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異世界でも殺し屋さん?  作者: なきもち
16/42

17話18話

2話分投稿です。

よろしくお願いします。





日も暮れてきた頃森の中でも開けた場所に出た。

開けた場所だし今日はここで野宿かな?………。まあでもその前に。


サキ達の前には複数の気配が密集していた。

魔物の群れである。

しかし魔物の群れと言ってもただの群れではなかった。

その魔物の群れはひたすら白、白、白。

白い綿で包まれていた。

「羊?」

サキは思わず口に出す。

そう、その魔物の群れとはそう見ても羊であり、それが群れとしてわしゃわしゃとくっつきあっていたのだ。


「あ!この魔物はシープリーと言いまして、大変貴重な魔物なんです!」


フレイアが説明するがイマイチ伝わってこない。


「えっとですね、シープリーは人間や亜人がよく衣類に使ったりするので、絶滅しかけている魔物なんですよ。それに………」


アクエルは少し間をおく。


「それに?」


「触り心地がとっても最高なんです~~~~!」


アクエルの補足でなんとなく理解したが、二人の輝く瞳を見てサキは少し引いた。

目を輝かせるだけならまだしも、流石に自分の服をすりすりしながらヨダレをたらしそうな女神を見て何も思わない者はいない。

二人の女神はそれに気づかずスリーピーの群れに釘付けだ。


まあ、衣類は欲しいし一応採取しておくのもいいかな。念の為に。


「じゃあ採ろうか?」

「「え?!」」

「だから、綿を採ろうか?」

二人の目はより一層輝きを増した。

「「はい!!」」

今までで一番いい返事だった。


地球の羊と同じような毛刈りならいいんだけど、あれってどう見ても簡単には剥がせないよねえ。


サキが悩むのも無理はなかった。スリーピーの絶滅の理由はその獰猛さ故、殺さないと毛を採取出来ないのだそうだ。

フレイアは無理しなくても大丈夫ですよとは言っているものの、目が大丈夫じゃないと訴えてくる。

ここまで素直な心が伝わって来るって滅多にない気もするけど……。


更に、スリーピーの数匹はこちらに気づき警戒心をむき出しにして睨んでいるためどうしたものかと考えていたのだ。


「ユキ様」


至妙な面持ちでアクエルが声をかけてくる。


「うん?」


「彼らの綿はすごく材質がいいことはお教えしたとおりなのですが、攻撃を加えたときに少しでも血が滲んでしまうと、浸透性が凄すぎて真っ赤になってしまうのでお気をつけください。なので無理はしなくても大丈夫ですから」


なるほど。スリーピーは無力化するには難しいため血を流さないように倒し綿を採取することが前提か………。


アクエルの説明を聞いたサキはスリーピーの群れに向かって魔法を発動し始める。


イメージ……………。今更だけど詠唱とかわからないんだよねえ。まあイメージで使えるなら必要ないかな?


すると魔法はサキのイメージどおりに発動する。


スリーピーの群れを囲むように氷の牢が完成する。

牢と言っても四角い牢ではない。細い氷が網のように入り組みスリーピー達を逃がさないようにしただけだが、よく見ると網の付け根周りの土が凍っており近づかせない仕組みになっていた。


結構イメージ通りにできたかな?……。


「無詠唱で魔法を使うって…………。ユキ様は一体何者なのかしら」


「私に聞かれてもー……。それにこんな高度な魔法見たことないよね~。一つ分かることはあの人といれば私達は以前のように利用されたり人間たちに捕まる確率は低いってことだよね」


「でも知りたいことを知ったらもう用済みで殺しますってなるんじゃないかしら………?」


「だからそうならないように頑張るんじゃない!それに………」


「結構優しい顔もできるし……。悪い人じゃないんじゃないかなって」


アクエルは困惑していた。

魔法とはイメージである。しかしイメージしたもの全てがそのまま再現されるわけではない。

自分の得意な属性魔法をスキルとして習得してようやく使えるものなのだ。

つまり火球というスキルを習得すればイメージではなく、そのまま魔法を唱え魔力を注ぐだけで発動するのが一般的な魔法。

サキには説明していないが、女神達の持つスキルは特別なためイメージでもその魔法を想像できるというだけで普通の人間にこのような魔法を使うことは不可能である。


まあ可能にするといえば……。魔法創造のスキルを持っている勇者くらいよね。


ここまでの魔法を使ってもサキに魔力枯渇の症状は見られない。

流石に女神二人分のステータスが加算されればそう簡単に魔力は減らないわよね……。私達もしかしてとんでもないことやっちゃったんじゃ…………。


アクエルが考え事にふけっていると突然前方から声が響く。


『ンギンメエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!』


え?!


「それに………さ、私ユキ様のことそのへんの人間と同じって思えない。もしかしたら私と――――」


フレイアの言葉をかき消しながらその声は更に続く。


『ンギメアアアアア!!』


何度も何度も悲鳴が響く中アクエルはフレイアが最後に何を行ったのか聞き取れずにいた。


「え?今なんて言ったの?」


「な、なんでもないわ!それよりさっきから耳障りな子の声はまさか!?」


二人はサキのいる方に目を向けるとそこには驚きの光景が広がっていた。

獰猛で毛刈りをするのが難しいと言われるスリーピーが全て倒れているのだ。


「え?」


フレイアが間抜けな声を出したままスリーピーの方を凝視する。

しかしアクエルは焦った素振りでサキの方へと飛び出した。


「ちょっとアクエル!?」


フレイアも慌てて追いかけるとそこにはさらに信じられない光景があった。

すべてのsるイーピーはピクピクと痙攣しながらその場に気絶しており、死んだものは一体もいなかったのだ。


「全員気絶………?」


先程よりは安心した様子のアクエルだが、まだ信じられないと言う顔をしていた。

毛刈りをしようとしているだけなのに慌てて飛んできた二人を疑問に思ったサキは声をかける。


「二人とも慌ててどうしたの?」


「こ、これは全て生きているんですか?」


アクエルは恐る恐る聞く。


「うん。血が出たら綿が汚れるって言ってたからね。それなら気絶させちゃえば毛刈りも楽かなって思ったんだけど………」


「…………私達、ユキ様を甘く見すぎていたようね」


「同感だよ……」


サキは二人を尻目に魔法の訓練を含めて毛刈りをしようと思った。

普通であればナイフで毛の根元をきれいに剃っていくのだがあえてそうはしない。

まずナイフの刃先を囲むように水魔法を使う。すると水は薄い膜をつくり刃先を包み込む。

そしてさらにその水を高圧縮し回転を加えるイメージで魔力を注ぎ込む。


こんなもんかな?………。初めてだからうまくいくかわからないけど。


ナイフの切れ味は跳ね上がっていた。高圧縮された水が回転しているためナイフに力をいれなくてもするすると毛刈りができるのだ。

サキはこの魔法に名前を付けることにした。


まあ名前あったほうがイメージも固定しやすそうだしね。


その魔法を『水刃』と呼ぶことにし、呆然と見ている女神達を気にすることなくすべての毛刈りを完了させた。





すべての毛刈りを完了させたサキは水魔法を発動させスリーピー達に水をかける。

するとビクン!と体を動かし次々とスリーピー達は目を覚ます。


「あわわわわ。大丈夫なんですかこれ」


するとスリーピー達はサキとは反対方向へ群れ移動を開始しどこかへと行ってしまった。


「さてと」


サキは改めて自分で剃った毛を見る。大型貨物トラックほどの量がありそれらを水で濡らし火魔法で乾かす。

女神達は綺麗になった綿を見て目を輝かせる。


「す、すごいですけどこんな量どうやって持ち運ぶんでしょうか?」


「確かにこんな量一気にモテないですよね~」


アクエルとフレイアが同時に頷くがサキが綿に手をかざした瞬間綿はどこかへ消えてしまった。

すると二人は今日何度目かの驚愕の顔を浮かべ叫ぶ。


「ま、まさか…………」


「「アイテムボックス!?」」


「そうだよ」


ただ一言そう説明するとサキは野宿の準備を始める。

途中アクエルからアイテムボックスをどうやって手に入れたのかしつこく聞かれたため最初から持っていたと説明したら呆れ顔をされてしまった。

アクエルはそのままスキルの説明をしてくれる。

アイテムボックスもまた特殊なアイテムを使ったものや勇者にしか持つことができないレアなスキルらしい。

女神達の反応は常識を知らないサキには理解できないものばかりなのも仕方のないことである。

しかし同時に魔法を使うことは確認できたためサキは満足だった。


サキは近くの木の枝を切り落としナイフで加工する。

更に数本の木の枝を加工してアイテムボックスにしまう作業を繰り返しているとアクエルが気になったのか質問をしてきた。


「ユキ様、先ほどから何をなさっているんですか?」


しかしサキは黙々と作業をこなすだけで何も返事はしない。


「もー!アクエルったら。ユキ様は集中してるんだから邪魔しちゃだめよ!」


「わかったわよ………」


不満げにフレイアを睨むがフレイアは気にせずサキの作業を見守っていた。

しばらくして日も沈んだ頃サキは二人に提案する。


「さっきは返事できなくてごめんね。二人は睡眠とか必要あるの?」


「えっと!はい、私達は普通の人間と同じで睡眠を必要とします。それにレベルも1になってしまったので体力が落ちたせいか長時間飛べなくなってしまいまして………」


「本当にごめんなさい………。でも私達の自業自得なのでユキ様は何も悪くないです!」


慌てて訂正するフレイアだがサキは気にしておらず、別に野宿でもよかった。


「じゃあ今日はここで野宿だね~」


「「はい」」


サキは近くを見わたすとちょうどいい大きさの木を見つける。

すると元の世界から持ってきた日本刀をアイテムボックスから取り出した。

そのまま木の前で抜刀の構えを取るとフレイアがあわわわと慌てだした。


「ま、まさか私達ってもう用済みですか?!」


フレイアは人間の場所を聞いてもう用済みと判断されたと思い慌ててサキを見る。


「まさか、そんなことしないよ~」


しかしそんな心配はよそにサキの優しい微笑みが帰って来ると二人はホッとした表情でサキの行動を見守る。


サキは考える。

今までの抜刀はただ人を斬るだけだった。つまり特別力を入れることはしなくてもよかったのだが目の前の木は違った。


今回は断面を綺麗にする必要があるからね。


そう思うと抜刀する瞬間、先ほどスリーピーの毛を刈るときに使っていた水魔法と同じ容量で『水刃』を発動させる。

するとまるで豆腐を斬るような感覚で木が切り落とされた。

そして木が倒れる瞬間もうひと振りしそのまま刀を収めた。


サキにとってはゆっくりに感じられる時間だが二人の女神にとってはほんの一瞬のことで、固まっていた。

サキの目の前には綺麗に切られた丸太が落ちておりそれをサキは重さを感じさせない動きでちょうどいい木陰に移動させる。

すると今度はナイフを取り出し再び『水刃』を使って丸太の中をくりぬいていく。

しばらくして完成したのはドラム缶の木製バージョンだった。

女神は一体なんなのかわからず質問をする。


「ユキ様、これは一体なんなのでしょうか?」


「私も気になります!木だけに!」


「「………」」


サキとアクエルは何とも言えない視線をフレイアに向ける。

そんな視線を向けられいたたまれなくなったフレイアは慌てて話をふった。


「そ、それでこれはなんなのでしょう!」


「う、うん?これはお風呂だよ」


「「!」」


この世界でのお風呂は平民には許されておらず王族や貴族のみが利用できる贅沢なものだった。

当然そんなことは知らないサキだが、二人の女神は驚きの連続だった。

サキは水魔法で空中に水の球を作るとそれを火の魔法で温め始めた。


「火魔法って直接当てるだけで水をあたためられるんだ~。私じゃ蒸発させちゃうよ……」


フレイアは経験があるのかどこか遠い目をしながらしおれた顔をする。


「やっぱりフレイアって魔法の才能ないんじゃないかしら?………」


「なんでよ!アクエルの意地悪!」


そんな他愛もない会話をしているうちに適温になったお湯を丸太の中に移すと、ドラム缶ブロならぬウッディブ風呂の出来上がりである。


初めてにしてはうまくいったほうかな?


「じゃあ二人共先に入ってて、俺はちょっとやることが残ってるから森の方にいってくるよ」


「私たちが先に入っちゃってもいいんですか?!」


「うん、じゃあ留守番お願いね」


「「はい!」」


女神達は人間に姿を確認してもらえないこともあり風呂に入るのは初めてであった。

サキが森の奥に入っていったことを確認するとワクワクして待ちきれなかったのかフレイアは服を脱いだ途端風呂に飛び込んだ。


「わーい!お風呂ってこんなに気持ちがいいのねー!」


「ちょっと!フレイア?!ちゃんと体を清めてから入りなさいよ!」


「いいじゃない!ケチケチしないで~」


「もう………」


結局アクエルの無理強いでお互いに背中を洗いあうことになった。

二人はお湯に浸かると見事に適温で顔がにやける。


「ううぅ。お風呂って気持ちいぃ………」


「ねえアクエル」


そんな中真面目な顔でフレイアがアクエルを見つめる。


「うん?」


「ユキ様の事………正直どう思ってる?」


アクエルはしばらく考え込む素振りを見せる。


「初めて会った時からへんだとは思っていたのよね」


「変って?」


するとアクエルは突然怒りの表情へ変わる。


「だって!女神である私を突然殺そうとするのよ!?変に決まってるじゃない!」


突然の怒りに気持ちはわからないでもないが多少引くフレイア。


「た、確かにそうだけどユキ様はほら……異世界人じゃない?知らなくてもとうぜ―――――」


「知らなくても神と等しい存在に普通刃物を向けるかしら!?あー!思い出すだけでもムカムカするー!……………確かにあれ以来すごく優しくしてくれるけど……」


「それじゃあなんだかんだおとなしく言うこと聞いてるのはどうして?」


アクエルは再び湯船に浸かると心を落ち着かせたのか静かに答える。


「だって、魔法のちからも異常だし戦闘能力もセンスの塊と言わざる負えないし、逆らえば死ぬじゃない?そんなの嫌じゃない?だからこうして言うこと聞くしかないじゃない!?フレイアもそう思ってるんでしょう?」


当然同じ境遇のフレイアなら同じ気持ちだと思っていた。

しかしフレイアの返答は違っていた。


「私は……。人間を恨んでいるは。突然裏切られて、私利私欲のために魔法の道具として使われて」


そこまで言うとアクエルもまた暗い表情になり重く沈んだ空気が二人を包んだ。


「でもね、ユキ様ってああみえて結構素敵な笑顔ができるの。私はそれを垣間だけど見れた。だから……ついていってもいいかなって」


「本当にそれだけの理由で?殺されるのは怖くないの?」


しかしアクエルは納得できずフレイアに食ってかかる。


「いくらいつかは復活するとは言え死ぬのは怖いよ。でもね~………なんだかんだユキ様って顔もいいし強いし非の打ち所がないじゃない?それにもしかしたら私に………。人間への復讐をさせてくれるかも知れない。そんな気がするの」


フレイアは嬉しかったのだ。

人間を恨んでいることを聞いても一緒に行動してくれることが。それを肯定してくれたことが。

もしかしたら力でねじ伏せられるから気にしなくてもいいのかもしれない。しかしフレイアにとってはそれでもよかった。

人間に裏切られずっと恨んでいた心を同じ人間であるサキに肯定してもらえたから。

そんな思いがフレイアの心を包んでいたのだ。


「フレイア………どうしても人間に復讐を?」


「当たり前よ!私は………本当に村の人間たちにいい生活をして欲しかったの………そのために禁忌の種まで使ったのよ!」


「!?」


その瞬間アクエルの表情は一変する。


「禁忌の種ですって!?」


「そうよ………あの時は本当に村の皆が好きだったの。特にいつも私に良くしてくれていた私のことが見える男の人がいたわ……。その人のためならなんでもしてあげたいと思った。もちろん村の発展も同じよ」


「だからといって禁忌の種はダメに決まってるじゃない…………神々が封印したっていうのに……」






禁忌の種とは、植えたとたんみるみる成長し一つだけ黄金の実がなる種である。

それは神々のみ食すことを許されていたまさに禁忌の実で、それを食べれば寿命がのびると言われていた。

これが人間たちの手に渡れば争いは免れないと思った神々は禁忌の種を神殿に隠したという。

しかし神々の力を宿したフレイアにとって忍び込んで盗んでくるのは用意なことだった。

フレイアは神々が永眠し監視がない神殿から種を盗み出し人間に食べさせたのだ。





フレイアは寂しげな顔をしたまアクエルに問いかける。


「アクエルってさ、誰かを好きになったことないでしょ」


「当たり前じゃない、そもそも女神を視認できる者が少ないんだから………愛しようがないわよ」


「……………そうよね」


「まさかフレイア」


「ええ、私はその男を愛してしまった。そして禁忌の種を与えた。最初の頃は女神の加護だなんだってずっと騒いでたわよ。詳しい説明をせず直接手渡ししたんだから。でも奉納の儀の時、その男は私を裏切った!突然クリスタルを持ってきた男は私を封印した……。彼はまだ生きてる!絶対に復讐してやるんだって決めたのよ!」


最後まで言い終えたフレイアの目には大粒の涙が溜まっていた。

アクエルは何とも言えないのか黙ってフレイアを見ていたが思いついたかのようにフレイアに提案する。


「ねえフレイア」


「?」


「あなたのいた村ってなんていう村?」


そんなことを聞いてどうするのだと言わんばかりの顔でアクエルに答える、


「確かダイテの村よ」


「ダイテ………聞いた事があるわ。とある村で突然女神の加護を受け取った人間がいたって。そしてその男は不思議なことに年をとってもずっと加護を受け取った時と同じ容姿だったって。もしかしたらその男…………」


「それよ!その男だわ!」


なんとアクエルは男の噂を耳にしていた。しかし100年は前の話の為男が今どこで何をしているのかなど検討もつかなかった。

二人はもんもんと考えていたが何もいい案は思い浮かばずまた湯船につかりなおす。

しばらくしてまたフレイアが口を開いた。


「ねえ、アクエルはどうしてクリスタルに閉じ込められたの?」


「それは………」


そう言うとアクエルは暗い表情になる。


アクエルもフレイアと同じで小さな村で祀られており村の人々に崇められる代わりに魔法の力を与えていた。

しかし人間に裏切られたフレイアとは違い自らクリスタルに閉じ込められたのだ。


思えば私も人間達が好きだったかもね……………。


アクエルのいた村は小さかったが、アクエルの加護により水も豊富で豊かだった。そのため近隣の大きな国から狙われたり野党に襲われることも多かった。

最初の頃はそんなに数もなく負い帰ることもできていたのだが、国から水の女神を渡さなければ村中の人間を皆殺しにすると言われたのだ。

もちろん最初は断ったが断りにいった村の人間は帰ってくることがなかった。

すると村の長はクリスタルの話を噂で危機クリスタルと作ったという男の元に尋ねると男の身内という人物からクリスタルを受け取った。

もちろん長も不本意出会ったが村の人間のために長の立場として自分の感情を押し殺した。

そして女神奉納の火に長はアクエルに語りかけた。

『水の女神よ、大変申し訳ないのだが―――――――』

村の人間を助けるためにクリスタルに入って欲しいと。

アクエルもまた不本意だったが村の人間を助けるために自らクリスタルに触れることでクリスタルに封印された。

そして村の長や村の人間達は女神に再び感謝を捧げると皆総出で国へ向かいそのクリスタルを差し出した。

クリスタルに封印される時意識が混濁するような感覚がしたため咄嗟に治癒魔法をかけたアクエルだったがそれも長くは持たないと思った。

というのもクリスタルの力が強すぎたのだ。


こんなのを作り出せる存在なんてほんのひと握りしかいない………。


少しでも外の情報を取り入れようと意識を集中させた。

村の皆が国の王にクリスタルを渡すと国王は長だけを残すと他の村人を先に下がらせた。

残された長はクリスタルの使い方を教えるために残されたのだ。

しかしクリスタルがあるだけで水は湧いてくると教えても魔法の使い方や攻撃するための手段まで聞いてくるのだ。

流石におかしいと思った長は意を決して王に訪ねた。


『もしや国王様は戦争の為に女神さまを……?』


恐る恐るだったが王の厭らしい笑みを見たとき長は察した。

村の為に封印された女神を戦争の道具にしようとすることは許せなかった。



村の長は何をされても口を割ろうとはしなかった。

どんなにきつい拷問をされようとも最後まで口を割る事なく死んでしまったのだ。


水をわかせるだけの存在だったアクエルはやがて王国より盗まれいろんな場所を渡りとうとうグレムの元にやってきたのだった。

なぜ自分がグレムの元へ来てしまったのかは途中から自我がなくなっていたのでわからなかったがそんなところだろうと説明してくれた。

そんな背景を聞かされたフレイアはアクエル同様落ち込む。


「ごめんなさい、思い出させちゃったね……」


「うんん、大丈夫よ?その国王のことはいけ好かないけど、結局こうしてまた自由になれたんだもの」


先ほどとは違い明るい笑みを浮かべたアクエルがそこにいた。

それに釣られてフレイアもぎこちないが笑顔で返す。


「結局私達ってユキ様に逆らえないことは変わらないのよね」


「そうよね………私はそれでもいいと思ってるけど」


やはりフレイアはサキのことを好意的に見ているのだろう。

アクエルも同じ気持ちの部分はあるがやはりまだ全てを信用しきれないアクエルはフレイアが心配でもあった。

そんな時考え事をしていたのか閃いたという顔でフレイアはアクエルの方を向く。


「ねえ!ユキ様に相談してみない?もしかしたら…………もしかしたらさ!」


無駄だろうとは思っていたがあまりにもフレイアの表情が嬉しそうなためアクエルは頷くしかなかった。


「そ、そうよね……言ってみましょうか」


こうして二人の長い入浴タイムは過ぎていった。













女神達を入浴させている間サキはきこりをしていた。

それも綿をちゃんとした糸にするためである。


綿を手に入れたはいいけど糸にしないと使い勝手が悪いからねえ。


サキが作っているのは綿を糸に精製するための簡易的な道具だ。

それに、木は無限に生えており木材には困らなかった。

一通り準備したサキはアイテムボックスから綿を取り出すとそれを大きくて分厚い木の板の上に伸ばすように敷き始めた。


「こんなものかな?」


敷き終わるとその上に分厚い木をピッタリに置くとその上からまた大きな丸太を二つおく。

圧縮して取り出した綿は一枚の薄い綿になっていた。

そしてそれを数枚つくりアイテムボックスにしまっておく。

次に別の綿を取り出すと今度はそれを1本1本の繊維に分け、小さな木の枝に引っ掛ける。

その作業を繰り返して引き伸ばし並行に揃えていくと太いひも状のスライバーになった。

更にもう一つ木でできた道具が置いてある横にスライバーを置くと更に作業を始めた。

伸ばし棒のような棒を数本並べローラーのように固定した道具の間から先ほどのスライバーを通し、数本のスライバーを一緒に併合することで太さを均一にした繊維を作る。

しばらくその作業を繰り返し綿の見てくれからなんとか糸の形にはなっていた。

すると今度はスライバーを更に強い力で引き伸ばしながらよりかけて粗糸にしていく。

普通では機械を使わなければできない作業だがサキの知識と腕力がそれを可能にしていた。

そして出来上がった糸を更に同じ肯定で力を加え、よりを掛け小さな木の枝を綺麗に削いだ親指サイズのボビンに巻き官糸にしていく。

その工程を休むまもなくスムーズに勧めていった。


何時間かかったことか夜もすっかり更け沢山の糸が完成した。


「ずっと元の世界の服って訳にもいかないからね」


サキは動きやすさからワイシャツを愛用していた。

しかしこの世界で生きるのならば新しい服を作らなければならないと思い新しく衣装を作ろうと考えた。


「とりあえず商人風にコートみたいなのでいいよね。サカキも欺けって言ってたし………」


サキはサカキの命令を忠実に守っていた。

サキは普段から演技をしており常に自分をも偽ることで完璧な変装と演技になるからだ。

そしてサカキにそう教えられていたからでもあった。

考え事をしつつ即席のコートを作り出したサキは満足そうに羽織る。

すると今度は青年の身長になるように関節を動かす。

髪の毛も少し右寄りに整えコートで顔がいい感じに隠れ商人風の男に見える変装をした。


『僕は駆け出し商人のユキです!』


「うん、いい感じかな」


声のトーンを若干上げ満面の笑みの駆け出し商人に見事化けたのである。

そろそろ女神達の方に戻ろうか。あまり長いあいだいなくなって文句を言われても面倒だからね。


帰る頃にはもう朝日が傾いていた。


時間かけすぎちゃったかな?


そのままサキは女神達の待つ場所へ踵を返した。




















書き方を少し変えてみましたが読みにくい等意見がありましたらご指摘お願いいたします。

いつも読んでくださりありがとうございます。

未だに誤字脱字誤文多々あるかと思いますが温かい目で見ていただければと思います。

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