廃墟の病院。
おいどんは廃墟にやって来た。元は病院だったその建物は古びていて当時の様子を想像する事すら難しい。
おいどんは彼女の手をぎゅっと握りしめた。
「ねえ。赤井狐あかいきつね君って結構怖がりなんだね。可愛い」
「こ、怖がって何か微塵もないし」
「ふふっ。そうだね」
彼女の緑狸みどりたぬきがおいどんをどこか温かい目で見つめる。
「でもなんだか廃墟に入るなんていけないことをしているみたいでどきどきするでごわす」
「別にいけない事なんてしてないよ」
当然のごとく、罪悪感の欠片もないような言い方で彼女が言った。
「何か出てきそうでごわす」
「そりゃあ出て来るでしょ。これだけ雰囲気あれば」
「それは困るでごわす」
「いや、出て来てくれなきゃ逆に困るけど……」
「どうしてそんな事を言うでごわす。緑狸は災難に巻き込まれたいでごわすか?」
「もう、赤井狐君ってやっぱりどこか天然入っているわよね」
そんな会話をしながら廃墟を進んで行ったら、お化けや、ゾンビ、飛んでくる首、手術室で生き返る人間が出てきた。
「何でごわす。何で廃墟に来ただけでこんな恐ろしい目に逢わなければならないでごわすか」
「そりゃあそうだよ。というかそれ目的でここに来たんじゃん。私達。だってここ病院を改装したお化け屋敷だよ」