虚しさと過去の記憶
「…。」
冷たい風が吹いている…
「待ってくれ!」
目の前の人物に対して無意識的に声が出る
「済まない…これが私の宿命、私がこうなった時から決まっていたのだ。」
「何故だ!貴方がこんな残酷な事をしなくてはいけないのですか!」
(一時の沈黙が流れその人物は答える)
「そんな悲しい顔をしないでくれよ…最後くらい笑ってくれ…」
顔ははっきりとは見えないが笑っているのだろう
「笑え無いですよ…」
「ハハハッ、それがお前の悪い所だな! お前は堅すぎるもっと力を抜け…ハハハッ!」
その人物は先ほどまでの威厳を捨て一人の……として自分に話しかけてきた
「おっと、そろそろ時間の用だ…じゃ、頼んだぜ!…よ!」
「待ってくれ!俺は何も言えていないじゃないか!」
私の声はその人物に届く前に消えてしまった…
ぼんやりとした記憶…
先ほどの人物は自分にとって大切な人物なのに思い出せない
しかし、この場面、この場所は覚えている。
そう、たった一人の孤独な…とあの誓いを立てた場所である…
ああ、恐ろしい…記憶が無くなっていく…この虚しさだ、この虚しさこそが恐ろしい。
次に私が目覚める時は、私はこの虚しさで満たされ、何も覚えていないのだろう。
目の前が暗くなる…恐ろしい、虚しさに満たされていく自分自身が…