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悪霊令嬢 あくりょうれいじょう ~とんでもないモノに憑りつかれている私は、そのまま異世界に転生してしまいました~  作者: にわとりぶらま


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第374話 友人たちの惨状

「コロン!!!」


 私は両腕を失ったコロンの壮絶な姿を見て声をあげる。


「コロンさん!! コロンさん!!!」


 ミーシャも悲壮な声で何度もコロンの名を呼ぶ。


「コロン…ごめんなさい…これでも今は防御魔法を張るので精一杯のなの…」


 テレジアは両腕の無いコロンに頭を下げながら搾るような声を出す。


「いいのよ…」


 コロンは両腕を失い激しい激痛に襲われているはずであるのに、平静…いや、ミーシャ達に微笑みを浮かべて声を掛ける。


「私は本来ならば、システィーナ王女の件で、とっくに断頭台に上がっていてもおかしくないのよ、だから、今更、友人の命を守る為なら、この命が惜しいとは思わないわ…」


 そういって、コロンは再び敵意をむき出しにして、魔族の後ろにいるエリックを睨みつける。


「なんとも美しい友情…なんとも気高き自己犠牲ですな… 貴方はまるで、荒野でも一輪で咲誇る美しく気高き薔薇のようですな」


 エリックはパチパチと拍手をしながら、コロンを嘲笑う。


「あら、貴方にしては珍しく、品のある言葉で褒めて下さるのね、でも、貴方なんかに褒められてもちっとも嬉しくないわ…」


 そう言い返すコロンであったが、顔色は、全く血の気が無く、僅かに身体と声が震えていた。


「この様な状況でもなんと気高き事か!! 貴方の様な方はトマトの様に潰してしまうのは勿体ない、薔薇の様に手折って差し上げましょう」


 そう言って、エリックはコロンに向けて魔弾を撃ち出す。


「あっ!」


 コロンが小さく声をあげた瞬間、エリックの魔弾がコロンの右足を吹き飛ばす。コロンは突然、足を吹き飛ばされ、立つことも出来ず、腕を失い受け身を摂る事も出来ずに、そのまま、バタリと地面に倒れこむ。


「逃げなさい…二人とも逃げて!!!」


 コロンは猛烈な痛みがあるはずなのに、自分の身体の事などは気にせず、すぐに二人に逃げ出す様に声をあげる。


「やれ」


 しかし、エリックは非情にも魔族に二人を攻撃するように指示をする。すると、魔族はまるでハエでも払うかのように軽く二人を薙いだ。


「あっ」


 二人はまるで人形の様に軽々しく吹き飛ばされ、そしてボロ雑巾の様に床の上に投げ出される。


「いやぁぁぁぁぁ! テレジア!!! ミーシャ!!!」


 しかし、二人は返事を返さず、ピクピクと痙攣して、床に血糊が広がっていく。


「ハハハハハ! コロン嬢はあれだけ頑張ったというのに、この二人は手応えがありませんな!!」


 エリックは二人の姿を見て楽しそうに高笑いをあげる。


「エリックゥゥゥゥ!!!!!」


 私は、怒りで震える手を握り締め、鬼の様な形相でエリックを睨みつけて声をあげる。


「そうです! レイチェル嬢!! 怒りに身を任せるのです!!! そして、レベッカの魂を貪ったあの怪物を出すのです!!!」


「…レ、レイチェル… アレを解放してはダメ… もう一緒の世界で暮らせなくなるわ…」


 コロンが蚊の鳴くようなか細い声を上げながら、私を見上げる。


「コロン…ごめんなさい…もう、私、我慢できない…」


 コロンの姿も見ずに答えて、エリックに向き直る。


「もう…どうなってもいい…でも…全てを終わらせるわ…」


 私は誰にも聞こえないような小さな声で呟く。


 そして、顔を上げて、エリックを敵意に満ちた顔で指差す。


「エリックゥ!! 私は貴方のこれまでの壮絶な人生を見て、同情もしたし、憐みもしたわ、そして、出来る事なら手助けもしようと考えた… でも…」


 湧き上がる憎悪と憤怒の念に、少し言葉が詰まる。


「貴方は今までの人生で、何度も何度も世界の有様、世界の流れにその人生を踏みにじられてきた!!! だから、貴方が世界や神に対して怒りを憶えるのも当然だと思うわ!! でも、世界や神が貴方に行った事を、どうして、私や私の大切な友人に同じことをするのよ!!!」


 私の怒声が時計台の屋上に響き渡る。


「結局、貴方は誰かに縋りついて依存したり、身に降り掛かる不幸を、全て世界や神にせいにするだけで、その怒りや不満を自己の成長の糧にする事が出来なくて、関係ない私たちに八つ当たりしているだけの薄汚い人間よ!!! そんな事だから、貴方のいうあの御方とやらも、2000年もあって、まともに出会う事が出来なかったのよ!!!」


 私は怒りに任せて、エリックを口汚く罵った。


「くそぉぉぉ!! 小娘が!! 下手に出たらつけあがりよって!!! 許さん!! 許さんぞ!!」


「その言葉はこっちのセリフよ!!! こちらこそ貴方は許さないわ!! エリック!! 絶対に許さない!!」


 そして、私は私の魂の奥底に眠るアイツに語りかける。


「貴方…聞いているのでしょ? 出てきなさいよ… 貴方の望みは、私自らの意志で貴方を表に出して、私が怒りや憎悪に身を委ねて、自分自身を解放させることでしょ?」


 私の言葉にアイツが反応したのか、胸の奥にぞわぞわとした違和感が湧き上がる。


「そして、解放されるためには、悪意や悪性をもった人間の魂が必要なんでしょ? 食べさせてあげるわよ… とびっきりの者をね… 2000年も拗らせてきたヴィンテージ物よ…」


 次の瞬間、私の意志に答える様に、今までにない勢いで、背中のみならず、全身に泡立つ悪寒が走り、黒いオーラが、間欠泉の様に吹き出す。


「おぉ! これがあの時見た、力!! 神の座にも至る事の出来る存在!! さぁ!! 解放されるのです!!!」


 エリックはまるで神でも崇める様に、湧き上がるアイツを崇め始める。


「レイチェル!!!」


 後ろでオードリーの人工呼吸をしていたマルティナが声を上げる。


 私はその声に肩越しにゆっくりと振り返る。


「マルティナ…後の事は頼んだわね…」


 その声を掻き消す様に、アイツが現れた時の音が鳴り響く。



  ジャラ… ジャラ… ジャラジャラ… ジャラリ…ジャラリ…



 金属の鎖を引きずる音だ…


 その音に伴い、私から吹き出す黒い闇のオーラが、脈打つ臓器の様にうねり、塊を作っていく。その表面はまるで汚泥の中に無数の黒い蛆虫が這いずりまわるような、小さなうねりが全体を覆う。


 そして、その穢れた塊が、まるで逆再生でも見ているかのように、肉塊や臓物が元の収まるべき場所へ戻っていくように、人型を形作っていく。


「ハァァァァ」


 アイツは私の意思で呼び出されたことに歓喜の声を上げるかのように、髪、目、鼻、耳のない顔に赤い肉色の歯茎と気持ち悪いほど白い歯を持つ口から声を漏らす。


 ジャラ… ジャラ… ジャラジャラ… ジャラリ…ジャラリ…

 

 アイツは身体に残る首、両腕、左足の四本の鎖を引きずりながら、ゆっくりともたげていた身体を起こし、まるで獲物に舌なめずりするように、目の前にいる魔族と向き合う。


「さぁ…遠慮はいらないわ…思う存分やりなさい…」


 私はアイツに初めての命令をした。





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