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悪霊令嬢 あくりょうれいじょう ~とんでもないモノに憑りつかれている私は、そのまま異世界に転生してしまいました~  作者: にわとりぶらま


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第372話 原初の魔族

「皆さんは、魔族というものをご存じですか…」


 エリックは禍々しい像を眺めながら、私たちに問いかける。


「遥か昔に魔王と共にいた存在ね… 初代皇帝が魔王を打倒してから、この世界から魔族の存在が消え去ったと言われているわ… もはや、神話や伝承上の存在ね…」


 テレジアが皆に防御魔法を掛けながら、エリックの言葉に答える。


「そうです…その通りです! この世界に神は存在するのに、その敵対者である魔族が何故いないのか…私の計画を進める中で、その事実を知り困惑しました… だが、どんなことでも抜け道は存在するものです…」


 そう言いながらエリックは像を掲げる。


「もしかして、魔族を復活させようと思っているの!?」


 コロンが驚きの声を上げ、皆の表情が強張る。


「確かに初代皇帝によって、勇者と魔王の二元対立は解消され、魔王と勇者の存在と共に、魔族の存在も消失しました。確かに魔族の生き残りの一族は現在でも存続しておりますが、原初の魔族と比べれば、人間と大差はなく、使い物にならない… しかし!!」


 エリックは像を天高く掲げる。


「ここにまだ魔族が魔族として存続した時代に、その魔族を封印した像がある!! この封印を解けば原初の魔族が解放される!!」


「原初の魔族!? 何故、その様なものを!?」


 コロンが険しい顔をして声をあげる。その様子から、あれほどの魔法を放った侯爵令嬢のコロンでも恐れるほどの存在なのであろう。


「私は神の座に至る方法を捜していた… その方法の一つとして、この原初の魔族が封印された像を発見したのだ! まぁ、結局魔族では、神性を持たない為、神のいる天界に辿り着く事が出来ないと、後で分かったのだが… そこで、私はレイチェル嬢を見つけたのだ!」


 そう言って、エリックは私を指差す。


「原初の魔族を解放して、帝都を襲わせ、その際、惨殺されていく人々の恐怖や痛み、無為に殺される怒りや恨み、それら全ての悪感情を集約して、レイチェル嬢に注ぎ込み、彼女の持つ悪意の存在を復活させて、悪神として覚醒させようと考えていたのだ!!!」


「レ、レイチェルを悪神にするですって!? そんな事は許さないわ!!」


 私を背中で庇っているマルティナが声をあげる。


「先程、レイチェル嬢ご本人にも提案したのですが、断られてしまいましたよ… だが、私の目的を果たす為には、断られても留まることなどできない!! 無理やりにでも覚醒してもらうぞ!!」


 エリックはそう言うと、像を床に勢いよく叩きつける! そして、像が床に叩きつけられ、陶器の割れる様な音が鳴り響き、像が縦に真っ二つに割れる!


 すると、割れた像の中から、黒色と肉のピンク色の塊が、堰を切ったように溢れだしていく!!


「なんだと!? 本当に封印されていたのか!?」


 オードリーが目を大きく見開き声をあげる。


「テレジア!! 防御魔法を重ね掛けして!! ミーシャは対物理、対魔法の補助魔法を重ねて!! オードリーは防御主体で警戒して!!」


 コロンがすぐさま皆、出現しようとする原初の魔族に対して、警戒の指示を飛ばす。


「マルティナは、まさかの時にはレイチェルを連れて逃げなさい!!」


 コロンはマルティナと私に向き直って、厳しい表情でそう告げる。 


「そ、そんな!! 皆を置いて逃げる事なんて出来ないわ!!」


 私はマルティナが口を開く前に、コロンに反論する。


「ダメよ!! レイチェル!!」


 コロンは声を荒げ、私に言い聞かせるように、私の両肩を掴んでくる。


「よく聞いて、レイチェル… 確かに原初の魔族は強敵だと思うわ…でも、たった一匹…私たちが足止めしている間に、帝国の有力者が何とかしてくれるかも知れない… でも、貴方に憑りついている者まで、解放されてしまったら、もう手の施しようがないのよ!!」


 コロンのその言葉が私の胸にずしりと響く。私は言わば爆発する恐れのある危険物の様な物… つまり、この場にいては皆の足手まといになるという事なのだ…


 私は、何もできない自分の無力さに、拳を握り締めて顔を伏せる。


「コロン…こんな事を言うのは何だけど… 私もレイチェルは今すぐ逃げ出して、応援を呼んで来た方がいいと思うのだけど…」


 マルティナも心苦しい思いをしながら、コロンにそんな提案を述べる。私はその言葉にある提案を思いついて頭をあげる。


「ディーバ先生! ディーバ先生だわ!! ディーバ先生も今、魔力が枯渇気味で大変だけど、呼び出せば何とかしてくれるかも!!」


 だが、私の提案に、コロンもマルティナも顔を顰める。


「ダメよ…レイチェル… レイチェルは以前、胸に刻まれた魔法陣の事について話してくれたわよね… レイチェルにもしもの時があれば、ディーバ先生はその命を鎖に変えて、あの化け物を拘束して封印する、最終の安全装置になっておられると… その先生が貴方のもしもの時より、先に命を落としてしまわれたら、最終安全装置が無くなるわ…」


 コロンがディーバ先生を私の保険の様に告げる。それぐらいに、今は余裕がなく緊迫した状態であることが、コロンのその非常な言葉から気づかされた。


「では…ディーバ先生に連絡して… 応援を呼ぶぐらいならば…」


 私がそう声をあげた時、エリックの声が被さるように響く。


「逃がしもしませんし、連絡もさせませんよ!!」


 そう言って、エリックが手をあげると、時計台の屋上全体に、シャボン玉の様に虹色に映る膜が展開され、私たちの直ぐ近くを、魔弾が通り抜け、屋上の出入口に命中して爆発を起こす。


「で、出入口が!!」


「私でも、こんな事ぐらいは出来るのですよ…さて、そろそろ原初の魔族の受肉が終わって、その姿を現してくれるようですよ」


 私はエリックのその言葉に振り返る。


「な、なに!これ!! これが原初の魔族…!!」


 私はこの目に映った原初の魔族の姿に、驚愕のあまり、思わず息が詰まる。

 

 私は今まで、実際に魔族の姿など見たことは無い。前世のゲームや漫画などに置いて、敵キャラとして描かれるものか、あるいは、乙女ゲームの中に出てくる攻略キャラとして、褐色の肌に蝙蝠の羽と角があるほとんど人間の姿で描かれていた。


 だが、目の前にいる魔族は全く異なる。まずサイズからして、人間代などはなく、ゴリラや熊を大きく上回る巨体、人の三倍、いや4倍以上はあるだろうか、巨人と言っていいサイズである。


 また、その体格もまるで柱の様に太い手足に、はち切れんばかりの筋肉が盛り上がっている。私だと指先の力だけで潰されてしまいそうである。


 そして、まるで仁王像のように憤怒を示したその形相、サーベルタイガーの様な長い牙が口から上下にはみ出しており、突き刺す為に備え付けたような角が頭から一対生えている。また、両目は見る者すべてに恐怖を刻み込むような、血走った目をしており、慈悲など一切ないように見える。


「こ、こんなの…人間が相手できるような存在ではないわ…」


 あまりの恐ろしい姿に、正直な感想が口から零れる。


「素晴らしい!! 素晴らしいぞ!!! 想像以上の姿ではないか!!! これなら十分、帝都の人々から恐怖の感情が集められる!!」


 原初の魔族の姿に、エリックはこれ以上ない興奮の表情を見せて、高笑いのような声をあげた。




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