その②
まさかの転校初日に寝坊!
-私立光栄高等学校-
中高一貫校で地方有数の進学校であるこの学校が俺の転入先。今日から俺はここでお世話になるのだ。(初日からまさかの寝起きダッシュだったが。)
正門からまっすぐ進んだところにある下駄箱の前ではクラス分けの張り紙に各学年の生徒がきゃっきゃ、きゃっきゃと黄色い声をあげて輪を作っている。
俺はあらかじめ校長と担任に転入の挨拶をしたときにクラスと教室の場所は聞いていたので、そそくさと自分の教室へ行きたかったのだが…
「ありゃ、出席番号忘れた。」
そう残念ながら出席番号で割り振られた自分の下駄箱の位置が分からなかった。
「しゃあない。確認しに行きますか。」
あの賑やかな貼り紙の前に行くのは億劫だったが、これも試練だ。
そう自分を思い込まして、クラス名簿の元へ向かう俺だったが――
-思えば運命なんて存在するのだろうか-
-そんなあるはずもない糸に人は一喜一憂する-
-でももし、語れるときがきたら。すべてを語れるときになれば-
-私はこの出会いをそう名付けて、あなたへの最後のプレゼントにするのだ-
「やった!今年もシロちゃんと同じクラスだよ!」
「当然よ!あんたと同じ特進クラスに入るために、あの地獄の3学期を乗り越えたのよ!」
「んふふ、2学期の面談で鈴木先生に『このままじゃ特進クラスから落ちるぞ』って言われた後のシロちゃんの顔、今思い出しても可笑しかったよ~」
「なんでそこで笑うのよ!親友のピンチでしょ!? けどそこから私は変わったわ。なんせ生まれて初めて新しいシャーペンの芯を買いに行ったわ。」
「でも結局買った芯のサイズが合わなくて、次の日私が一緒に買いに行く羽目になったじゃない。」
「あ、あれは~~ その~~~ ね~?」
「ふふふふふふ。」
光栄高等学校1-A(特進クラス)の名簿が貼られた前に2人の少女が楽しそうに話をしている。その和やかな空気を乱すように、彼の声がフロアに響いた――
「これは運命だ!!」