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異世界でも殺し屋さん?  作者: なきもち
23/42

25話

よろしくお願いします







「ッゴーーーーーーーーーーーー!」


激しい男の声とともに開始される賭けのゲーム。サキが出ようと思ったのは腕相撲らしき競技だった。


というかこれまんま腕相撲だと思うんだけど。この世界にも腕相撲の文化なんてあるのかな?


他にも数種類の賭け項目があったが他は力比べではなく、カードを使ったカード並べや何かを積み上げて高さを競う賭け事。他にも前の世界に馴染み深い賭け事が多かった。

サキは知らないが、これらは全て元の世界の競技を召喚された勇者から伝わった競技であるためこの世界に馴染みがないサキでもしっていたのだ。


「あーーーーーーーーーっと!ここで挑戦者のギル選手ダウンー!惜しいところまでいったのですが、終盤までスタミナが持たなかったかー!?」


ステージを見るとそこには先程話を聞かせてくれた男が四つん這いで涙を流しているところだった。


ギルっていうのか。ただの賭け事であそこまで醜態さらすかな?訳がわからない。


しかし、ギルからは多少の殺気が出ていたため少しだけ気に留めておこうと思った。ただの賭け事で殺意を漏らすことが不思議だったからだ。


「他に挑戦者はいないのかーーーー!?」


視界の男が叫ぶと腕相撲で連勝しているという冒険者の男がガッツポーズを決める。

その腕には黄金に輝くリングがはめられておりより一層自分の力を見せつけているように見えた。


「フン!俺様の腕力に叶う相手が他にいる訳ないだろ?」


男は更に両腕を掲げ周りにアピールする。

そこへガイアに変装したサキが手を挙げた。

ギャラリーはどよめき始める。


「いや………。今回もきっと賭け一団の勝ちさ」


「いーや!俺は財産をあの兄ちゃんにかけるぜ!筋肉もありそうだからな!」


「おっとー!?ここで新たな挑戦者の登場だー!!」


司会に案内されステージに上がるとサキは羽織っていたマントを脱ぐ。


「なんということでしょう!我らが『豪腕」と同じくらいの体格の男がきましたー!!これは見ものですね!」


「わーーーー!」


一斉にギャラリーが熱気を帯びる。

もちろん綿と糸でごまかして作っているものだがインパクトは十分与えることができたようだ。


「先ほどのギル選手は惜しくも二位でしたが果たして一位に輝くことができるのかぁ!?」


フレイアが欲しい景品は二位の景品だっけ?………。まあ一位を取ってもギルってひとと交換交渉するのもいいかな。なんか気になるし。


サキは早速用意された椅子に腰掛けるがそこで何か違和感を感じた。


なんだろう?力を出そうとすると何かに力を座れるような………。脱力しそうになる。


サキにとってこの体験は初めてだったが、ある一定の強さを持つ冒険者クラスならばわかる程度の細工がしてあるようだった。

その椅子には中級のデバフがかかっており、座ったものは十分な力が発揮されないようになっているのだ。もちろんそんなことを知る余地も無いサキは何かの魔法か?と思う程度でそのまま腕をあげると正面の『豪腕』と呼ばれる男と見つめ合う。


「よう、お前みたいな屈強そうな男の噂は聞いたことねーが冒険者か?」


「この街にはたまたま寄っただけで冒険者はしていない。が、『豪腕』と聞いて俺も黙っちゃ居られなくなってな」


サキは巧みに声を操り男を誘導する。

近くにいた女神も息を呑む。しかしアクエルは何かに気づくとサキの座っている椅子の下へ飛ぶ。


「やっぱり」


その言葉に反応したのはフレイアとサキだ。サキの目線はそのまま豪腕を見続けるが、意識はアクエルとフレイアへ向ける。


「どうしたのアクエル?早くしないと始めっちゃうよ~~」


「ううん、この試合ユキ様に振りに動くように細工してあるわ」


「!?」


やっぱりか。


サキに理解できない事象は基本的に魔法だろうとは思っていた。しかしこの状況でイカサマだといったところであれこれ言い訳を付けられてもみ消されるだろう。


「この術式は中級のデバフ効果をもたらす魔法が込められているものです!ユキ様………。大丈夫なのでしょうか?」


サキは言葉なく笑みで返す。その笑みには余裕すら感じられた。

アクエルは「心配は無用のようですね」というとギャラリーに混ざり始めた。


「なぁに一人笑いしてやがる?向かい合って改めて俺の強さに驚いたってところか?」


司会の男は空気を読んでいるのかギャラリーを盛り上げる事に必死である。

ギャラリーもまた賭けの金額で盛り上がっていた。

サキは男にも笑みを浮かべながら小声で返す。


「イカサマしないと勝てないような男に俺が負けるわけないだろう?」


その途端司会の男は額に汗をかき男はサキの態度が気に食わなかったのか顔を真っ赤にする。

しかしそこにはベテランと言うべきか直ぐに落ち着きを取り戻すと豪快に笑い出した。


「ッハッハハハハハハハハ!今からお前を倒して俺が最強ってことを思い知らせてやろうじゃねえか!おい、始めろ!」


その声にハットした司会者の男は汗を服とスタートの準備をする。

ここで術式を発動させたのか司会の男は小声で何かを唱えた。しかしサキは顔色一つ変えずに腕を組む。

司会の男は不思議そうな顔をしていたが直ぐに立て直すとギャラリーを落ち着かせる。


「行きます!この賭けどちらが勝つのかー!みなさん入札はすみましたかー!?」


すると周りから大歓声が送られた。


「よし!両者共用意はいいかー!レディ!」


司会の男は手元のベルのような道具を思い切り叩くと、まるでレスリング開始時のようなあの音が響きわたった。

その瞬間男の腕が一瞬発行する。もちろんサキは見逃さないが、魔法やスキルが発動してもどうすることもできなかった。

サキも全力は出していなかったもののデバフの効果と相まってそこそこ力が出ていた。

両者一歩も譲らないといった表情で腕に力を込める。

男はスキルを発動下にも関わらずサキの腕が働かないことに苛立ちと驚きを隠せずにいた。


「ユキ様!この男が発動したスキルは身体強化のスキルです!」


アクエルがスキルについて説明してくれるがサキは説明されてもという顔で返す。

しかし試合の途中でギャラリーを見たことに男は更に苛立ちを覚えた。


スキルを使い呪術を使ってこれぐらいか………。結構パワーは出るけど……本当にB級の冒険者?

それともこいつが今までしてたって線も…………。


サキは腕相撲をしつつ男に催眠をかける。もちろん周りからは腕相撲をしているようにしか見えない。

すると男の腕から次第に力が抜けていくがサキは自分が負けそうなところまで腕を持っていき戦況を操りつつ催眠をかけ続ける。

そのまま小声で男に言った。


「そのまま演技を続けて俺の質問に答えろ」


すると男は先程と同じように腕に力を入れつつサキの目を見る。しかしその目はどこか虚ろだ。

急に力が入ったためかサキの腕が一瞬テーブルにつきそうになるがなんとか持ち直した。


「君って本当にB級の冒険者?それにしてはそこまで腕力ないと思うんだけど」


すると男もサキに合わせて小声で答える。


「いや、今まではデバフの道具で小細工をし賭け事をしたり他の冒険者がクエストを完了させたところそいつらを始末し戦果を横取りしていた」


やはりB級の実力はなかったようだ。


本当にB級ならシロの3分の1くらいの戦力はあっても良さそうだったしねえ。


「ありがとう、もういいよ」


その言葉を合図に暗示は解け男の目にも自我が宿り始める。しかし一瞬力が抜けたためその間にサキは難なく男の腕を倒す。

会場は騒然とした。先程まで負けなしの男が最後はあっさり倒されてしまったからだ。

しかし一番驚いていたのは司会者と男本人だった。

司会者はバトル中は少し離れるため二人が何かを話していたとは知らず呪術とスキルで勝てるとふんでいた。しかし結果は男が突然負けてしまった。

そして男は催眠によって前後の記憶が曖昧だったため自分が何故負けたのかすら理解できていなかったのだ。


「おい、これは俺の勝利でいいのか?」


サキは司会の男にそう尋ねると司会はハッと我に戻り勝利の宣言をしながら先程と同じベルをならす。


「しょ、勝者………。ガイア選手!ここで『豪腕』破れるーーーーーーーー!」


ワーーーーーーーー!

ウオーーーーーーーー!俺のかねがーーーーーーー!

周りからは声援が送られたがそれを菊に耐えなかった男はサキの肩を掴む。


「お、おいここで騒ぎはよしてくれよ」


司会の男は問題を起こされてはこれから困ると思い焦って男を止める。


「おい、ガイアとかいったか?ちょっと待てよ」


サキはめんどくさそうに振り向く。

もしここで騒ぎを起こしても目立つのはガイアであってサキではない。むしろそのほうが好都合だと思った。

そう考えていたサキだが一瞬で思考が変わった。

男から読み取った感情。それはサカキがサキに向けられていた感情『愛』にそっくりだったからである。


「おい、俺は商品を頂いたらさっさと帰りたいんだ。離せ!」


サキは嫌な予感がしたためそのまま男を振りほどき司会者の方へ早歩きで向かう。


「おい司会者、優勝賞品の金を早くよこせ!それともこのまま面倒事に巻き込んでやろうか?」


すると司会の男は納得したように直ぐに賞金を準備するとサキに渡した。

その間も男はずっとサキに絡んできていたが尽く無視されていた。

サキは賞金を受け取ると早足で会場を後にした。

その間の女神達は何が起こっていたのか分からず宿屋の方へ戻っていった。

サキが去った後男はギャラリーに慰めの言葉をかけられていたが賭けに負けた客にはひどい言葉を浴びせられていた。

もちろんサキは興味がなく振り向くこともしなかった。





しばらくして人ごみから抜けたサキは先ほどのギルという男を探しに出た。

街の端にあるスラム街のような路地が入り組んでいるところに入った時なんとなく男と同じような気配を感じたため入念に探すことにした。

その路地は建設途中の家や崩壊しかけた倉庫など元いた世界のスラム街と似ていた為どこか懐かしさを感じた。


昔スラムに行ってサカキに色んな話を聞かされたっけ………。


そんな他愛もない事を思い出していると路地を曲がったところに丁度探していた後ろ姿を見つけた。


「あ、あんたは?」


「見つけた」


するとサキは何も言わずに先ほどの賞品をギルに渡す。しかし意図を理解できなかったギルには突然お金をくれた男にしか見えないのか半信半疑といった顔でサキの様子を伺っていた。

よく見るとギルの衣装は先ほどとは違いスス汚れの目立つ灰色の服になっており顔もどこか幸薄げだった。


「さっきの景品なんだけど、二位の景品と一位の景品を交換して欲しくてね」


ギルは一層警戒心を強くする。

あたりまえだ。賞金とただの子供向けの人形。それを交換して欲しい等怪しいことこの上ない。

仕方ないと思ったサキはまず賞金を足元に置き宿屋へ戻ることにした。

普通ならばこのような行動を取っても金だけ取られて終わりだろう。

しかしサキの目にギルはただの男には映らなかった。

警戒の仕方、相手に隙を見せない足の動き、相手の呼吸に合わせての移動。

これらは少なからず訓練したものの動きだと直ぐにわかった。そしてあの時の殺気………。そんな男が大衆の面前であんな醜態おを晒すとは考えにくかったのだ。

ならばやることは一つだ。


「信用してもらえないのならばまずその金をあなたに渡そう。そして街の宿ヤドリギに泊まってる私の知人、ユキという商人に人形を渡してやって欲しい。これは私の善意であって深い意味はない」


それだけ言い残しサキはヤドリギへ向かった。

その途中も男から意識をそらさずに動きを伺っていたが、ギルは最後まで油断のない動きでサキを見送っていた。


本当に訓練された動き。でもどこかお粗末………。

しっかり訓練すればさっきの男も倒せた気がするけど。


サキはどう考えつつボロボロの空家で変装を解きなに食わぬ顔でヤドリギに戻った。








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