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第七話 異世界魔法交流

 ────と。

 そんな紆余曲折があったが、一度拳を交えたことですっかり意気投合したアズリアとさちよが、吹き飛ばされたミッキュを連れて帰ってきたのだ。


 ほのかとミッキュは互いの姿を確認すると。

 吸い寄せられるかのようにミッキュはさちよさんの手を離れ、ほのかもユメリアやエルたちの前に出て接近していき、そして感動の再会……とはいくハズもなく。

 

「ふっざけるんじゃねえっキュよこの洗濯板あああ!」

「……あ"あ"ン?元はと言えばあんたが下衆いからでしょうがこの下衆コットっ!」

「元はと言うならほのかがさちよの胸を揉んだのが元凶なんだっキュ!……大体ほのかの胸はエグれすぎててアズリアの魔法でも修正不能だったキュ!」

「あーっ!それは言っちゃ駄目なことでしょミッキュ⁉︎」


 二人の掴み合いと罵り合いが始まっていく。

 ミッキュはその小さい身体でほのかの頬を摘み上げて横に引っ張っていくし、ほのかも負けじと両手でミッキュの緑色のぬいぐるみボディを掴むと横にうにょーんと引き伸ばしていく。


 だが、(はた)から見ればケンカしているように見える二人……いや正確には一人と一匹だが。

 何しろ、ユーノ他三人が加わっていたとはいえほのかが本気でミッキュをぶっ飛ばした結果がアレだったのだ。ほのかが本気でケンカしたなら、ミッキュがあの程度で済むわけがないからだ。

 

 さすがに見知らぬ世界で離れ離れになったことが互いに心配だったのだろう、これでもほのかとミッキュは破魔町で様々な修羅場を一緒に潜り抜けてきた「相棒」なのだから。


 アズリアとさちよさんはそんなほのかとミッキュをまるで子供を見守る親の目線でその様子を眺めていたが。

 さちよさんが両手をパン、パンと鳴らしてから、取っ組み合いを続けていたほのかとミッキュの襟首をひょいと掴み、一人と一匹を離していくと。


「がっはっは!元気がいいのは構わないけどそこまでだよ二人とも、せっかくアタシが時空を跨いでアンタらを迎えに来てくれたってのに、その二人がケンカしててどうするんだい?」

「……いや、さちよさん。迎えに来てくれたのは嬉しいんだけど、わたしにはアズリアお姉さまにバストを大きくしてもらう目的が」


 時空を超えてまで、まだ「胸を大きくする」当初からの目的を見失っていなかったほのかは、さちよに襟を摘まれて足が宙に浮いた体勢のままアズリアを指差すが。

 そんなほのかにさちよさんがこう告げたのだ。


「……ほのか。あんたさぁ、自分が使う魔法がどんな特性を持ってるのかって事すら、おっぱいなんかに気を取られて忘れちまったってのかい?」

「え?……わたしの、魔法……ああっ⁉︎」


 ほのかの使う魔法、記憶(メモリー)とは。

 一度自分がこの目で見た魔法や魔術を文字通り記憶(コピー)し、記憶を打ち消すまでは使用できるという魔法だ。

 それだけを聞くと魔法戦闘において最強に思えるかもしれないが、ほのか自身の魔力量が少ないためにストックできる数は限られるし、せっかく記憶しても魔力量の問題で行使出来ないということも多々あるが。


「……ほのかの記憶(メモリー)で、アズリアのおっぱいボインボイン魔法を覚えて帰れるっキュね!そうすれば……」

「いつでもわたし、バストがメロンになれるっ!」

「その通りっキュ!」


 希望の光が見えたほのかが、目をキラキラと輝かせながら握った拳を大きく天に突き上げると。

 さちよさんが、あまり状況が飲み込めてないアズリアの肩を、いつものようにがはは!と笑いながらポン、と叩くと。


「というわけだアズリアっ。もし使うのに差し支えがないなら、ほのかのヤツに胸がおっきくなる魔法とやらを使ってみせてくれないかね?……実はアタシも興味があってさ」


 破魔町の魔法少女の間では、胸のサイズを巨大化する効果の魔法は存在しない……今のところ。

 ほのかは一度、さちよさんの使用するあらゆる身体能力を上昇・倍化させる魔法「(ダブル)」を記憶(メモリー)して試したことがある。

 もちろん、倍化することでバストサイズを巨大化出来ないか、をだ。


 結果は失敗だった。

 ミッキュに「ゼロに何をかけてもゼロっキュ」と言われ、怒りのあまり成層圏までミッキュを吹き飛ばして灰にしかけた可愛いエピソードがあったのだが。


 だからさちよさんも、まだ自分が強化しきれていない「(ダブル)」の効果を、アズリアの魔術文(ルーン)字を見て学ぶことでさらに増強出来ないかを無意識のうちに考えていたのだ。

 恐るべきは、破魔町最強の魔法少女さちよ。


 そんな異世界の魔法少女二人に注目されながら、アズリアは気恥ずかしそうに取り出した短剣(ダガー)で指を傷つける。


「え?ね、ねえアズリアお姉さまっ?な、何で今指切ったの?」

「あれ、前に使った時もほのかの胸に書いてあげなかったっけ?アタシの魔術文(ルーン)字はね……自分の血で魔術文(ルーン)字を書かないと、魔力を受け付けないのさ」

「そ、そうなんだ……メモメモっ」


 手慣れた動作でほのかの胸に血文字を刻んでいくアズリアに質問を浴びせるほのか。

 そんな彼女に、動作を止めることなく質問に答えていくアズリアは、その魔術文(ルーン)字に魔力を送り込むための力ある言葉(ワード)を口にする。


「我、生命の根源たる母なる水よ────lagu(ラーグ)


 魔術文(ルーン)字の魔力が注ぎ込まれたほのかの胸が。


「……う、うわあああっ、きたきたきたあああ!」


 以前、破魔町に召喚されたアズリアが使用した時のようにみるみるうちに膨らみを増していき、中学生のほのかに不釣り合いなほどの豊満なバストとなっていく。

 

「凄いッキュ!ほのかの洗濯板がぶるんぶるんのメロンに、いやたぷんたぷんなスイカになっていくっキュ!奇跡っキュ!ミラクルっキュ!あめいじんぐだっキュ!」

「………………ミッキュ言い過ぎ、でも許す」


 大層喜んでくれているほのかを見て、あまりの喜びっぷりに、本来の目的である「lagu(ラーグ)」の魔術文(ルーン)字を記憶(メモリー)することを忘れていないかを懸念していたが。


 アズリアは気付いていなかったのだ。

 ……その背後で、すっかり豊満なおっぱいを抱えていたほのかとアズリアを凝視する八つの視線を。

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