第三幕「雪」
ねえ 君は人間なのかい?
ねえ 君は人形なのかい?
無駄な無意味な疑問が脳裏を過ぎる。
そんなことはどうだっていいんだ。
そんなものなど関係は無いのだから。
君は心のない人形なのだから。
感情のない人間なのだから。
僕だけの人形なのだから。
それだけでいいじゃないか。
ただ、それだけなんだよ。
僕の愛しい人形。
心のない少女。
その髪。
漆黒の髪は長く永く。身体に纏わりついて。
その瞳。
黒瞳は深遠に深淵に。深く深く。淀んで濁って。
その唇。
血のように真っ赤に。真紅に深紅に。乱れて濡れて。
その肌。
病的な程。肌は白く。透き通るように真っ白で。穢れて汚れて。
その心。
影のように闇のように。
何も感じず、何も見えず。
心のない人形のように何もなく。
それは。無垢で。無知で。虚ろで。空ろで。
それはまるで。雪のように。
白く純粋で。純白で。
淡く。儚く。脆く。
あの日。あの刻。あの夜。
夜空に降っていた雪を纏う君を見た時から。
僕は君に魅せられ。魅了されたんだ。
白い人形。
美しい少女。
その人形に堕とされたんだ。
昔から、欲しかった。
ずっと手に入れたかった。
僕だけのモノ。
僕だけの人形。
夜空に舞う、こんな雪のような。
粉雪。
僕だけに降る雪。
白雪。
僕だけに積もる雪。
白くて。無垢で。壊れそうな真っ白な存在。
そして、その夜。
雪の降る夜。
僕は君の名を。
人形の名を。
「雪」と名づけたんだ。
雪。
白い少女。
白い人形。
僕だけのもの。
僕だけの人形。
僕は雪を手に入れたんだ。