羞恥プレイは不可避でした
2020,9,5改稿済
今回も2話分まとめた形で改稿しました。
ベットの上に横たえられ、手際よく産着を脱がされる。
やめてー。それ以上めくらないでってばー!
「女の子でしたか 」
セバスチャン、そんな感想要らないよぅ。
うう、いくら泣いても手を止めてくれないし。
ぐすん。
もう、お嫁にいけない…
前世でもお嫁にいけないどころか、危うく魔女になるところだったのに。ええそうですよ。彼氏いない歴=年齢でしたが何か?周りにどんどん彼氏ができて結婚していくから心配になりましたよ。
もう、やるならちゃっちゃと終わらせてください。
「ノル、お主いつの間に子供の世話なんてできるようになったんじゃ? …まさか、隠し子でもいるのか?」
私の世話を取り上げられて暇なのか、セバスチャンの手元を見ていたおじいちゃんが彼に声を掛けた。
セバスチャンってノルって名前だったんだね。勝手にセバスチャンって呼んでてごめん。でも、ノルか……愛称っぽいけど、なんか似合わないなあ。
ノルって聞くと紅顔の美少年なイメージがあるんだよね。
いや、今イケオジだってことは昔は美少年だったのか?
セバスチャン改めノルさんの手際のよい作業によって、私の不快感は解消された。
うむ。不快感がないとは、こんなに素晴らしいことだったのか。
「そんな訳ないに決まってるでしょう? 昔、小さい子どもの世話をしたことがあるんですよ 」
ノルさんのこの言い方だと、彼には奥さんがいないか、いても子どもがいないのかな。
おじいちゃんも奥さんいないみたいだし。
だって、おじいちゃんに奥さんがいたら彼女が私のお世話をしてくれると思うんだ
執事のノルさんとおじいちゃんだけで、メイドさんもその後姿を見ないってことは、この屋敷に女手がいないからなんじゃないかな。
おじいちゃんに奥さんがいるなら、もっと女手があっても良いと思うし、その中に子育て経験豊富なメイドさんの1人や2人いるでしょう?
むう。
やっぱり、お母さんはいないってパターンなのかな。
おじいちゃんに奥さんがいないなら娘もいないし。
そもそも神官なんだもんな。神父様みたいに、妻帯禁止されててもおかしくないか。
「なんじゃ、つまらないのう。お主のことじゃから、隠し子の1人や2人、5人や10人いてもおかしくないと思ったのに 」
ノルさん、イケメンだもんね。たいそうモテたんだろうな。
当の本人はというと、おじいちゃんを華麗にスルーしておむつの入っていた籠を整理し始めていた。
「あ! 無視しおったな! 雇い主のわしのがお主より偉いと言うのに 」
おじいちゃんがノルさんをピシっと指さして叫んだ。
また、おじいちゃんの無駄なヒロイン力が発揮されてる。なんでこう地味に可愛いポーズ取るのさ。
「主従関係は重視しなくて良い、と言ったのは旦那様の方ではありませんか 」
しっかり論破されて再びしゅんとする、と。
このコンビ最高だね。
…おじいちゃんが女の子だったら、だけど。
可愛いよ、おじいちゃん。でもさ、そこ、ヒロインだから。
おじいちゃんのいるべきはヒーローの座じゃないの?ああ、でもいいところをノルさんが持っていきそうだな。
残念なイケメン。
おじいちゃんも若い頃はきっとイケメンだったんだろうな…
ただ、後ろにいるのがもっとイケメンだから威力が半減する、と。
とことん不憫だね。
それはそうと籠の中に入っていたのは布おむつ3枚と、毛布と…
む?
ノルさんが籠から毛布を取った時に転がり出た、あの赤い取っ手には見覚えがあるぞ。
物が落ちたことに気付いたらしいノルさんがスタンプを手に取った。
「…シーリングスタンプのようですね。この子の家を探す手掛かりになると良いのですが 」
ああやっぱり。 そうだろうとは思ってたけれど。
捨て子か迷子みたいですよ、私。
あんまり実感ないけどね。どうせ神(笑)の補正が入るから、そう悪い展開にはならないだろうし。
「何処の家紋じゃ? 」
おじいちゃんがノルさんに聞いた。
そっか。
封蝋ってたしか貴族の風習だもんね。
文章の機密性保持のためとかだった気がする。
この世界でもそうなら、私は貴族って可能性があるわけだ。いやだめんどくさい。
てっぺんハゲぽっちゃり狸は嫌いなんだって。 もし貴族の娘になったとしても、社交界嫌いの令嬢ってことで有名になってやる。必要最低限しか出ないからな!
はっはっは。
「…旦那様、これは一体どこの家紋ですか? 」
スタンプを手に眉根を寄せていたノルさんがおじいちゃんに問いかけた。
ノルさんにもわからないものってあるんだね。執事ってそういうの全部把握してそうなイメージがあるんだけど。
家紋じゃなかったりして。
「むむ? 貸してみなさい 」
ノルさんからスタンプを受け取るとおじいちゃんは目を見開いた。
どうしたのかな?
……あ。
そういや、それ家紋じゃないわ。
神(笑)からもらったやつなんだから、家紋が入ってるわけがない。下手すると、その紋章は神(笑)のだよ。
あはは。
すっかり忘れてた。
「……いや、これは、いやはや、どうして……」
狼狽えるおじいちゃんの姿を見ていると、なんだかいたたまれなくなってきた。
なんか、ごめん。
「…どうなさったのです、旦那様? 」
おじいちゃんの慌てっぷりに、ノルさんが怪訝な顔をしている。
「…これはエミア神の紋章じゃよ 」
エミア神って誰だよって思った人、挙手。
うん、そうだよね。
私も一瞬誰の事か分かんなかったもの。
神(笑)ですよ。
ずっと神(笑)って呼んでたもんだから、危うく名前忘れるところだった。
「そんなものを、何故この子が?」
申し訳ございません、ノル様、おじい様。
わたくしがエミア神の愛し子だからです。
はい、すいません。
「そこまではわからんのう。まあ、神殿関係を当たってみるつもりじゃ。手紙の用意をしておいてくれ 」
むー、多分無駄足だと思う……
もしお母さんが今世にもいるなら嬉しいけどさ。
「…なあ、ノルよ。この子が家の前に捨てられていたのは本当に偶然なのじゃろうか 」
承知しました、と言って部屋を出ようとしたノルさんをおじいちゃんが引き留めた。
捨て子確定。
この家の前、ねえ。
「少なくとも私は偶然だと思っていましたが、どうしてそうだと? 」
ノルさんはドアノブに手を掛けたまま振り向いた。
「わしが神官長をやめたその年に、エミア神の紋章を持った子どもが家に来たんじゃぞ? 神の御意思であるとしか思えないではないか 」
はい。
エミア神がやったことですから。
ばりっばり神の意図です。
「珍しいですね、そんな非現実的なことを言うなんて 」
ノルさんがにやりと片方の口角だけを上げた。
「わしだって聖職者じゃぞ? 神の意志くらい信じておるわ 」
「まあ、そういうことにしておきます。……この子の親が見つからなければ、この家で育てるおつもりですか? 」
ドアの前から戻って来たノルさんがそう聞いた。
私、この家の子になるー!!おじいちゃんは天然だけど、短い時間で大好きになってしまった。 ここにいられるなら、ずっといたい。エミア神に色々言いたいことはあるけど、おじいちゃんの家に預けてくれたのは、ほんとに正解だったし、とっても感謝している。
「そのつもりじゃ。……手伝ってくれるか? 」
「もちろんです。それが私の仕事ですから 」
ラスボスとの戦いの前のような雰囲気を出している二人だけど、これからきっと楽しい日々が待っているのは確かだ。
と、そんな訳で私は、おじいちゃんの家にそのままずっといることになったのです。
エミアっていうと、どうしても赤い弓兵が出てきてしまうのです…
これ書いてた頃は知らなかったのに…