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The last key...  作者: may
透明世界編
9/12

ep008 透明世界へ

 俺はさっそく、宿に戻り“透明世界”に行くことにした。

 ベッドに仰向けになり、ポケットから星型のクリスタルを取り出して掲げた。

 「・・今行くから」

 と、星型のクリスタルを細く見つめながら、呟いた。

 それを、またポケットにしまい、水とアルアの店で買った昏睡状態の薬を口に含み、再び仰向けになる。

 ──透明世界へ!

 その言葉と共に、俺の意識は違う世界へと飛翔したのだった。

 


 *


 透明世界。本当に何も無いような世界が広がっている。ここにいる他の者たちは、必死にここから出ようと“透明のカケラ”を必死に探し回っては、魔物を片っ端から倒してる者が数多くいた。

 ラフィは、眠りから目を覚ますとゆっくりと上体を起こし目を軽く擦り、大きくひとつ伸びをした。

 「・・・・よし!」

 と、軽く微笑み、そして立ち上がって今日もまた“透明のカケラ”を探す旅に。

 いつかまた、レイトに会えることを信じて──。


 

 *


 気がつけば、俺はそこにいた。“透明世界”に。

 ラフィの言った通り、白い世界がずっと拡がっていた。

 「どこかにラフィが・・・・」

 俺は、唇を噛み締め拳をぎゅっと力を込めて握った。そして、立ち上がりラフィを探しに白い世界をどこまでも、走った。


 

 どれくらい経っただろうか。

 それでも、まだラフィは見つけられない。面積が広すぎるのだ。

 度々、人にあってはラフィの事を聞いたりしたが、ラフィに会った人にはなかなか合えなかった。だが、俺は諦めずずっと聞きまわっていた。諦めたら、全てが終わり──だからだ。

 そんな中、俺は遠くに蹲っている少女を見つけた。微かに俺は首を傾げ、その少女へと歩みを進める。

 彼女は、微かに嗚咽を漏らしていた。俺はその少女に、冷静なトーンで声をかけた。

 「・・・・どうしたの?」

 はっと、したようにその少女は視線を俺に向けてきた。黄色と黄緑の混ざり合った髪色、結びめが三つ編みのポニーテイル、度々流れる黄色い流れ星のようなものとそっくりの瞳だった。ずっと泣いていたからなのか、目が少し赤く腫れている。

 「・・・・・・あたしに構わないで」

 と、視線を逸らし彼女は俯いた。とは言われてもなあ、と心の中で呟き、頬をぽりぽりと掻いた。

 その少女は、どこか昔の俺に似ている気がした。何か大切なものを失ったような──絶望感。

 俺はしばらく、そこに佇んでいた。彼女には、それが気に障るようで、俺のことをキッと睨みつけた。

 「どっか行ってよ!!あたしに構わないでって言ってるでしょ!!」

 と、涙声交じりに俺に怒鳴りつけるようにそう言った。

 だが、俺は引き下がることはしなかった。

 「そうは、行かないな。泣いている女の子を放っておくようなヤツじゃないんでね」

 再び、彼女は視線を逸らし「・・ばっかみたい」と眉を微かに吊り上げ、静かに呟いた。



 「で、どうしたのさ?」

 俺は、彼女の隣に腰を下ろし訊いた。

 「・・別に。初対面の男になんか関係ないでしょ」

 と、先ほどから相変わらず機嫌悪そうに俺に言った。

 「そうだけどさ──」

 俺はそこで、言葉を止めた。

 彼女は、俺のことを少し横目で眺めてから口を開いた。

 「・・・・いいわよ、話してあげる。そんなに聞きたいなら」

 と、彼女は気分が乗らないような声音で語り始めた。

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