Episode 1*
がやがや______
教室は相変わらず煩い。
こんなに煩い所は嫌いだ。会話はあっても、
声一つ聞こえないという世界にここもならないだろうか。
「桜さん」
隣の席の……誰だっけ。
「……なんですか」
名前忘れたとか言ったら怒るよね……
「桜さん…。また名前忘れましたか?」
また?私、前も忘れたっけ。
「なぜ分かったんですか」
「勘です。僕の名前は朝薫月風。あ、先生呼んでましたよ。」
「用はそれだけですか」
音とか声が苦手だからあんまり喋りたくないんだけど。
「あ、うん」
「行ってきます」
ガタン。
教室を出た私は、職員室に向かっている。
月風って名前、女の子っぽいなぁ。
どうでもいいけど。
「失礼します、佐咲先生いますか?」
佐咲先生は、私の担任だ。
私の話を色々と聞いてくれる。
「あ、桜さん呼ばれて来たの?」
「そうですよ」
用はなんだろう。放課後だし帰りたいのに。
「桜さん、お母さんにこれ渡しておいてね!今日、渡すの忘れてて」
それだけですか先生。
「わかりました。さようなら」
「相変わらず冷たいわね」
「ほっといてください」
ほっといてなんて言っておいていつも色々な話きかせてくれるじゃないの
なんて声は、聞こえたけど無視することにした。
下駄箱も煩いなぁ。
いっそ声、聞こえなくなればいいのに。
「ねぇ、桜さんー」
「知らない人とチャットしてるって本当ー??」
「危ないよー?」
「「あははははっ」」
____ていうかどこで聞いたんだろう。
それに人の趣味をそんな風に言われたくない。
別に出会い系とかじゃなければいいでしょう。
こんな世界の中の、ネットは救世主なんだから。
ほっといてよ。
私への悪口は無視をして学校を出た。
私は友達がいない。
喋らないせいか友達も出来ず、ひとりぼっち。
人の体温とか、暴力とかが、
私にとっては怖くてしょうがなくて。
それに、人は簡単に ルール を破る。
ルールを破り、影で悪い事をして、それって卑怯じゃないですか?
だから私は、人が嫌いです。
でも、ネットは違う。
私を大切にしてくれる。
人の体温とか匂いもない。目の前にその人はいないから、暴力だってない。
文字だけで会話が簡単にできて、声も聞かなくてすんで。
私の知っているネット友達たちは、
優しい。ルールだってきちんと守る。
あの人たちと話しているだけで、楽しい気分になるから。私の悩みを聞いてくれたから。
また、その世界に入りたくなるんだ。
「ただいま、私の家」