第4話 『幼馴染は気づいてしまった。白雪玲奈の“異常な好意”に』
放課後の教室。
帰り支度をしていると、ほのかが俺の机をトントンと叩いた。
「ねぇ悠斗。今日の白雪さん……やっぱり変だよ」
変、なんてもんじゃない。
昼休みの嫉妬崩壊は、俺の脳裏に焼き付いている。
「……まぁ、ちょっと情緒不安定だったかもな」
「“ちょっと”で済む?」
ほのかは椅子を引き寄せ、俺の隣に座った。
真剣な顔だ。
「悠斗、あの子……あんたのこと——」
言いかけた瞬間。
「天城くん」
教室の扉が静かに開いた。
白雪玲奈が立っていた。
完璧美少女のはずなのに、
その表情は“完璧”とは程遠い。
頬は赤く、視線は揺れ、指先は制服の裾をぎゅっと握っている。
「……少し……話、いい……?」
声が震えている。
ほのかが眉をひそめた。
「白雪さん、今日ずっと様子おかしいよ? 大丈夫?」
玲奈はほのかを見た。
その瞬間、空気が変わった。
玲奈の瞳が、ほんの一瞬だけ鋭く光った。
「……大丈夫。
天城くんと……話したいだけ」
その“だけ”に、妙な圧があった。
ほのかは気づいた。
玲奈の感情が、普通じゃないことに。
「ねぇ白雪さん。
今日の昼もそうだったけど……
悠斗に、何か……特別な感情持ってる?」
玲奈の肩がビクッと跳ねた。
「っ……な、なに……言って……」
「だってさ」
ほのかは玲奈に近づき、目を覗き込む。
「悠斗が他の女子と話してるだけで泣きそうになってたよね?」
玲奈は唇を噛んだ。
顔が真っ赤になり、呼吸が乱れる。
「……ち、違……っ……」
「違わないよ」
ほのかは静かに言った。
「白雪さん、悠斗のこと……好きなんでしょ?」
その瞬間——
玲奈の表情が“崩れた”。
「っ……や……っ……」
玲奈は胸元を押さえ、震え始めた。
「……言わないで……
そんな……はっきり……」
涙が滲む。
「……だって……
自分でも……どうしたらいいか……分からないのに……」
ほのかは驚いたように目を見開いた。
「……本当に……好きなんだ……」
玲奈は俯き、震える声で続けた。
「……天城くんが……
誰かと笑ってるだけで……
胸が痛くて……息が苦しくて……
どうしていいか……分からなくなるの……」
玲奈は涙を拭おうとしたが、
手が震えてうまく拭けない。
ほのかは息を呑んだ。
「……それ、普通の“好き”じゃないよ……?」
玲奈は涙を拭いもせず、ほのかを見た。
「……分かってる……
でも……止められないの……」
そして、俺を見つめた。
「……天城くん……
あなたの前だと……
全部……壊れちゃうの……」
その瞬間、ほのかは確信した。
——白雪玲奈の好意は“異常”だ。
そして同時に、
俺だけがその“異常な恋”の対象であることも。




