ep010 ゼアルス
*
あたし達は、歩きその間、ずっと無言だった。
そんな、沈黙を押しのけたのは隣で歩いてるレイトの言葉だった。
「なあ。俺さ、ここに来る前、色々“思想索敵”で探ってたんだけどさ、それでもまだここの世界のことわからないんだ。教えてくれるか?」
あたしは、少し眉を寄せ一瞬考えた末、こくりと頷いた。
「どこまで知ってる?」
「うーん・・・・ゼアルスのところらへん・・かな」
あたしは、前方だけを見つめながら渋々応えた。
「ふーん・・・・。ここは唯一、元の世界と違って“クリアウィンドウ”っていうのがあるの」
「何それ?」
「空中でタッチするとメインメニューのようなものが出てくるの。それ目的で、わざと魔物にやられたりして蘇生チャンスを狙う人もいるわ。正直言って馬鹿よね」
そう言うと、レイトは空中で人差し指を軽くタッチした。
「おお・・」
と、感嘆の声をあげた。そして、あたしは話を続けた。
「そこで、透明リスト──生存者、みたいなものかな──を確認したり、マップを見たりすることができるの。まあ、便利っちゃ便利よね。持ち物は、元の世界と同じで別空間にしまっておくことはできるけど」
「へえ・・・・・・」
「まあ、あとは多分必要なことないよね。その時に応じて説明してあげる」
「ん。助かるぜ」
レイトは、少し微笑みそう言った。あたしは、ついさっき会ったばかりのこの人になんでこんなに親切にしちゃうんだろう、と胸中で呟いた。何故か、いつの間にか口に出てしまうのだ。
「なんか、似ているな・・・・」
「ん?何が??」
「うーん・・良く覚えてないんだけど、昔アーシェみたいな女の子と一緒だったなあって・・・・」
「それって、レイトの探してる人?」
レイトは、首を振り落ち着いた口調で言い、頭上を仰いだ。
「いや、なんだろ・・・・・・いもう・・と見たいなの・・・・かな。ほんと、昔の記憶なんて、あの時に起きた──」
レイトは何故か、そこで言葉を止めた。
「?」
「いや・・なんでもない」
「へー・・・・あたしは、小さい頃の記憶が・・曖昧」
でも、これだけは微かに覚えている。お兄ちゃんがいた──気がする。だけど、思い出すとぼやけた背中しか頭の中に映し出されない。
「そっか。でも、会ったとき同じ雰囲気を感じたよ」
あたしは、はっと口を開けてみるみると自分の顔が少し赤くなるのを感じた。
「ば・・ばっかじゃないの!」
レイトは、疑問符を浮かべ「俺、変なこと言った?」と頬をぽりぽりと掻きながら片眉を落とした。
再び、沈黙が満ち始めた。あたしは、赤らめた顔を必死に抑えるのに精一杯だった。度々、レイトはこちらをちらりと見て疑問符を浮かべてばかりだった。
するとレイトは、眉を潜めて右手であたしを制した。
「どうしたの・・・・?」
「なんかいる」
レイトは、声を低くしながら言った。それと同時に、地響がなりはじめた。
「な・・何・・・・!?」
あたしは、周りを見渡しながら焦り始めた。レイトも、目を周囲にやりながら招待を探っている。あたしは、目を天井にやり上に何かがいることに気付いた。
「う・・上!!!」
その言葉と同時に、レイトも上を見、それは勢い良く落ちてきた。
グオオオオオオオッという咆哮をあげ、あたしたちは少し、後ずさりをした。
「こ・・コイツは・・・・」
「ゼ・・ゼアルス・・・・・・・・」
その魔物──この世界でも最も強いと言われる竜・ゼアルスは、あたしたちに向かって勢い良くブレスを繰り出した。




