2/3
その①
-4月のある朝-
目覚ましが鳴らないうちにはっと目が覚めた。
昨日はなかなか寝付けず睡眠が浅かったためだろうか?
若干頭が重く目が熱い。
けど。
・・・・・・だけど。
それ以上のくすぐったく不安定な感情が俺の全身を駆け巡っている。
「これって緊張?こんなドキドキするなんていつ振りだろ」
こんな感傷的になってしまうのは無理もない。
だって今日は俺が高校生になる日。しかも見ず知らずの土地で。
とてもキラキラした青春とは縁のない中学時代を過ごした俺は、
今日こそ新しい人生が始まるのだと確信していた。
「気持ちを落ち着けるためにまずは・・・・・・」
と毎日こなしているようにスマホの電源を入れた俺は気付く。
「・・・ん?」
(えっ、ちょ、これって)
小さなディスプレイに大きく映し出された『0820』の文字。
ぁ・・・ ・・・・・・ ・・・・・・・・・
ああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!
新しい人生は遅刻濃厚なスタートで走り出したのだった。