ep011 辛く、重い
勢い良く、俺達は呆気なく吹っ飛ばされ、壁に鈍い音をたてながらずるずると落ちる。
「うわあっ」
「ぐっ・・・・」
俺は、右膝を支えにしながらゆっくりとふらつきながら立ち上がる。凄まじい、攻撃だと俺は思った。こんなのをあと4対も倒せと?そんなのは、無理だ。せめて一人じゃないことが奇跡だと言っていい。この世界に来たばかりの俺にはきっとどうしようもなく、真正面から突撃していただろう。もし、透明世界に来た俺がここで死んだら元の世界にいる本当の身体は、永遠に植物状態が続いてしまう。もう二度と、動くことすら許されず、そしてラフィとも会えなくなる。俺の目的はラフィを元の世界・フォルトに戻すこと。その為に俺はここに来たんだ。死ぬわけには──いかない。
俺はその言葉と同時に、さっき心の中に呟いたことと同じことをしていた。知らぬ間に、無我夢中で、ゼアルスに向かって走りながら別空間から愛長剣を召喚する。
「ちょ、まっ・・・・・・」
アーシェが、俺を止めようとする。が、無我夢中に走りまくった俺にはその言葉は耳に入らなかった。
「りゃああああッ!」
俺は、ただただラフィと会うこと、そしてラフィの笑顔を頭に浮かべながら剣を振り下ろした。だが、軽々と撥ね返される。剣で受け流し、俺は素早く地に着く。
「くそ・・・・!」
長剣を垂らし、ゼアルスに走り向かい、下から振った。
「人の話聞きなさいよね!」
地に着いた瞬間、俺の横に並びながらふて腐れているアーシェが言った。その言葉を聞いたと同時に俺は、いつもの落ち着いた雰囲気に呼び戻された。
「あ・・ごめん。無我夢中で・・・・・・」
「無我夢中で、じゃないわよ!一人で正面からぶつかったって、吹っ飛ばされるだけよ!ちゃんと考えなさいよね。・・・・じゃあ、あたしが援護するからあんたは近距離で攻撃続けて。正面からぶつかる勇気がそんだけあるなら」
俺は、ふっと微笑み「了解」と短く言った。それと同時に、俺とアーシェは反対方向に短く飛ぶ。
「グオオオオオオオオオオオオオ!」
再び咆哮がそこら中に広がる。それに気圧されそうになったがなんとかそれを耐える。
俺は一か八かで、もうひとつ長剣を召喚する。
「スティール・レイザー!!」
2つの長剣をクロスさせ、一気に相手に放った。勢い良く、青白い光が迸りゼアルスにヒットする。
ゼアルスは、呻きながら尾を回転させ俺に攻撃を仕掛けてきた。それを愛剣で受け止めるが、その攻撃は重く、軽く吹っ飛ばされる。
アーシェは、後ろで回復魔法を唱え俺に回復をかけた。
──まだ、駄目か・・・・!
「あいつの弱点は、両翼よ!そこを集中的に狙えば、多分・・いけるはずだわ!!」
俺は、背中でアーシェの言葉に耳を傾け、そのまま頷いた。アーシェの言われたとおりに、俺は両翼を集中的に狙った。
ゼアルスは、それに気付いたかのように両翼を縮めた。
「せいやああああっ!」
俺は威勢と共に跳躍、ゼアルスの右翼に剣を振り下ろし、命中させた。後ろのほうで「よし!」という声を聞きながら、俺は地面に着地する。すっと顔を上げ、左翼を一瞬凝視し、地面を蹴る。
「うおおおあああっ!」
俺は、両剣に今までにないような力を込め、左翼を攻撃。ゼアルスは、唸り、ひゅんっと消えた。
「や・・やったの・・・・・・か・・・・・・」
俺は、しばらく立ち尽くしていた。後ろで支援していたアーシェも立ち尽くし、はっと我に返り「レイトーっ!」と駆け寄って来る。
「やったね・・ひとつ出たよ。ほら・・・・・・」
掌にある、それを俺は見た。小さく綺麗な結晶──。
掲げられているその手をぎゅっと包み込み、俺は膝から崩れ折れた。そして、情けなく小さく嗚咽を漏らした。これで一個目か、と思うと辛く、重い。5個なんて簡単だと思ってた。そうじゃない、死んだ人を簡単に生き返らせる──なんて、簡単じゃない。わかっていた。わかっていたが、早く会いたいと思う気持ちが込み上げてきて、簡単だ簡単だなんて思い込んでただけだった。
「どうしたの・・・・?」
アーシェは、静かにそう言いながら俺が口を開くのを待っててくれた。




