかしながら動揺しているのだよ」


 ディーバ先生は、困ったような、はにかむような、自重するような笑みで答える。


 そんな先生の初々しくも可愛らしい意外な反応に、私の思いが拒絶された訳ではない事が分かり、表情に嬉しさが広がり、自然と笑みが零れていく。


「レイチェル君、私は研究一筋で生きてきた人間であるし、私と君とは教師と生徒の関係でもある。だから、その…世間一般一般で言う所の色恋や恋愛というものに、無知であるし、表立って行う事もできない…だが、レイチェル君、君の純粋で熱意ある思いは受け取った。だから、私も…その…君の思いに対しては私も拙いながらも真摯で誠実に答えていきたいと思う…今は、これで良いだろうか?」


 ディーバ先生は恋愛に対してウブなのであろうか? それでもディーバ先生はディーバ先生なりに、私の思いを受け止め、誠実に答えてくれた。だから恋愛慣れをしていなくて、言葉足らずな所があったとしても、その言葉の向こう側には、今の先生の語彙では現す事の出来ない思いを感じる事ができて、私の胸の内に今まで感じた事のない歓喜の念が溢れる様に湧き上がり、心だけではなく身体全身を満たしていくようであった。


「はい! ディーバ先生! 私はその言葉だけでも嬉しいです!!」


 私は感極まって、再びディーバ先生を抱きしめる。


 ディーバ先生は私の言動に、戸惑いそして少し照れながらも、私の背に手を回して優しく抱き返してくれる。


「友や知人から向けられる好意とは異なり、男女の情から向けられる好意は、また別の心地よさがあるものだな… 私は恥ずかしながらこの歳に初めて知ったよ…」


「それは、私もです…ディーバ先生…」


 私がそう言葉を返すと、屋上の出入口の向こう側が騒がしくなり始める。


「どうやら、憲兵隊が漸く駆けつけたようだな」


 すると、エリックが破壊した瓦礫を撤去しながら、数多くの憲兵隊が姿を現す。


「ディーバ!! 無事か!?」


「ディーバ様!!」


 その憲兵隊の後ろから、イニミークさんとノインさんが姿を現す。


「あぁ、私は無事だ」


 そう言って、ディーバ先生は私を抱きかかえながら立ち上がり、二人に向き直る。


 その様子に、イニミークさんはディーバ先生の無事な姿を確認して、表情を緩め、ノインさんは少し眉を曇らせる。


「それよりも、負傷者がいるようだ、確保して医務室に運んでもらえないか?」


 ディーバ先生は視線をコロンたちや、そこらに散らばって倒れているアレン達に向けて促す。


「アレン皇子!! 逃げ出したと思ったら、こんなところに!!」


 イニミークさんが眉間に皺を寄せる。


「わ、私もいるから…早く治療して頂戴…アレンにお腹をさされているのよ…」


 そう言って、屋上の出入口の陰から、お腹を押さえて、青い顔をしたマルティナが姿を現す。


「マルティナ!! そんな所に!!」


 私はそのマルティナの姿を見て声を上げる。


「レイチェル… さっきまでちょっと出ずらい状況だったから黙っていたのよ…」


 力なく笑うマルティナの言葉に、私は顔が赤くなる。


「ちょっと、貴方、かなり出血しているじゃないの!! すぐに治療してあげるわ!!」


 ノインさんがマルティナの元に駆け寄り、すぐに魔法で治療を始める。


「あぁ、生き返るわぁ~」


 マルティナはまるでお風呂にでも浸かるような声を上げる。


「でも、こうして治療してもらえると、緊張の糸が解けて、今までの疲れが出て眠くなってきたわ…」


 瞼が重くなってきたマルティナの姿を見て、ノインさんがふっと笑う。


「いいわよ、眠りなさい… 大変な苦労をしたようだから… 大丈夫、貴方の事はちゃんと運んであげるから」


 その言葉に、マルティナは頷いたのか、それとも眠ってしまったのか、頭を項垂れて寝息をあげ始める。そして、そんなマルティナを見ていた私も、眠気が移ってしまったのか、急に瞼と頭が重くなり始める。


「レイチェル君、君も眠そうだな、ゆっくりと眠りなさい。君の事は私が運ぶから安心しなさい」


 そう言ってディーバ先生が笑みを浮かべる。


「はい…ディーバ先生…」


 私はそう答えると、ディーバ先生の胸の中で眠りについたのであった。






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