第二幕「天使」
人形。
僕の人形。
それは僕のモノ。
それは僕だけの人形。
やっと手に入れたモノ。
やっと見つけた人。
心のない人形。それが彼女だった。
夜。
真夜中。
僕は街を彷徨っていた。
なにをするでもなく。
ただただ、足を動かすだけだった。
でも。そんな僕の足が止まった。
何故なら。
そこには。
目の前に歩道橋があったから。
何故なら。
そこには。
その歩道橋の手すりの上に立っている人が見えたから。
今にも地面に飛び降りそうな。
いや。
今にも夜空に飛んでいきそうな。
そんな天使のような。
いや。この場合。
堕天使といったほうがいいだろうか。
そんな堕天使のような。
美しい少女だった。
それが彼女だった。
ぽつり。ぽつり。
白い雫。
白い粉。
雪が降りだしてきた。
初雪だろうか。
珍しい。
こんな街にも雪が降るんだな。
でも、珍しいのかどうなのか。
僕は。あまり分からないけど。
きっと。珍しいんだろう。
たぶん。今年初めての雪なのだから。
だけど。
雪なんか。
そんなものなんかどうでもいいんだ。
佇んでいる少女。
彼女は、ただただ。空を見ていた。
夜空を見上げていた。
何もない真っ暗な空。
白い雪が舞う空。
月が耀く空。
そして。
そんな僕は、歩道橋の少女を見上げていた。
白い雪の中の少女。
そんな彼女を見つめていた。
地上に降りた天使のような。
夜空を見上げる堕天使のような。
白い少女。
そう。それが。
僕が彼女を最初に見た日だった。
そんな雪の降る夜だった。
僕は人形を見つけたんだ。