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透明人間になっ…えぇ!?ちょ、待っ!?

作者: 調彩雨

R15の限界に挑戦している気がします

下ネタがお嫌な方は閲覧をお勧めしません<(_ _)>

 

 

 

 あ、えっと、初めまして?


 わたしの名前は有村(ありむら)(りん)。公立大学に通う、ごくフツーの女子大学生だ。


 ごくフツーの女子大学生だったんだけど、なんと、突然、透明人間になった。


 あ、いや、うん。わけわかんないよね。わたしもそう思う。


 でも、でも、ね、朝起きたら、わたし、透明人間になってたんだ。


 わかる?この気持ち。


 朝起きたら自分の手が見えないんだよ?どうしろと。

 幸いにも物には触れたし、とりあえず朝ごはん食べてから、途方に暮れた。


 いや、だってさ、どうやって生きて行けと。


 妄想だったらほら、女子更衣室覗き放題だぜひゃっほーい!とかなるんだろうけど、実際なっても困るだけ、ってゆーかさ。


 え?女だったら女子更衣室は覗き放題だろって、女同士だってガン見してたら変人だと思われるじゃん!


 わたしも最初はちょっと、知り合いに悪戯しようかなとか考えたけど、ソッコー諦めたね!だって、わかる?透明になったのはわたしの身体だけで、身に着けてる服や持ち物は、フツーに見えてるんだよ!?


 透明なのは生身のわたしだけ、つまり、透明人間として悪戯しようと思ったら、すっぽんぽんで外出しなきゃいけないんだよ!!


 無理!ぜったい無理!


 なんで透明になったかわかんないから、いつ透明じゃなくなるのかもわかんないんだよ?もし、悪戯しようと街中歩いてるときに戻ってみ?わたし、装備ゼロで出現!即逮捕!!


 しかも、考えても見て。透明=見えてない→相手が避けてくれない。


 素足で外出して踏まれでもしたら?いや、踏まれるくらいならまだ良い。自転車や車に轢かれるかもしれないじゃないか!


 防具なしでそんなことになったら、わたし間違いなく死ぬ!透明だから、誰にも助けて貰えないし!!


 自慢じゃないけどドッジボールは超苦手なわたしだから、華麗に避けるなんて出来るはずもない。


「…いや、うん、考えててもなにも浮かばん」


 なにせ、まだ混乱してるからね!


 仕方がないので友達に今日は休むと連絡を入れ、自分を落ち着かせようとお風呂に入ることにした。




 透明人間の入浴シーンは、すっごくシュールだった。


 いや、だって、お湯が人型に避けてるんだよ?なにも見えないのに!完全に水に沈んじゃえばそこまで気味の悪いことにはならないんだけど、例えば腕半分とかだけ入れると、リアル縮小版モーゼ、みたいな。水が割れたぜ!みたいな!


 あと、実はちょっとだけお湯に浸かったら戻るとか期待したんだけど、残念ながらそんな某少年漫画的展開はなかった。透明人間が溺れた池に運悪く落ちた、とかではないらしい。


 それでも身体が温まったことで、少しは落ち着いてきた。


 運の良いことに昨日買い物に行ったばかりだったので、数日なら外出しなくても食べものには困らない。大学とバイトに行けないのは困るが、これも風邪でもひいたことにすれば、数日間はごまかせるだろう。


 数日で戻るなら、これで大丈夫なはずだ。数日で戻るなら。

 頼む、数日で戻ってくれ…!


「はぁ…上がる、か」


 落ち着いたところで今まで透明人間になった経験なんてないので、戻る方法も思い付かない。気長に戻るのを待つかとため息を吐いて、お風呂から上がった。




 さて、突然ながら我が家のお風呂について説明したい。


 わたしが住んでいるのは学生向けのワンルームで、風呂トイレ別だが脱衣所はない。玄関入って左がキッチンスペースで、右がお風呂・トイレ・洗濯機のスペースだ。


 少しへこんだそこにロングカーテンをかけて簡易的な脱衣スペースにはしているが、結局は布一枚。防御力なんて皆無だ。


 まあ、一人暮らしで彼氏もなしで、覗く人なんていないんだから別に今までは困ってなかったんだけどね。


 そう。今までは。


 今、すっごく困ってます。


 なぜか。


 娘の一人暮らしを心配した親が、どうか様子を見てやってくれと合い鍵を託した幼なじみ(一コ上、♂)が、お風呂を出た瞬間鍵開けて入って来たからだよ!!


「鈴ー?」

「ちょ、なにしに来たんだよ!」


 とっさにカーテン押さえて叫び返し、服を着ようと…、


 やっちまった。


 冬場にやるとダメージでかいアレ、着替えの用意し忘れですね、はい。


 さっきまで着ていた服は今、ごうんごうんと唸る洗濯機さんに喰われていて、着られる状態にない。


「いや、体調不良で休むっつーから、死んでねぇかと」

「どっから伝わった!?」


 休むことは、同じ学年の友人に伝えたのだ。一学年上の幼なじみには伝えていない。


中原(なかはら)

「だからって勝手に入ってくんなよ!」


 まいまいの裏切り者ぉー!!


 今はいない友人に心で叫んでも、状況は変わらない。


 どうするよ。

 どうするよ!?


 と、焦ったところで思い出す。


 今わたし、透明人間じゃん。


 手早く体を拭いて、確認する。うん。見えない見えない。


「ラインもメールもしたけど返信なかったんだよ」

「お風呂入ってたんだよ!」


 変わらず怒鳴ってから、ほくそ笑む。


 外出出来ないから悪戯は諦めた所に、飛んで火に入る夏の虫じゃないか。

 年頃の女の子の家に不躾に侵入する不届き者に、目にもの見せてやろう。


「風呂って、熱とか大丈夫なのか?体温計った?」


 言いながらヤツは我が物顔でひとつしかない部屋に侵入し、がさりと荷物を机に置いた。


 ヤツの目線がこっちに向いていないことを確認して、こそーっとカーテンの隙間をすり抜ける。


 そーっと、そーっと、バレないように…。


「鈴?もう服着たか?」


 バレないように近付いたと言うに、ヤツはわたしが近付ききる前に振り向いた。


 でも、大丈夫。わたしは見えないはず、


「って、鈴!?なにやってんだ!?」

「え!?」


 見えてんの!?


 ぎょっとして身体を見下ろすがわたしには見えていない。


 も、もしや賢い人にしか見えない鈴ちゃんに…?


「テイ、見えてるの?」

「いや、見えてないけど、鈴なら気配でわかるし。つか、なんだそれ、どうしたんだ!?」


 いや、気配でわかるってなんだよ!?エスパーか!?反則だろ!!


「気配でって、なんだ、鉄人か!?」

「だって、お前すぐはぐれるし!」

「うるせぇ!」

「いや、そんなん関係なくて、ああ、触れはす、」

「ひやっ!?」


 本当にわたしの居場所がわかるらしく、ぺたりと素肌に触れた手を慌てて叩き落とす。うっかり目でも突いたら困るとでも思ったか、少し低めに伸ばされた手は、胸のすぐ下に触った。


「触んな変態っ!」

「いや、わりぃ。…もしかして、まっぱ?」

「黙れ!っ、あっち、じゃない、窓に張り付いて外見てて!!」


 窓を指差して、見えないと気付いて口で説明する。大人しく従ったのを確認してから、手早く服を掻き集めて着込んだ。さっきと変わらず、服は透明にならない。


 …テイ、花本(はなもと)定正(さだまさ)は保育園の時からの幼馴染みだ。実家がお隣のテイは、近所でも評判の優等生で、わたしが県外の大学に進むことを渋っていた両親すら、テイと同じ大学ならと受け入れた。挙げ句、大事な娘の部屋の合い鍵まで渡すんだから、なんだかなぁって感じだ。


 まあ、テイとわたしは幼馴染みって言うより悪友みたいな感じで、どちらも相手を異性扱いしてないから、両親も気にしなかったのかもしれないけど。


「なんでそんなことになってんの」

「知るか。朝起きたらこうだったんだから仕方ないだろ」


 窓を向いたテイの疑問に、むすっと答える。


 バレたのは不本意だが、テイの協力が得られれば楽になるのは確かなわけで、


「なんか変なものでも食べたんじゃねぇの?」

「食べてねぇし」


 ちょっとほっとしたなんてことに気付かれたくなくて、わたしはぶっきらぼうな口調を貫いた。


「もうこっち向いて良い」


 着替え終えてソファに座りながら答える。


「ああ、服は消えないのか」


 振り向いたテイがわたしを見て頷き、どさっと床に腰を下ろした。

 机の上、持って来たらしい薬局のレジ袋をあさって、中身を取り出す。


 スポーツドリンクに栄養ドリンク剤、ゼリー飲料、冷却シート、パウチのお粥に火に掛けるだけのうどん、杏仁豆腐やゼリーまで出て来る。

 明らかに看病用に買って来ましたーな内容に、心配させたかと少し反省する。


 携帯を確認すれば、テイだけでなく数人から、安否を問うラインとメールが入っていた。テイからは二度ほど着信もある。…わたし、長風呂だからな。


 とりあえず友人たちに生存報告を返していると、買って来たものを並べ終えたテイがため息を吐いた。


「冬だし、普通に風邪かなんかだろうと思ったんだけどな」

「ただの風邪ならどれほど良かったか」

「髪ちゃんと乾かせよ?ほんとに風邪ひく」

「はいはい」


 首に掛けていたタオルで髪が濡れていると気付いたらしいテイに言われて、ソファから立ち上がる。


 鏡台の前に座って髪にドライヤーを掛けながら、テイに問い掛けた。


「つか、あんま混乱してない?」

「あ?」

「いや、だって、知り合いが突然透明になったら、普通もっと驚かない?」

「つったって、お前がそんだけ落ち着いてんのに俺が慌ててもな…。お前、のん気に風呂は入ってるし」

「いや、それは気持ちを落ち着けようとだね…」


 テイがため息混じりの笑いを漏らした。


「ま、取り乱して墓穴掘るより良いんじゃねぇ?お互いに」


 ペットボトルをあける音に横目で伺えば、テイが買って来たスポドリを開けて飲んでいた。


 おい、それはわたしに買って来たものじゃないのか。


「二本あるってちゃんと」

「…アクエリの方が好きなのに」


 テイが飲んだのがアクエリ、机に置かれたのがポカリだ。


「飲みさしで良いならやるけど」

「置いといて」

「はいよ」


 テイは机に飲みかけのアクエリを置くと、難しい顔で黙り込んだ。


 髪を乾かし終えて、机に置かれたアクエリを手に取る。

 開けて、飲んで、


「…それ、どこまで見えるんだ?」

「ん?」


 テイの呟きに首を傾げた。


「飲んだもん。いま、襟んとこまでは透けて見えてた」

「え」


 それはまた、シュールな。


「でもお風呂の時、朝ごはんはフツーに消えてたよ?」


 胃の内容物が見えるなんて、そんなグロテスクなことにはなっていなかった。


「まじか。どこで消えるんだ?ちょっと服脱いで、もういっか、」

「そぉいっ」


 ぽこんっ


「てっ」


 投げたアクエリがテイの頭にクリーンヒット。教育的指導だ。


「良いじゃん、見えねぇんだし」

「気分!気分の問題!!気になるならお前が透明になって確かめろ!」

「いや、なり方知らねぇし」


 アクエリの当たった頭をなでながら、テイが再び難しい顔になる。


「なあ、さっきから考えてたんだけどさ」

「…なに?」


 いつになく真剣な声で言われて、こちらも真面目な顔をする。

 なにか、打開策を思い付いたのかもしれない。


「その身体で、ヤったらどうなるんだ…?」

「でぇいっ」


 ばすんっ


「だっ」


 机の上のポカリを掴んで、テイの頭を殴る。教育的指導、そのに。


「お前、真面目に考えてるのかと思ったらっ!」

「いや、気になるだろ、挿れたら消えるのかとか、したらどうなんのかとか!それに、もしかしたらそれで戻るかもしれねぇし!」

「そんな珍妙な方法で戻ってたまるか!!」


 憤って再度ポカリを振り上げた手を、掴まれた。そのままひょいっと抱き上げられ、ベッドに押し倒される。

 わたしの上にまたがったテイが、おもむろに服を脱ぎだした。


「ちょ、なんで脱いでんだよ!?」


 慌てて暴れた腕を抑え込まれて、テイに見据えられる。向こうはわたしの顔なんか見えていないはずなのに、はっきりと目が合っているように感じた。


「こんな時に言うのもアレなんだけどさ、俺、お前のこと好きなわけよ」

「は?」

「いやマジで。ガチに。女として惚れてんだわ」

「嘘吐くな!」

「嘘じゃねぇよ」


 低い声に、びくりと震える。見えないはずのわたしを見下ろす瞳は、真剣だった。


 いやいやいや、嘘だろ?だってお前、わたしのことなんか女と思ってないだろ?


 そう茶化したい言葉は、またがられた下腹に当たるもので出せなくなった。


「透明人間相手に、なに、おっ立ててんだよ…」


 絞り出した声は、みっともなく震えていた。


「透明人間に立ててんじゃねぇよ。お前に欲情してんだ」


 上裸になったテイが屈んで、わたしの首元に顔を寄せる。湿った温かいものが、首に触れた。


「みっ、見えないんじゃ…」

「見えなくてもお前ならわかるっつの。どんだけ見て来たと思ってんだ」


 首元で話されて、ひっとのどが鳴った。


「透明人間とかさ、下手すりゃ研究所とかに拉致られんだろ?ならその前に、俺のもんにしたい」

「んだよそれ、どこの漫画だよ。…つか、いくら見て来たっつったって、アソコまでは見てねぇだろ。見えないのに挿れんのとか、無理だろ」


 どうにかしてやめさせたくて言葉を吐き出した言葉に、テイはきっぱりと答えた。


「行ける。気合いで」

「行くな!強姦は犯罪だ!!」

「愛があれば強姦じゃねぇ」

「愛があっても強姦は強姦だ!!馬鹿だろ!?お前、頭良いのに馬鹿だろ!?」

「…正直な話、嫌なん?」


 必死の拒否が伝わったのか、テイが首元から顔を離して眉を下げた。


「嫌」

「なんで」

「なんでって」

「付き合ってるやつ、いねぇじゃん」

「いないけど」


 フリーならヤれると思ったら、大間違いだぞ?


「初めては好きなひとが良いじゃん」

「好きなひとの初めては欲しいじゃん」

「欲張りか!」

「処女はロマンだろ!?」

「透明で処女奪われたくねぇわ!」

「優しくするって!」


 なんだよこの言葉のドッジボール!避けるんじゃねぇ!受け取れ!キャッチしろ!デッドボール狙うな!!


「強姦な時点でちっとも優しくねぇ!!」

「お前が了承すれば強姦じゃねぇから」

「了承しねぇよ!?」

「了承しねぇの?」

「しないって」

「なんで」

「ループしたぁああぁぁあっ!!」


 ドッジボールだよ!まじで言葉がドッジボールだよ!!

 しかも片や透明、片や半裸で馬乗りだよ!シュール過ぎるわ!!


「いやだってお前、俺のこと好きだろ?」

「なんだその自信!?」

「つか、お前さ、俺の婚約者だから、一応」

「はぁ!?」


 デッドボール!言葉のデッドボール来たわ!なんだそれ、初耳だわ!エイプリールフールは、今日じゃねぇぞ!?


 ぎょっとしたら、呆れ顔で見返された。


「そうでもなきゃ、いくらなんでも娘の部屋の鍵を家族でもない男に預けたりしねぇだろ」

「いやいやいやいやいや、聞いてない。その話、聞いてないから!」


 と言うか今時婚約者って、金持ちじゃあるまいし。


「お前のあまりの雄々しさに行き遅れを心配したお前の母さんが、お前が高一の頃、俺の母親に持ち掛けたんだ。うちの子が行き遅れたら定正さだまさくんが貰ってくれないかしらって。んで、俺の母親が、うちの子もお嫁を貰えそうにないから鈴ちゃんが来てくれるなら助かるわぁって。そこから盛り上がって、三日後には両家の両親承諾で婚約が決まった」

「本人蚊帳の外かよ!?」

「いや?俺はそれで良いか訊かれたぞ?構わんと答えといた」

「断れよ!おかしいだろ!」

「方法がどうあれ鈴が手に入るなら良いかと」

「そこは方法こだわれよ!!」


 わたしの気持ちは無視か!と叫んだわたしを、テイが真剣な目で見下ろした。


「ずっと、好きだった。幸せにする。だから、喰わせろ」

「最後の一言ェ…」


 台無しだよ!いや、半裸×透明人間で押し倒されてる時点で、ロマンスの欠片も感じられないけどな!


「俺のこと、嫌いか?好きだろ?」

「好きか嫌いかで訊かれれば嫌いじゃないけど」

「好きでもない?」

「いや、まあ、友達としては好きだよ?」


 幼馴染み兼、悪友兼、兄のような存在だ。ムカつくことも多々あるが、好意は持っている。


「お前初恋俺だろ?」

「う」


 嫌なネタを掘り返しやがった…!アレだろ、ソレ、保育園の時のやつ。テイくんと結婚する!的な。


「でもってそっから、更新されてない」

「ううっ」


 テイは一つ年上の上に、大人びた子供だったのだ。そのくせわたしと遊ぶときは、レベルを合わせてくれて。

 そんな心安い相手がいれば、気遣いのないガキに心が揺れないのも、まあ仕方のない話で。


 小中は周りのガキに目もくれず、高校は女子校で部活に明け暮れ、大学では課題と試験に追われ、恋愛を更新する余地なんてなかった。


 結果、この年で処女だ。


「お前に結婚するって言われて、俺がなんて答えたか覚えてるか?」

「結婚するなんて言った覚えすらない」

「良いよって言ったんだよ。大人になったら、結婚しようねって」


 嫌な予感がして、恐る恐る問い掛ける。


「…まさか」

「その頃から好きだった」


 恐れていた答えは、あっさりと与えられた。


「嘘だろ」

「嘘じゃねぇし。そのせいで童貞だし」

「いやだってお前、モテるだろ?」


 高校は違ったが噂は聞こえて来た。そのレベルのイケメンなのだテイは。


「モテるけど、全員断ってるし」


 言われてみれば付き合った話は聞いていない。


「まじかよ…」

「まじだよ。つーわけで、お前には俺の筆下ろしに付き合う義務がある」

「いや、ねーよ」


 なんつー跳躍理論だよ。


「良いじゃん」

「良くねぇ」

「だって、初めて好きになったひとと、初めてをするんだぜ?悪い話じゃなくね?」

「透明でだぞ?どこが悪い話じゃねぇんだよ」

「…透明じゃなかったら良いの?」

「っ!」


 揚げ足取られた。くそっ、さっきまでドッジボールしてたくせに。


「透明とか透明じゃないとか、関係なくて!!」

「鈴、好きだよ。シたい」


 ああもう!キャッチしろ!言葉を避けるな!ぶつけようとするな!


「わたしは、っふ、ん、んんぅー」


 言葉の途中で、口をふさがれた。口で。


 見えないはずなのに、なんで唇の位置がわかるんだ。


「ああ、くそっ」


 存分に貪ってから唇を離したテイが、銀糸を垂らしながら顔をしかめた。


「絶対エロい顔してんのに、見えねぇ」

「てめ、ふざけっ、んな」


 息が上がって、苦しい。


「気持ち良くなかった?」

「気持ちわっ…良かったけど」


 くっそ捨てられた子犬みたいな顔すんじゃねぇよ。


 テイの手が服に掛かる。


「鈴、鈴」

「えぇ!?ちょ、待っ!?」


 可愛く呼びながらやってることえげつねぇからな!?


 ちょ、待てって、待てって!!


「鈴、好きだ。大好きだ。俺のもんになって」

「…っか、やろう」


 悪態吐きながら力も入れられなくなってる時点で、勝敗なんて決まってしまったようなもので。


「大事にする。透明人間のままだったとしても、絶対、守るから」


 見えない身体を愛撫する手に、わたしは力を抜いて身を預けていた。




 透明人間とヤったらどうなるか?


 っ、い、言わない!知らない!自分で想像して!!


 とにかくそれから疲れきって眠って、目覚めたら、


「…戻ってる」

「んー…?」


 本当に、ふざけた方法で戻っちゃったよ…。

 このやるせない気持ち、どうすれば良いの…。


 隣で眠っていたテイが身を起こし、こちらを向、


「だっ、あ、見るな!!」


 こちらを向こうとするテイの顔を背けさせ、露わになった身体を隠そうとするも、


「いや、見るし」


 力の差と言う壁は歴然と立ちふさがっているわけで。


「…あー、やっぱ見えた方が良いなー。お前、肌綺麗だし、見えないと、うっかり引っ掻いて傷付けたりたりしないか、気が気じゃなくて」

「は!?綺麗とか、おま、キャラ違っ」

「んー、真っ赤。可愛い」


 布団を剥いで透明でなくなったわたしを見下ろしたテイは、


「それじゃ、改めまして、頂きまーす」

「ええ!?ちょ、待っ!?」


 にっこり笑って次のラウンド開始を宣言した。


 透明であろうがなかろうが、こいつの気持ちは変わらない、らしい。


 …ちょっとほっとしてる辺り、わたしはもう、こいつから逃れられないんだろう。






拙いお話をお読み頂きありがとうございました


このくらいならR15で大丈夫…ですよね?

大丈夫だって信じています!

アウトでしたら消しますのでご指摘お願いしますm(__)m

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