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The last key...  作者: may
透明世界編
5/12

ep004 星型のクリスタル

 鳥の囀りと共に起きた俺は、ベッドの上で座っていた。

 「もう、朝か」

 窓の外の木に止まる鳥を見つめながら、一人呟いた。再び、頭からベッドにダイブする。その衝撃で、少しベッドが揺れた。

 ベッドの左隣にある、四角いミニテーブルに置いておいたものを手に取る──半分の星型のクリスタルだ。それを右手で、天井に向ける。窓から入ってくる太陽の光がそれに反射してキラキラ光っている。

 魔物からドロップしたものだ。昔、一緒に旅をした少女と半分こしたもの。あまりにも綺麗だったので「二人が繋がってる証」ってことでそうなった。

 それを見つめてるうちに、あの日々を思い出す。

 「・・久しぶりに行って見ようかな」

 再び、ベッドの上に座り、ポケットに星型のクリスタルをそっと入れた。

 着替えを済ませ、部屋から出る。

 1階フロアの、食堂で朝食を済ませたあと、レダント宿を後にした。



 俺はまたグランディーシティの近くのグラディスアの草原に来ていた。

 ここは、魔物が少なく“始まりの草原”とも言われている。

 この世界の気候は、ランダムに変わる。

 例えば、朝の時点で快晴又は晴天だとしたら、一日中その天気なのだ。その次の日の天気は誰も予想することができない・・・らしい。

 だが、極稀に曇りだったのが、雨になったり、快晴だったのがいきなり曇り始め、雨になることもある。

 俺は、歩を進め一本の大きい木の前に来ていた。

 「懐かしいな・・」

 と、一人呟き日陰になるところに座り、横になる。

 「昔と変わらないな・・・・・・。風が気持ち良い」

 すうっと微かに匂う、春の風。それを感じながら、瞼を少し閉じる。

 ガサッ。

 俺は、音のする方向に一気に向いた。魔物かと思ったが──、

 「こんにちは」

 と、首を少し斜めにし俺の顔を覗き込む、昨日の少女──が立っていた。

 春の風に従いながら、揺れる栗色の髪は、ほのかにいい匂いがした。

 俺は呆然と彼女をしばらく見つめていた。現実世界に引き戻されたかのように、肩を浮かせた。

 「・・そんなに驚かなくてもいいでしょ」

 彼女は、口を尖らせてそう言った。顔にかかる髪の毛を右手で抑えながらこの木を見て言った。

 「ここ天気良いと尚更、風が気持ち良いよね。昔、良く来たなあ・・・・」

 ──昔?

 「・・・・・・俺に用があったのか?」

 あの頃の記憶が込み上げて来そうなのを無理矢理はらって、そう言った。

 「あ、うん・・・・。なんか、気になっちゃって。私、なんか悪いことしたかな?そうだったら、ごめんなさい」

 目を細めながら俺を見下ろし言った。

 「別に・・。人といると、昔のことを思い出したくないからそうしてるだけだから」

 「ねえ、聞いても良い?私は、昔のその人とは違うのに、何で目逸らすの?」

 俺は唇を噛み締め何かを絞りだすように考えていた。すると彼女は、ちょこんと俺の隣座って空を見上げていた。

 その横顔は、本当に昔のあの少女のようだった。

 俺が3年前、突然その少女と出会ったのだ。最初は些細な“石珠ストーンパール”集めでコンビを組んでいただけだった。その時も俺は、避けていた。でも彼女は、そんなの気にせずにずっと俺と一緒にいてくれた。心のどこかでそれが嬉しかった。いつしか、何かも抱いていたようだった。多分、好きだったんだと今になって思う。それから、彼女を殺してしまったと一晩中悩み悔やみ悲しんだ。もう二度とこんなことには、させたくないとその思いから人を更に避けるようになったのだ。

 「・・・・関係ねえだろ。俺がどうしよかと」

 「私ね、君の事なんか知ってるみたいなんだ。昔から」

 はっと俺は、彼女を見た。すると彼女は、微かに微笑んだ。

 「目を合わせるって凄く大切なことだと私は思うんだ。目から、感情がわかったり、ね。君、今驚いてるでしょ?目隠しなんかしてたら、感情なんてわかんないもん。私は、それが少し辛い」

 「もしかして・・・・・・・・」

 俺は、半信半疑で問うた。

 「・・・・うん」

 彼女は俺を見つめながら、ゆっくりと頷く。

 「私は、ラフィ・レアーノ。久しぶり、レイト」

 俺の中は、喜びと驚きが混ざり合って彼女を見つめていた。

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