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悪霊令嬢 あくりょうれいじょう ~とんでもないモノに憑りつかれている私は、そのまま異世界に転生してしまいました~  作者: にわとりぶらま


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第378話 コロンの再構築

「うそ!?」


 私も声を上げ、すぐにコロンの側に膝をつき、その顔を覗き込む。


 コロンは私と別れたままの力ない笑顔のまま、その瞳は瞳孔が開き、息は止まっていた。


「うそ…嘘…! 嘘よ!! コロン!! 私は大丈夫って言ったじゃない!! どうして死んじゃうのよ!!」


 私は目の前のコロンの状況に、取り乱して気が狂ったように声を上げる。


 自分は魔法で生命維持をするって言っていたのに、もしかして、あの時、コロンは嘘をついたの? もう助からない自分の事より、他のみんなを助けるために?


「いや! いやよ!!! コロン!! コロン!!!」


「レイチェル!! しっかりして!!!」


 泣き叫ぶ私に、マルティナが大声を上げる。


「コロンが息が止まったとしても、まだそれ程時間が経っていないわ!! それなら、まだ蘇生が出来る!!」


「コロンを蘇生できるの…?」


 コロンのみんなを思いやる嘘の言葉を信じ、その為にコロンの後回しにして彼女を見殺しにしてしまった私に、マルティナの言葉は縋りつきたい天の声のように思えた。


「レイチェル!! 私は人工呼吸と心臓マッサージをするわ! レイチェルは聖女の力でコロンを助けて!!」


 マルティナはそう言うと、早速、必死に心臓マッサージと人工呼吸を交互に続ける。


「ダメ! コロン! 死んじゃダメ!! 私…私…まだ一人で歩けないの…コロンが一緒でなきゃ… 私は人生を歩いて行けないわ!! だからお願い!! 息を吹き返して!!」


 マルティナは涙と汗で顔をぐちゃぐちゃにしながら、必死になってコロンに呼びかける。そんなマルティナの姿を見ながら、私はただ混乱して、マルティナの様子を見守る事しかできなかった。


 コロンを助けるってどうやって!? 折れた手足や、開いた傷口は閉じる事が出来る。しかし、コロンの様に爆ぜて失った腕や、魔法で吹き飛ばされてしまった足をどの様に直せばよいか分からない。


 どうすればコロンを助けられる!? 私はどうすればいいの!? 聖女の力があっても、私にはどうすればいいのか分からない… 助けて…誰かコロンを助けて!!!


 私は心の中で悲鳴を上げる。



 『レイチェルさん、落ち着いて下さい!』



 その時、頭の中に声が響く。聞いた事のある声だ。


「もしかして、マリスティーヌ様ですか!?」


 私は天を仰ぎ、声に出して尋ねる。



 『そうですよ、レイチェルさん、マリスティーヌです』



 マリスティーヌ様は優しく穏やかな声で語りかけてくる。


「マリスティーヌ様!! コロンが…コロンが!! どうかコロンを助けて下さい!!」


 私は天を仰ぎ、マリスティーヌ様に祈る。



 『私もコロンの事は見ていました。私も彼女を救いたい気持ちは同じです。だから、レイチェルさん、貴方が聖女の力を使って彼女を救ってください!』


「でも、私には聖女の使い方が分からないんです!! コロンの救い方が分からないんです!!」


 私は自分の非力さを呪う。



『レイチェルさん、聖女の力を信じて下さい! その力を使えば、必ずコロンさんを救う事が出来ます! 今から、その方法を直接、貴方に伝えます。ちょっと混乱すると思いますが、我慢してください』


 マリスティーヌ様のその言葉が頭に響いた途端に、私の中に様々な情報が流れ込んでくる。


「ちょっと…ちょっと待って…本当にこんな方法が!?」


 私はマリスティーヌ様から伝えられた予想外の方法に、激しく困惑する。



『本当です!! だから、私を信じて!!』



 マリスティーヌ様の言葉が私の胸に突き刺さる。そうだ!私はマリスティーヌ様を信じているのだ!!


「マルティナ!!」


 私は必死に人工呼吸と心臓マッサージをしているマルティナに向き直り、声を掛ける。


「ど、どうしたのよ!? レイチェル!?」


 マルティナは困惑した顔を上げる。


「早く皆をここに集めて来て!! 早く!!」


 私はマルティナにそう告げると、マルティナの返事も聞かずに、すぐさま一番遠くにいる、オードリーの元へ駆け出す。


「み、みんなをここに集めればいいのね!」


 背中からマルティナの声が響く。恐らくテレジアかミーシャの所へ行っているのだろう。


 私はオードリーの倒れている場所に辿り着くと、オードリーの脇に手を入れて、上体を持ち上げて、オードリーをコロンの場所へ引きずっていく。


 私がオードリーをコロンの場所まで、引きずるとマルティナはすでにミーシャを背負って運んできており、今度は二人して、テレジアを運びにいく。


「私は右から手を入れるわ、マルティナは左からお願い!」


「分かったわ!」


 そうして、二人でテレジアをコロンの元へと運ぶ。


「それで、次はどうすればいいの?」


「みんなで手を繋がして! マルティナもよ!」


「わ、分かったわ!」


 マルティナは短く答えると、気を失っているみんなの手を握らせていき、最後にマルティナが手を繋ぐ。


「レイチェル! 手を繋いだわ!!」


「では、開いている手を私と繋いで! それで、皆で子供の頃のコロンを思い出す様にして、そのイメージを私の中に送り込んで!!」


 マルティナは私の言葉に驚いて一瞬目を丸くするが、すぐに真剣な表情になり、頷いて答える。


 私はマルティナの返事を確認すると、すぐにコロンに向き直って、開いている片手をコロンに翳して念じ始めた。


 コロンの損傷は、欠損部位が多すぎて、身体の余分な部位や、各部位から必要構成物質を間引きしていっても補う事が出来ない。また、血液も今の身体の大きさでは出血しすぎて生命を維持できない。


 だから、マリスティーヌ様が教えて下さったコロンを助ける方法は、みんなの過去の記憶から、今のコロンの質量でも足りる大きさの子供の姿に、コロンの姿を作り変える事である。


 最初はそんな突飛な方法を信じられなかった。しかし、マリスティーヌ様のあの真剣で必死な言葉に、私はマリスティーヌ様を信じると言った自分の言葉を思い出したのだ。



「コロン…今、私の全身全霊の力で貴方を治してあげる…絶対に治してあげるんだからっ!!」


 私の強い意志に聖女の力が完全開放され、コロンの身体が眩いばかりの光に包まれていく。それと同時にマルティナとつないだ手から、皆の過去のコロンの記憶が流れ込んでくる。


 この年齢の身体は…まだダメ…質量が足りない…


 この年齢は…大丈夫!! 行けるわ!!


 皆の過去の記憶から、今のコロンの質量で身体を再構成できる年齢の身体を見つけ出し、皆にその姿を強く思い出す様に、念波を送り返す。



「コロン!! 今、治してあげるわ!!」



 私はコロンを包む光球に、聖女の力を送り続ける。


 光球の中で生まれたままの姿になったコロンは、みるみる身長が縮んでいき、それに従い、欠損した両腕と、片足が生え始める。


「いける!! いけるわ!!」


 腕が肘から手首、手首から掌、そして、植物の枝が伸びる様に、一本一本の指が伸びていく。足も欠損していた太ももの半ばから、膝が出来て、そこからスラリとした脛が伸びていき、足首が出来て、足の甲、そして足の指が五本揃って伸びる。


 元の質量に見合ったコロンの身体が再構成された後、仮死状態に停止されていたコロンの身体が再稼働し始める。



 トッ… トック… トックン…トックントックン…



 止まっていた心臓が再び鼓動を始め、それに伴い、聖女の力の生命力を帯びた血流が身体全身、隅々に流れ始める。



 スッ… スゥ… スゥゥスゥゥ…


 そして、止まっていた呼吸も、コロンが蘇った事を現すように、深くゆっくりと繰り返し始める。


「良かった!! 良かったわ!! コロンが蘇ったわ!!!」


 そこで、全身全霊で聖女の力を送っていた私は、力が抜けて、膝を崩す。それと共にコロンを覆っていた光球はシャボン玉の様に初めて、宙に浮いていたコロンはふわりと落下する。


「危ないっ!」


 私は咄嗟にコロンを受け止める為に手を伸ばす。そして、その腕の上に小さくなったコロンの重みが伸し掛かる。


 間一髪でコロンを受け止めた私は、ふぅとため息をつき、落ち着いた所で、腕の中にいるコロンに視線を落とす。


 あの真っ青だったコロンの顔色は、赤みを帯びた健康そうな顔色に戻っており、深くゆっくりとした呼吸をしながら、心地よさそうに眠っている。


「良かった…」


 私は、腕の中のミーシャより少し大きいぐらいに小さくなったコロンを抱きしめる。


「レイチェル!! コロンが助かったのね!!」


 マルティナもコロンの復活に嬉しそうな声を上げて回り込んでくる。


「えっ!? こ、これがコロン!?」


 嬉しそうに回り込んできて、小さくなったコロンの姿を見たマルティナが驚きの声を上げる。


「そう、この子がコロンよ… 手足を失って質量を欠損していたコロンを助けるには、コロンの身体を小さくしなければならなかったのよ」


「そ、そうなんだ…でも記憶は大丈夫なの? その年齢の頃の記憶に戻っている事はないの?」


 マルティナは心配そうにコロンを覗き込む。


「大丈夫よ、身体が小さくなっただけで、記憶はそのままよ、身体の時間軸を巻き戻した訳ではないから」


「そうなの!! よかったぁ!! コロンが私の事を忘れてなくて!! 本当もう、コロンったらこんな可愛い姿になっちゃって!!」


 心配事の無くなったマルティナは本当に嬉しそうに、小さくなったコロンを抱きしめ始める。


「ふふっ、私たちの良く知っている前のモデル体型のコロンも素敵だったけど、小さくなったコロンもなんだか等身大のお人形の様で可愛いわね」


「でも、今のコロンは裸だし、前の服はボロボロに成っちゃったから、助かったと言っても早く、服装をどうにかしてあげないと、今度は風邪を引いちゃうわね」


 マルティナは全裸になったコロンと、再構成する時に脱げ落ちたボロボロになった服を見る。


「そうね…とりあえず、元の服を着せるにしても、脱げ落ちそうだったり、大きすぎてブカブカだったりで動けそうにないわね…」


「じゃあ、私がひとっ走りして、エマちゃんにメイド服を借りてくるわ、今のコロンなら身長が合いそうだから」


 そう言ってマルティナは立ち上がり、屋上の出入口へと駆け出していく。


「マルティナ! 屋上の出入口は、エリックの攻撃で…」


 私がそう言いかけた時、屋上の出入口に辿り着いたマルティナの背中から、剣の切っ先が生えていた。


「えっ!?」


 私は一体何が起きたのか分からず困惑して固まる。


「う…嘘でしょ… なんで…貴方がいるのよ…」


 マルティナが苦しそうな声を漏らし、床に崩れていく。


 そのマルティナの崩れた向こう側にいたのは、軟禁されているはずのアレン皇子であった。




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