ep006 不可能
──俺が、ラフィを殺したんだ。そう思ってた。
ずっと、辛かったのだ。それを背負って生きるってことが。簡単に耐えられるようなことじゃなかった。
昼間は、ずっと狩りをし“石珠”探しを続けていた。そのうち2個しか手に入らなかった。
レンライラスシティのレダント宿。
俺は、ベッドで横になり、これからのことを考えていた。
「駆らず、助け出して見せる──・・・・」
ぎゅっと拳を握り、意を固めた。
彼女を殺してしまったという罪悪感を抱えながらあの時から今まで行き続けていた。時には一日中部屋から出なかったこともあった。空腹や喉の渇きなど、あの時のことに比べたらどうってことなかった。
その夜、俺は早く寝つき、朝を待った。
昨日、心念体だったがラフィとの再会を果たしてから、その罪悪感も少し晴れたような気がした。
身支度、朝食を済ませ、俺は一刻も早くのあの“透明世界”の事について情報を手に入れようと南東方向にある“情報街”に行くことにした。
心地良い風邪を全身に感じながら歩を進め“情報街”に着いたのだった。
“情報街”は、その名の通り、情報が最も行き来している街だ。
その為“石珠”のことについて探ったりしている人が最も多かった。俺も最近、探っていたら、願いが叶えられるのは予想通り、1回限りで、そのものの願いを叶えたら、結晶となって消滅し、空に浮かぶ“レイエント・セゼル”の扉はどこかへ消え去ってしまうらしい。
再び現れるのか?というのはまだ、今は不明。
俺はある建物の前に止まる──フォース・インフォだ。
ここの情報は一流で、最新な情報から昔の情報までずらりと揃っている。
入った瞬間、そこはどこかのホテルのように広々としていて、頭上を仰ぐと天井が高い。いくつか部屋に分かれていて、実際にそこに行き探る“身体索敵”、本で読んで情報を得る“読索敵”、頭で思い浮かべながら探る“思想索敵”など・・・・。
俺はその中の“思想索敵”で探ることにした。
“実際索敵”のほうが、俺にとってはいいのだが少しリスクがあるのだ。
実際にいるところから、違う場所に身体を移してしまうと、攻撃ダメージが通常の2倍も上がってしまうのだ。それが、少し厄介なのだ。
俺は“思想索敵”部屋に向かうため、人を掻き分けながら部屋へと入っていった。
思想索敵専用の椅子に、腰掛け俺はゆっくり目を閉じる。
そして、心の中で“透明世界”についてのことを教えて欲しいと胸中で呟いた。
目に──頭の中に文字が浮かび上がる。
──透明世界。そこは、蘇生チャンスを1度だけ得た者だけが飛ばされる世界。白い世界で、黄色い流れ星のようなのがひゅんとたまに、落ちていくだけ。
この世界と同じように、アイテムを落とす魔物がいる。
また、こっちからは手出しは不可能。そして、この世界に死があるように透明世界にも、死がある。死んでしまうともう二度と蘇生は出来ない。
透明世界から出るには、透明世界にいる“ゼアルス”と言われる竜から透明のカケラを5個ドロップする必要がある。ゼアルスは頻繁に色んなところに出現するが、透明のカケラを落とすのは極稀である──。
俺は、ゆっくりと瞼を持ち上げた。
「透明のカケラ・・・・か。ラフィは、多分これを知ってるんだろう。でも困ったな・・・・・・。こっちから手出し不可能だなんて」
俺は、顎に手を当てながら言った。そして、俺の表情が曇ったように歪む。
「クソ・・・・!じゃあ、このまま待ってるしかないのかよ・・」
俺は、椅子の肘掛をドンっと悔しさを表すかのように思いっきり叩いた。