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悪霊令嬢 あくりょうれいじょう ~とんでもないモノに憑りつかれている私は、そのまま異世界に転生してしまいました~  作者: にわとりぶらま


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第368話 時計台再び

 時計台を見上げた私は、決意を固めて、再び足を時計台へと進める。


 前回、時計台に来た時は、ミーシャの自殺未遂の時で、その時は、私は時計台の下で、時計台を見上げていたので、中の構造がどんなものなのかが分からない。


 だが、そんな私に配慮しているのか、時計台に近づくと、その入口の扉が開かれた状態が目に入る。


「あそこから入ってこいと言う訳ね…」


 私はそう呟くと、エリックの誘いに乗る様に、時計台の入口の扉へと足を進める。扉に近づくと、中から重く規則的な金属音が響いてくる。四方向すべてから見える時計の針を動かす歯車の音なのであろう。


 私はゴクリと唾を呑み込み、扉の中に足を踏み入れる。


 時計台の中に入ると、規則的に回る歯車の音が、より一層大きく聞こえる。この騒音で、不意に近づく人影の物音が掻き消されてしまうかも知れないが、私は全神経を尖らせて、時計台の中を進んでいく。そして、暫く進んでから、時計台の中を見上げると、全体的に暗い内部であるが、所々にある、採光の為の窓から、光が取り込まれており、日の傾いた赤い夕陽が所々を赤く染め上げて、照らし出している。


 私は、この時計台の屋上まで続くむき出しの階段を見つけて、安全の為に手すりに手を添えながら、その金属製の段板に足を乗せる。すると、靴の踵が金属の段板に当たり、カンという音を立てる。


 私はその音に次の段板には慎重に足を乗せるが、それでも鈍い金属音が鳴る。しかし、そんなに目立つ音ではない。私はふぅとため息をつくと、時計台の上を見上げながら、階段を昇っていく。


 私が足音を立てていて、人の近づく物音を聞き取れないとしても、これだけ見通しのつくむき出しの階段であれば、不意に襲われる心配はないであろう。私は安心して階段を昇っていく。


 所々、階段の横に採光の為の窓があるが、そこからの景色は、大きく立ち上る入道雲の陰に滲む夕日が沈んで隠れていく様子が見える。


 子供の頃、沈む夕日の美しさに、思わず息を飲んで、時間を忘れて眺めていた記憶があるが、その夕日が沈み切った後、空が宵闇に覆われ始めて、帰宅時間を過ぎた事に気が付いて慌てて家に帰った記憶がある。


 今の私はあの時の門限を守らなくてはならない子供ではないが、エリックとの話し合いで、時間を掛け過ぎてしまっては、私の部屋で待つエマにいらぬ心配を掛けてしまう。そう思うと、私は夕日を眺めるのは辞めて、先程より、速足で足音を気にせずに階段を昇っていく。


 そして、少し逸る気持ちで、息を弾ませながら階段を昇っていくと、目的地である屋上に通じる扉が見えてくる。入口と同じように、ご丁寧にここに来いと言わんばかりに扉は開けてある。


 これは、エリックの何かの作戦なのであろうか? それとも私などどうにでもできるという余裕なのであろうか…


 私はそんな事を考えながら、最後の踊り場に辿り着く。そこには開け放たれた扉がある。


 その扉の向こう側には時計台の屋上が広がり、私を呼び出したエリックがいるはずだ。


 私は覚悟を決めて、その扉を潜り抜ける。


 すると、地上とは異なり、いきなり風が吹き付け、私の身体を揺らす。その風に髪が煽られ、一時視界を奪われるが、風は一時的な物なので、すぐにいつもの髪型に戻っていく。そして、目を開けると、赤く滲む帝都の街並みを移す地平線に、日が沈んで群青色に染まる空が広がり、屋上の端には、その赤く滲む帝都の街並みを見下ろすエリックの姿があった。


 エリックは私が到着したことなど、すぐに分かっていると思っていた。しかし、私が到着しても、気づきもしないように、ずっと帝都の街並みを見下ろしている。


 いつまでも、私の存在に気が付かないエリックに、痺れを切らして、私の方からエリックに声を掛ける。


「エリック!!」


 するとエリックはピクリと反応して、帝都の街並みを眺めるのを惜しむように、ゆっくりと私に振り返ってくる。


「やぁ、レイチェル嬢、お早いお着きですな」


 エリックは不敵な笑みを浮かべなら、私に話しかけてくる。


「貴方があんな呼び出しをしたからここへ来たのよ! 私も暇じゃないの! だから、早く用事を済ませたいのよ!」


 時々煽ってくる風に声が掻き消されないように、私は大きな声でエリックに告げる。


「左様でございますか、これは失礼致しました。我が女神、レイチェル嬢…」


 エリックはそう言って、恭しく一礼してくる。本人はそのつもりで行っているのかどうかは分からないが、エリックの恭しい所作が慇懃無礼な感じがして、少し私の勘に触る。また、我が女神の下りが、カイレルのマリンクリン姿のマリティナに言った言葉を思い出して、少し気持ち悪さも感じた。


「所で、私のプレゼントはご覧いただいたでしょうか?」


 エリックは腕を大きく広げて、さも大層なものを送ったかのような仕草をする。


 エリックのプレゼント…今まで二回、黒薔薇をメッセージカード付で送られている。しかし、エリックはその事を言っているのではない。エリックのご覧いただいたと言う言葉から、エリックのプレゼントとは、あのエリックの人生の追体験の事で間違いないだろう。


「えぇ、確かに見させてもらったわ… 強引に、そして強制的にだけどね…」


 そう言って、私はエリックを睨みつける。


「そうですか! ちゃんと御覧頂きましたか!! どう思いました!? 何を感じました!? どんな考えに至りました!?」


 エリックは興奮気味に目を見開いて、嬉しそうに歓喜の声で尋ねてくる。エリックのその姿に私は少し狂気を感じた。


「貴方の人生は確かに、不幸と絶望の連続だったわ… そのあまりにも壮絶で悲惨な人生に、気の毒にも思ったし、憐れにも思ったわ… でも、それが何!? それが私に何が関係あるっていうの!? 私に同情して欲しいの? 憐れんで欲しいの? 慰めて欲しいの? エリック! 一体、貴方の目的はなんだというの!?」


 私はエリックの狂気に気圧されないように、気丈にふるまって声を荒げて返す。


「私の目的ですか? 私の目的は招待状に書いた通りですが…」


 エリックは少し残念そうに答える。


「招待状に書かれていた通り?」


 私はメッセージカードの内容を思い出す。確か、神がなんとか書かれていたと記憶しているが、暗喩か比喩表現だと考えていた。


「私の目的は…神の座に至ることです!!」


 エリックはそう断言した。



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